
サステナビリティ(持続可能性)への意識が高まる中、「再生ビジネス」が注目されています。中でも、不良品や中古機器を修理・整備して再販するリファービッシュは、品質とコストのバランスから人気です。
多くの企業がこの分野に関心を寄せており、実際に参入する企業も少なくありません。本記事では、新規事業のアイデアを探しているビジネスパーソンに向けて、リファービッシュの意味や中古品との違い、市場規模、成功事例をわかりやすく解説します。
リファービッシュとは何か?
リファービッシュとは、返品された不良品や中古品を整備・修理し、新品に準ずる状態に仕上げた再生品のことです。「メーカー再生品」や「整備済製品」と呼ばれることもあります。
新品とほぼ変わらない性能や機能なのに、低価格で手に入るとして消費者から人気です。特に、スマートフォンやパソコン、家電製品などでよく利用されています。
リファービッシュと中古品との違い
リファービッシュと中古品はよく混同されますが、明確な違いがあります。その大きな違いは「整備・修理の有無」です。
中古品は、基本的に修理や整備を行わず、そのままの状態で販売されることが一般的です。一方、リファービッシュ製品はメーカーや専門業者によってしっかりと整備・修理され、新品に近い状態で販売されます。以下に、2つの違いをわかりやすくまとめました。
項目 | リファービッシュ | 中古品 |
価格 | 新品より安い | 新品より安い |
品質 | 修理・整備されており、新品に準ずる状態 | 基本的に未整備のまま販売される |
保証 | 一定期間の保証が付く場合が多い | 保証がない、または短期間のみ |
販売者 | メーカーや専門業者による販売 | 個人や中古販売業者による販売 |
つまり、品質・安全性・保証といった面で、リファービッシュのほうが信頼性の高い選択肢と言えます。
企業からリファービッシュが注目される背景
企業がリファービッシュの分野に注目する理由は、次のような背景があります。
サステナビリティの意識の高まり
気候変動や環境汚染、資源の枯渇といった世界的課題の深刻化に伴い、サステナビリティへの関心が高まっています。そして、企業においても、持続可能な社会の実現に向けた取り組みが求められています。
リファービッシュは、まだ使用可能な製品を修理・整備して再販することで、廃棄物の削減や資源の有効活用に貢献できる取り組みです。これは、従来の「作って捨てる」直線型経済(リニアエコノミー)から、循環型経済(サーキュラーエコノミー)への転換を図る上でも有効な手段と言えます。また、「エシカル(倫理的)な選択」として消費者の支持を得やすく、ブランド価値の向上や差別化にも役立ちます。
企業理念を実践できる
リファービッシュ事業に取り組むことは、単なる経営戦略にとどまらず、企業の社会的責任や理念を体現することです。例えば、「持続可能な社会の実現」や「廃棄物ゼロへの挑戦」といったビジョンを掲げる企業にとっては、リファービッシュ市場に参入することで企業理念を実践できます。このような環境・社会課題への積極的な取り組みは、ステークホルダーから支持を得やすく、企業価値を高める効果も期待できます。
リファービッシュの市場規模と成長性
株式会社グローバルインフォメーションの調べによると、2023年のリファービッシュ電気製品の世界市場規模は93億6,000万ドルでした。それが2029年には192億8,000万ドルに達する見込みです。今後の年平均成長率は12.8%と試算されており、リファービッシュの需要が急激に拡大すると予測しています。
参考:株式会社グローバルインフォメーション「リファービッシュ電気製品市場」
リファービッシュ市場に参入するメリット
近年、リファービッシュ市場に参入する企業が増えています。それは、企業にとって多くのメリットがあるためです。ここでは、参入することで企業が得られるメリットについて解説します。
収益構造の強化
企業がリファービッシュ市場に参入することは、収益源が増えることを意味します。通常であれば廃棄される製品を修理・整備して再販することで、新たな収益を生み出せるからです。こうした資源の有効活用は、企業の収益構造の強化につながります。
新たな顧客層の獲得
リファービッシュの多くは、以下のような理由で回収されたものです。
- 初期不良や返品により戻ってきた製品
- リース・レンタル契約の満了後に回収された製品
- 展示品や短期間のみ使用された製品
これらは既に一部のコストが回収されているため、整備して再販する際は新品よりも安価に提供することが可能です。これにより、学生や中小企業、スタートアップ企業といった価格に敏感な顧客層にもアプローチしやすくなります。つまり、リファービッシュは、新品の製品では取り込めなかった顧客層の獲得に役立ちます。
ブランド価値の向上
リファービッシュ市場への進出は、環境に配慮した取り組みです。このような取り組みは企業の社会的責任を果たしていると評価され、ブランド価値の向上につながります。
廃棄コストの削減
初期不良や返品、リース契約の終了などで回収された製品をそのまま処分すると、廃棄にかかるコストが発生します。しかし、これらをリファービッシュとして再生・再販すれば、廃棄コストを削減できます。環境負荷を抑えながらコスト効率も高められる点は、企業にとって大きなメリットです。
国内外のリファービッシュ事業の事例
リファービッシュの取り組みは、業界や製品カテゴリを問わず世界的に広がっています。ここでは、国内外の企業の取り組み事例を紹介します。
NIKE:ナイキ リファービッシュド

出典:NIKE「ナイキ リファービッシュド」
NIKEのリファービッシュ事業は、「ナイキ リファービッシュド」です。この取り組みは返品や展示品など、新品では販売できなくなった商品を修繕して、同社のストアで再販するプログラムです。NIKEでは再生品を以下の3つのグレードに分けて販売しています。
- 新品に近い
- やや使用感あり
- やや見た目の不備あり
NIKEはこのようなプロジェクトを通じて、資源の有効活用や廃棄物の削減、製品寿命の延命に取り組んでいます。
Back Market:リファービッシュ専用マーケットプレイス

出典:Back Market「Back Marketについて」
Back Marketは、フランスに本社を構えるリファービッシュ専門のマーケットプレイス運営企業です。iPhoneやAndroidなどの中古スマートフォンを仕入れて整備し、自社のショッピングモールを通じて販売するビジネスモデルを展開しています。2021年時点で、世界16カ国に進出し、500万人以上のユーザーを抱えています。
セイコーエプソン株式会社:プリンター・インクジェット複合機の販売

出典:セイコーエプソン株式会社「商品のリファービッシュ・再整備で無駄のない資源の循環をつくる」
セイコーエプソン株式会社は、「エプソン」ブランドで知られるプリンターやインクジェット複合機の開発・販売メーカーです。同社は2019年より、資源の有効活用と廃棄物の削減を目的に、リファービッシュ事業に取り組んでいます。具体的には、修理センターで1台ずつ丁寧に点検・整備し、品質を確保した上で再生品として販売しています。
成長戦略としてリファービッシュ事業を検討しよう
持続可能な社会に向けた取り組みが企業にも求められる中、リファービッシュ事業は収益性と環境配慮を両立できる取り組みとして注目されています。実際に、国内外の多くの企業が参入しており、新たな市場を開拓しています。新規事業のアイデアを探しているビジネスパーソンは、この機会にリファービッシュ事業を検討してみてはいかがでしょうか。