ポストSDGsとは?意味や動向、外務省が重要視するテーマを解説 

SDGsは持続可能な社会の実現に向けて、2030年までに達成すべき世界共通の目標です。そして、2030年以降の目標として「ポストSDGs」が議論されています。

ポストSDGsは今後の社会の目指すべき目標となるため、ビジネスにも大きな影響があるでしょう。そこで、本記事ではポストSDGsの意味や動向、外務省が重要視するテーマをわかりやすく解説します。

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ポスト SDGs とは

ポストSDGsとは、ポストが「~の後」という意味であることから、その名のとおりSDGsの後の目標です。

そして、SDGsは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略です。2015年の国連サミットにおいて全会一致で採択され、2030年までに達成すべき世界共通の目標が掲げられています。

「誰一人取り残さない」という理念をもとに、貧困や環境・平和・エネルギーなどの17の目標に加えて、目標ごとに細分化された合計169のターゲットで構成されています。

例えば、「貧困をなくそう」の目標に設定されているターゲットの例は以下のとおりです。

  • 2030年までに、現在1日1.25ドル未満で生活する人々と定義されている極度の貧困をあらゆる場所で終わらせる。
  • 2030年までに、各国定義によるあらゆる次元の貧困状態にある、すべての年齢の男性、女性、子どもの割合を半減させる。
  • 各国において最低限の基準を含む適切な社会保護制度及び対策を実施し、2030年までに貧困層及び脆弱層に対し十分な保護を達成する。 等

引用:一般社団法人日本SDGs協会「SDGs(持続可能な開発目標)17のゴール その1

つまり、2030年までに169のターゲットを達成することで、持続可能な社会の実現を目指しています。

SDGs の現状

各国で取り組みが推進されているSDGsですが、2030年までに目標のすべてを達成するのは困難な状態です。

国際的な研究機関「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)」の「Sustainable Development Report」によると、2030年までに目標が達成できるのは169のターゲットのうち、わずか16%とのことです。残りの84%は進展が限定的、もしくは後退しています。

つまり、2030年までにSDGsの目標を達成することは困難な状態です。そこで、SDGsの「誰一人取り残さない」という理念を実現するために、2030年以降の目標としてポストSDGsが必要とされています。

日本のSDGs達成度は世界18位

持続可能な開発ソリューション・ネットワークの同報告書によると、2024年の日本のSDGs達成度は79.9で、世界169カ国のうち18位でした。また、日本のSDGsの進捗状況は以下のように評価されています。※SDGs達成度は、各国のSDGsの取り組みを100点満点で数値化した指標です。

出典:持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)「Sustainable Development Report

上の図は、緑が目標を達成していることを示し、濃い赤に近づくほど進捗が遅れていることを示しています。

日本が達成した目標は、「目標9.産業と技術革新の基盤を作ろう」です。その一方、大きな課題があると評価されているのは以下の5つです。

  • 目標5.ジェンダー平等を実現しよう
  • 目標12.つくる責任、つかう責任
  • 目標13.気候変動に具体的な対策を
  • 目標14.海の豊かさを守ろう
  • 目標15.陸の豊かさも守ろう

このように、世界18位と評価される日本の取り組みでも不十分とされています。このことからも、世界中の多くの国が2030年までに目標の達成が難しいとわかるでしょう。

日本におけるポスト SDGs の動向

外務省はポストSDGsが国際的な議論となるのを見据えて、2024年4月に「国際社会の持続可能性に関する有識者懇談会」を立ち上げ、同月22日に第1回会合を開催しました。その後も会合を重ね、2024年9月3日に第4回会合を開催し、計4回の会合の「中間とりまとめ」を発表しました。「中間とりまとめ」では、今後も議論を深める必要があるテーマとして以下の7項目を挙げています。

  • ひとりひとりのウェルビーイングの向上

若い世代が未来に対して希望を持つことができるような社会づくりのためには、「ひとりひとりのウェルビーイング(生活の質の向上を目指すもの)」が必要とのこと。特に、「健康」「成長」「つながり」のキーワードを重要視しています。

ウェルビーイングは、ポストSDGsにおいて重要なキーワードと考えられているため、詳細は後ほど解説します。

  • 我が国の持続的成長モデルの創出・発信

日本は少子高齢化・人口減少などの課題を抱える先進国です。その課題に取り組み、日本が持続的成長モデルを実証・確立することで、国際社会全体の持続可能性に貢献するとしています。

  • 新たな分野のルール形成の主導

国際的なルールや基準の形成について、日本の総力を挙げて主導を目指すことです。これにより、新たな技術の実証・市場化・大規模展開の支援につながるとしています。

  • 「持続可能性」時代のバリューチェーンの再構築

日本国内で、「循環型社会・経済」を支えるバリューチェーンを再構築することです。そして、企業が技術力や資金力、ネットワーク力などを十分に発揮できるような環境整備が重要としています。

  • グローバル・サウスとの懸け橋

日本がグローバル・サウスとグローバル・ノースをつなぐ懸け橋の役割を果たすことです。グローバル・サウスは新興国や途上国を指す言葉で、グローバル・ノースは先進国を指します。

  • 科学技術外交の推進

持続可能性をキーワードにした科学技術外交を行い、「人への投資」を国際的に主導し、国際的な人材循環を図ることです。

  • すべての前提としての平和の実現

平和は持続可能性を実現する前提です。そのため、どのようにすれば平和の実現に貢献できるかを議論するとしています。

外務省は、これらの議論を深めて日本独自のポストSDGsの考え方を確立することで、国際社会における持続可能性への取り組みを主導するとしています。

注目のキーワードは「ウェルビーイング」

ポストSDGsで注目されているキーワードは、「ウェルビーイング」です。

ウェルビーイングとは、英語でWell-beingのことで、Well(良い)とbeing(状態)を組み合わせた言葉です。そのため、個人や社会の良い状態、言い換えると生活の豊かさや幸福度を意味します。

SDGsでは、サステナブル(持続可能な)がキーワードでした。ポストSDGsでは、サステナブルとウェルビーイングを組み合わせた考え方が有力視されています。

ビジネスにおけるポスト SDGs の重要性

ビジネスにおいて、ポストSDGsの方向性を把握することは重要です。SDGsと同様に、ポストSDGsの考え方を中心に新たなビジネスチャンスが生まれる可能性が高いためです。

実際に、SDGsの市場規模は12兆ドルと試算されています。2021年の世界の自動車市場規模は3兆6,011億ドルであることからも、SDGsの市場規模の大きさがわかるでしょう。

このように、SDGsが世界的なビジネスチャンスを生み出したことを考えると、ポストSDGsもビジネスへの影響力が大きいと考えられます。

参考:Business Research Insights「自動車市場規模、シェア

ポストSDGsの動向に注目しよう

SDGsの達成が難しいとされる中、2024年4月に外務省はポストSDGsに関する議論を始めました。早い段階で日本独自のビジョンを確立し、国際的なポストSDGsの議論においてリーダーシップを発揮するためです。そのため、今後は日本国内で具体的な議論が進むことが予想されます。ビジネスチャンスを逃さないためにも、これからのポストSDGsの動向に注目していきましょう。