世界の22億人が水不足!水問題の現状と日本企業の取り組みを紹介

水問題は、世界的な社会問題の1つです。世界の約22億人が安全に管理された水にアクセスできず、不衛生な水により多くの子どもが命を落としています。

SDGs(持続可能な開発目標)では、テーマ6に「安全な水とトイレを世界中に」を掲げ、2030年までに解決すべき課題としています。しかし世界人口の増加などにより、ますます深刻になる見込みです。

本記事では世界の現状を知りたい方に向けて、水問題の概要や要因、日本企業の取り組み事例を紹介します。

Contents

水問題とは?世界の現状

水問題とは、衛生的に安全に管理された水にアクセスできず、不衛生な水に頼らざるを得ない人が世界中で約22億人いるとされる問題です。

そして、そのうち約1億1,500万人は河川や用水路などの地表水を使用しています。地表水は病原菌や寄生虫などに汚染されているリスクがあり、毎日多くの子どもが不衛生な水を摂取したことにより命を落としています。

2022年のユニセフが調査した「世界の人々の飲み水へのアクセス状況」は以下のとおりです。

出典:ユニセフ「安全な水

水問題について、これまでに何も対策をしてこなかったわけではなく、2000年以降は世界全体で取り組んできました。その成果として、安全に管理された水にアクセスできた人の割合は2015年の69%から、2022年には73%に改善しています。

しかし、2050年には世界人口の約40%に相当する約39億人が水不足になると予想されており、水問題はより深刻化するとみられています。

日本の水問題の現状

日本の水道普及率は98%で、蛇口を捻れば水が出るのは当たり前の光景となっています。しかし、日本は水不足と無縁というわけではありません。度々、渇水の影響により、大規模な取水制限が行われたこともあるためです。

今後、気候変動などの影響により、日本においても水問題が深刻化する可能性も指摘されています。そのため、日本においても水問題への対策は重要です。

水問題を引き起こしている5つの要因

世界的に水問題を引き起こしている要因は、以下の項目が挙げられます。

  • 世界人口の増加
  • 水需要の増加
  • 気候変動
  • 衛生設備の不足
  • 水紛争

これらの要因がなぜ水問題を引き起こしているのかを詳しく解説します。

世界人口の増加

水問題の要因の1つは、世界人口の増加です。

もともと水が不足していることに加えて、人口が増えることで生活用水の使用量も増加し、水不足が深刻化するためです。

UNFPA(国際連合人口基金)の「世界人口白書2024」によると、2024年の世界人口は81億1,900万人で、前年比で7,400万人増でした。

そして2050年には、世界人口が97億3,000万人に達すると予想されています。

水需要の増加

水問題の要因の1つは、水需要の増加です。

産業の発展や人口の増加を背景に、水需要は年々高まっています。OECD(経済協力開発機構)の調査によると、2050年には2000年の水需要から55%も増加すると予想されています。

OECDの水需要に関する調査を国土交通省がまとめたグラフは以下のとおりです。

出典:国土交通省「水資源に関する国際的な取組み

特に製造用の工業用水が2000年比で400%増と急拡大する見込みで、水不足を深刻化する大きな要因となっています。

気候変動

地球温暖化による気候変動は、水問題の要因の1つです。

なぜなら気候変動は世界の様々な地域で大雨や干ばつをもたらし、水資源の量を大きく変動させます。すると水道などの既存のインフラを破壊したり、水資源が底をついたりするためです。

UN News(国連ニュースセンター)の「World ‘at a crossroads’ as droughts increase nearly a third in a generation」によると、2000年以降、世界全体で干ばつの頻度と期間が29%増加しているとのことです。

また2050年までに世界の人口の4分の3以上が干ばつの影響を受けると指摘されています。さらに、毎年少なくとも1カ月間水不足となる地域に住む人の数は現在の36億人から、2050年には48億~57億人に増加すると推定されています。

衛生設備の不足

世界では3人に1人がトイレを使うことができません。

衛生設備が不足している場合、屋外で排泄をするしかないのですが、その排泄物により川の水が細菌などで汚染されます。すると、その水を飲んだ子どもが下痢などを引き起こす場合があります。

世界において、子どもの死亡原因の1位は下痢です。ユニセフによると、2021年の5歳未満の死亡原因の約9%が下痢でした。実際に毎日1,200人以上が下痢により亡くなっており、衛生設備の不足は水問題をより深刻にしている要因と言えます。

水紛争

水問題の要因に水紛争があります。

水紛争とは、国や地域間での水の奪い合いによる紛争のことです。以下のように、世界では水資源を巡って様々な紛争が発生しています。

出典:国土交通省「水資源問題の原因

このような水紛争により水資源を奪われてしまうと、紛争地域の住民は水不足に陥るため、水問題の要因となるのです。

水問題に対する日本企業の取り組み

水問題は世界の課題として認識されていますが、どのように取り組めばいいのか思い浮かばない方もいるでしょう。そこで、今回は株式会社日清製粉グループ本社と三菱ケミカル株式会社の事例を紹介します。

株式会社日清製粉グループ本社:生産過程における水使用量の削減

株式会社日清製粉グループ本社が運営する日清製粉グループでは、水問題への対策として、生産過程における水使用量の削減に取り組んでいます。

日清製粉グループの製粉事業では、乾式の製造工程が大半のため、もともと水の使用量が少なくて済むのが特徴です。同グループではさらに水の使用量を削減できるように、水の使用量と排出量を把握し管理しています。

またインドのマハラーシュトラ州にあるイースト工場では、ゼロ排水システムを導入し、工場敷地外への排水をゼロにする仕組みを実現しました。さらに、水資源を守る取り組みとして、北海道厚岸郡浜中町にある霧多布湿原の保全活動をしているNPO法人を支援しています。

参考:日清製粉グループ「水資源への取組み

三菱ケミカル株式会社:分散型水処理・供給システム

三菱ケミカル株式会社は、医療部材や食品機能材料、化学繊維などを取り扱う総合化学メーカーです。

三菱ケミカル株式会社は、水問題への解決策の1つとして、分散型水処理・給水システムの開発・製造・管理を行っています。分散型水処理・給水システムとは、同社の膜ろ過技術により、様々な水源の水を安全な水にするシステムです。

さらに、ケニアでは近隣の河川から動力を使わずに浄化するろ過装置を設置しました。同時に浄化した水を地元住民が近隣の人々に販売して、現金収入を得られるビジネスモデルも展開しています。

参考:三菱ケミカル株式会社「分散型水処理・給水システム

世界貢献の一環として水問題に取り組んでみよう

現在、世界で水不足に陥っている人口は約22億人で、2050年には約39億人に増加する見込みです。

世界人口の増加や気候変動などにより、日本においても水問題は人ごとではありません。渇水や干ばつなど様々な影響が出ることも十分に考えられます。

そのような際の備えや世界貢献として、水問題に取り組んでみてはいかがでしょうか。