サステナブルファッションとは?意味や注目される背景、事例を紹介    

地球温暖化や環境汚染、気候変動などの問題に対して、多くの分野で持続可能な社会の実現に向けた取り組みが求められています。その代表的な分野の一つはファッション業界です。 

現代ではファストファッションの台頭により、おしゃれな衣類を安価に購入できるようになりました。消費者の利便性が高まった一方、大量消費・大量廃棄が問題となっています。 

このような現状から注目されているのがサステナブルファッションです。本記事ではサステナブルファッションの意味や注目される背景、日本企業の取り組み事例をわかりやすく紹介します。 

サステナブルファッションとは 

サステナブルファッションは、生産から廃棄までのライフサイクルにおいて、地球環境や人、社会に配慮したファッションのことです。「サステナブル(Sustainable)」は「持続可能な」という意味のため、持続可能な社会に向けた環境に優しい服と言えます。 

エシカルファッションとの違い 

「エシカル(ethical)」は、倫理的・道徳的という意味です。エシカルファッションはサステナブルファッションと同じ意味として使われることが多いです。しかし、労働者の人権や社会問題を優先する際はエシカルファッション、環境問題を優先する際はサステナブルファッションと使い分けることもあります。 

サステナブルファッションが注目される背景 

サステナブルファッションが注目される背景は、環境負荷の抑制と過酷な労働環境の2つです。ここでは、注目される背景について解説します。 

環境負荷の抑制 

現代のファッション業界の問題点は、環境負荷が大きいことです。 

例えば、服1着を製造するのに約25.5kgの二酸化炭素が排出され、2,300リットルの水が必要です。また、日本国内だけでも端材の排出量は年間45,000トンで、約1.8億着分に相当します。さらに、日本国内では1年間に1回も着ない服が1人当たり35着あり、手放す際に約68%の衣類が可燃ごみや不燃ごみとして処分されます。その量は、1日あたりトラック120台分です。 

加えて、ファッション業界ではあらかじめ設定した量の衣類を製造し、在庫を抱えて販売を行うのが一般的です。しかし、気候や流行の影響により売れ残ることも珍しくありません。売れ残った衣類は過剰在庫となり、場合によっては廃棄処分されます。 

このようにファッションが地球環境に大きな負荷をかけていることから、その影響を抑制するためにサステナブルファッションが注目されています。 

参考:環境省「SUSTAINABLE FASHION」 

過酷な労働環境 

ファストファッションでは、製造コストを抑えるために低賃金や長時間労働になりやすいのが問題です。日本においても安い衣類の需要が高く、ほとんどの衣類が人件費の安い海外で生産されています。その証拠に、2022年の衣料品の輸入浸透率は98.5%でした。 

このように生産コストを抑えることが重視された結果、2013年にバングラデシュにおいて縫製工場の「ラナ・プラザ」の崩落事故が発生しました。建物の倒壊リスクが以前から指摘されていましたが、コストを優先してそのままの状態で多くの従業員を労働させたことが原因です。同事故では1,000人以上が亡くなり、2,500人以上が負傷しました。 

また、ファッション業界が抱える社会問題は児童労働です。具体的に、インドではコットンの種子の栽培に35万人以上の子どもが働いているとされています。このような児童労働は低賃金な上、学校に通えなくなることから問題視されています。 

サステナブルファッションの主な取り組み 

サステナブルファッションは、様々な方法で実現が可能です。ここでは、主な5つの取り組みについて紹介します。 

リサイクル素材の利用 

環境負荷を抑制する取り組みの一つは、リサイクル素材の利用です。例えば、ペットボトルを再利用したリサイクルポリエステルを使用する方法です。石油からポリエステルを生成する方法と比較して、水の使用量や二酸化炭素の排出量を抑えることができます。 

環境に優しい素材を利用 

環境に優しい素材を活用することも、サステナブルファッションの取り組みの一つです。例えば、コットンなどの素材の生産では、収穫量を増やすために農薬や化学肥料を使用することが一般的です。しかし、これらの化学物質は土壌を汚染し、生産者や地域住民の健康に悪影響を及ぼす恐れがあります。そこで、農薬や化学肥料を使わずに生産された、環境に優しい素材の利用が求められています。 

受注生産 

受注生産は、環境負荷を抑制する取り組みの一つです。大量生産した場合、売れ残ると大量廃棄につながる恐れがありますが、受注生産は売れずに廃棄される恐れがないためです。具体的には資源の無駄遣いや焼却処分による二酸化炭素の削減、埋め立てによる土壌汚染の抑制に役立ちます。 

フェアトレード 

フェアトレードとは、発展途上国との貿易において、農作物や製品を適正な価格で購入することです。フェアトレードが実現すると、現地の労働者は十分な賃金を得られるようになり、生活の安定につながります。すると、過酷な労働環境の改善や児童労働の減少に貢献すると期待されています。 

アニマルフリー素材の使用 

アニマルフリーとは、動物由来ではなく、商品開発をする際に動物実験を行わない製品のことです。ファッション業界では毛皮や羽毛、皮革といった動物由来の素材の代わりに、植物由来の素材や再生素材を使用することを指します。代表的なアニマルフリー素材に、フェイクファーやフェイクレザーなどがあります。 

サステナブルファッションの企業の取り組み事例 

サステナブルファッションに注目が集まる中、多くの企業が取り組みを行っています。ここでは2社の取り組み事例を紹介します。 

事例① 株式会社ファーストリテイリング 

株式会社ファーストリテイリングは、世界的なファストファッションのユニクロを展開している企業です。ファストファッションは、大量生産・大量消費・大量廃棄を前提としたビジネスモデルとされていますが、同社はサステナブルファッションの実現に向けて多くの取り組みを行っています。その一例は以下のとおりです。 

  • 商品の生産プロセスにおける有害化学物質排出ゼロに向けた取り組みを推進 
  • ジーンズの仕上げ加工時の水使用量を最大99%削減 
  • 一部製品に再生ポリエステルを採用 
  • 全商品をリサイクル・リユースする取り組みを推進 
  • 取引先工場の労働環境や人権を守るための「行動規範」を策定 

参考:株式会社ファーストリテイリング「環境負荷低減への取り組み」 

事例② 株式会社良品計画 

株式会社良品計画は、無印良品を展開している企業です。同社は2010年から回収した製品をリサイクルする取り組みを行っています。さらに、回収した製品は藍色や黒などに染め直し、「ReMUJI」ブランドとして販売しています。2024年8月期では繊維製品の年間回収量が約97トンでした。そして、ReMUJIの年間販売数が55,746着で、同ブランドの取扱店は31店舗に拡大しています。 

参考:無印良品「無理なく、「自然」に、循環を。」 

サステナブルファッションに着目しよう 

環境問題や労働環境への関心が高まる中、サステナブルファッションは成長が期待される分野です。そのため、ビジネスチャンスも多く、魅力的な市場と言えます。新規事業のアイデアを探しているご担当者様は、この機会にサステナブルファッション関連の事業を検討してみてはいかがでしょうか。