ホルムズ海峡封鎖による日本企業への影響をわかりやすく解説

ホルムズ海峡封鎖の影響が日本企業にも広がり始めています。帝国データバンクの調査によると、中東情勢の緊迫化による原油価格の高騰や供給不安について、「経営にマイナスの影響がある」と回答した企業は96.6%に達しました。一方で、「プラスの影響がある」と回答した企業はわずか0.1%にとどまっており、ほとんどの日本企業がホルムズ海峡封鎖を経営リスクとして捉えています。

そこで本記事では、ホルムズ海峡封鎖による日本企業への影響や取るべき対策について解説します。

参考:帝国データバンク「中東情勢による原油価格高騰・供給不安の影響アンケート

ホルムズ海峡とは?日本企業にとってなぜ重要なのか

ホルムズ海峡とは、ペルシャ湾とオマーン湾を結ぶ海峡のことです。中東地域で産出された原油やLNG(液化天然ガス)を世界各国へ運ぶ、世界有数の海上ルートとして知られています。しかし、海峡の幅は最も狭い場所でわずか約33kmしかありません。この狭い海域を世界で海上輸送される石油のおよそ4分の1が通過しています。

ペルシャ湾から外海へ出るルートは事実上ホルムズ海峡しかなく、代替ルートを確保しにくい点も特徴です。そのため、ひとたび紛争や封鎖などが発生すると、原油やLNGの供給に深刻な影響を及ぼします。このような背景から、ホルムズ海峡は世界経済に大きな影響を与える「チョークポイント(海上交通の要衝)」と呼ばれています。

特に日本経済にとって、ホルムズ海峡は極めて重要な要衝です。日本はエネルギー資源のほとんどを海外からの輸入に依存しており、原油に至っては9割以上を中東地域から調達しています。つまり、ホルムズ海峡で問題が発生すると日本国内のエネルギー供給に大きな影響を与える構造になっているのです。

出典:経済産業省資源エネルギー庁「中東情勢を踏まえた石油及び関連製品等に関する対応

ホルムズ海峡で何が起きているのか

2026年2月28日、米国とイスラエルは、核開発阻止を目的としてイランに軍事攻撃を実施しました。これに対し、イランは報復措置としてホルムズ海峡の封鎖に踏み切りました。

現在もホルムズ海峡周辺では、船舶への攻撃や機雷の敷設などが行われており、武力によって航行が妨げられている状況です。さらに米国側も対抗措置として、イランの港湾を出入りする船舶の通行を差し止める「逆封鎖」を行い、イラン産原油の輸出を阻止しています。その結果、ホルムズ海峡では双方による封鎖が続いています。

米国とイランの間では停戦交渉が続けられていますが、事態収束の見通しは依然として不透明です。このような背景から、ホルムズ海峡封鎖による影響は長期化する可能性も指摘されています。

ホルムズ海峡封鎖による日本企業への影響

ホルムズ海峡封鎖の影響は、原油やLNGの供給不安を起点に、日本企業全体へ広がっています。エネルギーコストの上昇にとどまらず、企業活動の前提そのものを揺るがしかねない状況です。ここでは、特に日本企業にとって重要な5つの影響について解説します。

原油・LNG価格の高騰

ホルムズ海峡封鎖による直接的な影響は、原油・LNG価格の高騰です。

ホルムズ海峡は、世界で海上輸送される石油のおよそ4分の1が通過するエネルギー輸送の要衝です。この重要なルートが封鎖されれば、原油やLNGの供給は不安定になり、需給バランスの崩れから価格上昇は避けられません。特に日本はエネルギー資源のほとんどを輸入に依存しているため、その影響を強く受ける構造にあります。

さらに、エネルギー価格の高騰は電気料金の上昇にも直結します。実際に大手電力10社のうち9社が5月使用分から値上げを実施しており、6月以降に値上げが本格化する見通しです。こうした動きは、あらゆる企業において経営コストを押し上げる要因になります。

ナフサ不足

ナフサとは、原油を精製して得られる石油化学製品の基礎原料です。プラスチックや化学繊維、塗料、包装材など、多くの製品の製造に欠かせない重要な素材です。

日本はこのナフサの約4割を中東地域に依存しているため、ホルムズ海峡封鎖によって供給が不安定になれば、石油化学製品の生産全体に影響が及ぶ可能性があります。一方で政府は、現時点で十分な量のナフサを確保できているとの見解を示しており、流通の目詰まり解消に向けた対応を進めています。

ただし、将来的な供給不安が完全に解消されたわけではありません。そのため一部の企業では、塗料の使用量を抑えたパッケージへの変更といったリスク回避の動きが見られます。

サプライチェーンの混乱

エネルギーや原材料の供給が不安定になると、その影響はサプライチェーン全体に波及します。輸送の遅延や部材不足が発生すれば、必要な資材を確保できなくなり、生産計画そのものに支障が出る可能性があるためです。

特に日本企業では、在庫を最小限に抑える効率的な調達体制(ジャストインタイム方式)が広く採用されてきました。この仕組みは平時には大きな強みとなる一方で、供給が途絶える局面では一部の原材料不足がそのまま生産停止につながるリスクを抱えています。

さらにホルムズ海峡封鎖の影響は世界各国に広がっており、グローバルサプライチェーン全体に乱れが生じる可能性が高まっています。

物流コストの上昇

ホルムズ海峡封鎖によって原油・LNG価格が高騰すれば、船舶やトラック、航空輸送などあらゆる輸送手段にかかる燃料費が上昇します。その結果、企業にとっては物流コストの増加という形で負担が跳ね返ってきます。この物流コストの上昇は一時的な負担にとどまりません。輸送費の増加は製品価格への転嫁につながりやすく、収益を圧迫する可能性があります。

個人消費の低迷

エネルギー価格や物流コストの上昇は、個人消費の低迷を招くリスクがあります。

企業がコスト増加分を製品やサービス価格に転嫁する動きが進むことで、食品や日用品、各種サービスなど幅広い分野で値上げが広がります。その結果、家計の負担が増大し、消費者の購買意欲が低下するためです。

消費者が支出を抑える動きが広がると、購買頻度や購入単価が下がり、企業の売上に直接的な影響が出ます。こうした流れの中で、「コスト増」と「需要減少」が同時に進行する状況が生まれ、企業にとっては二重の圧力になります。

日本企業ができる対策例

ホルムズ海峡封鎖は幅広い影響を及ぼすため、企業には多面的な対応が求められます。まずは自社への影響範囲を把握した上で、早期に対策を講じることが大切です。具体的には、以下のような対応が挙げられます。

  • 在庫の積み増し

供給が不安定な局面では、原材料や部材の調達に問題が生じる可能性が高まります。在庫を確保できるうちに積み増すことは、有効なリスク対策の一つです。

  • 運転資金の確保

エネルギー価格や物流コストの上昇は、企業の支出を直接押し上げます。支出の増加に備え、金融機関との連携強化や融資枠の確保など、資金調達手段を事前に広げておくことが重要です。

  • 代替ルートや代替品の確保

複数のサプライヤーの確保や代替素材の検討により、生産停止リスクを抑えることができます。

  • 価格転嫁の実施

コスト上昇分を企業内で吸収し続けるには限界があるため、原材料費や物流費の上昇を製品・サービス価格へ適切に転嫁します。ただし、値上げは需要減少につながる可能性もあるため注意が必要です。

このような対策を総合的に講じることで、不確実性の高い環境下においても事業の安定性を確保できます。

まとめ

ホルムズ海峡封鎖は、原油・LNG供給の不安定化を起点にエネルギー価格や物流コストを押し上げ、日本企業全体に広範な影響を及ぼしています。帝国データバンクの調査でも9割超の企業が経営への悪影響を認識しており、地政学リスクが顕在化している状況です。こうした環境下では、影響の把握とともに統合的なリスク対策が求められます。す。BtoB営業の成果が上がらない、効率を高めたいというご担当者様はお気軽にご相談ください。