グリーンインフラは、自然が持つ機能を活用したインフラ整備です。自然災害・地球温暖化などの対策として注目されています。
本記事では新規事業のアイデアを探している方に向けて、グリーンインフラの意味やメリット・デメリットをわかりやすく解説します。
Contents
グリーンインフラとは
グリーンインフラとは、グリーンインフラストラクチャーの略で、自然の持つ機能を生かしたインフラ整備のことです。
例えば、ビルの屋上緑化や棚田の保全、道路の植栽などがあります。
国土交通省では、「社会資本整備や土地利用等のハード・ソフト両面において、自然環境が有する多様な機能を活用し、持続可能で魅力ある国土・都市・地域づくりを進める取組」と定義しています。
参考:国土交通省「【導入編】なぜ、今グリーンインフラなのか」
グレーインフラとの違い
グリーンインフラと対照的な言葉がグレーインフラです。グレーインフラは、コンクリートなどの人工構造物によるインフラ整備を指します。
従来のインフラ整備においては、コンクリートで街を覆うように開発が進められていました。しかし、現代社会では、グリーンインフラとグレーインフラの双方の良さを生かしたインフラ整備が求められています。
グリーンインフラが注目される背景
グリーンインフラが注目される背景は、国土交通省による普及の推進、人口減少・少子高齢化、既存のインフラの老朽化です。3つの背景について詳しく紹介します。
国土交通省による普及の推進
国土交通省は、2019年に「グリーンインフラ推進戦略」を発表しました。「グリーンインフラ推進戦略」は、推進すべき場面や推進するための方策を示したものです。この発表により、日本においてもグリーンインフラが知られるようになりました。
そして、2023年に「グリーンインフラ推進戦略2023」が発表され、官民が両輪となり、あらゆる分野でグリーンインフラを普及・展開するとしています。
人口減少・少子高齢化
日本は人口減少・少子高齢化が進んでおり、空き家や空き地などの周囲と比べて活用されていない土地の増加が社会的な課題です。2050年に全国の居住地域の約半数で人口が50%以上減少し、国土の約2割が無居住化すると試算されています。
このような居住の低密度化や生活に必要な施設の点在化は、インフラの持続可能性を低下させる恐れがあります。
なぜなら、人口密度が低下した場合、住民一人当たりのインフラの維持管理費用が課題となるためです。人口密度と住民一人当たりの歳出の関係は以下のとおりです。
出典:国土交通省「人口減少社会に対応した土地利用」
一方、グリーンインフラは維持費用を抑え、持続可能なインフラ整備ができると期待されています。
既存のインフラの老朽化
既存のインフラは高度成長期に整備されたものが多く、これから建設後50年以上経過した施設の割合が高まっていきます。それに伴い、インフラのメンテナンス費用も増大する見込みです。具体的には、2018年に5.2兆円だったのが2038年には6.6兆円になると試算されています。以下のグラフは、今後予想されるメンテナンス費用の推移です。
出典:国土交通省「国土交通省所管分野における社会資本の将来の維持管理・更新費の推計」
このようにメンテナンス費用が増大する中、自然を活用することで長い間利用できるとして注目されているのがグリーンインフラです。
グリーンインフラの3つのメリット
グリーンインフラに取り組むメリットは以下の3つです。
- 生物多様性の保全につながる
- 地球温暖化対策になる
- 自然災害への対策になる
3つのメリットについて解説します。
メリット① 生物多様性の保全につながる
グリーンインフラに取り組むメリットは、自然が増えることで生物多様性の保全につながることです。例えば、緑化は動植物の生息場を作り出し、雨水の地下浸透は水質が浄化され河川の生物が住みやすくなります。このように生物多様性が保たれることで、自然や生き物に触れる機会が増え、人々が癒される効果も期待できます。
メリット② 地球温暖化対策になる
グリーンインフラに取り組むメリットは、地球温暖化対策になることです。
例えば、屋上緑化は外部の熱を遮断する役割があるため、冷暖房の効率を高めます。すると、省エネとなり二酸化炭素の排出量削減につながります。
また、グレーインフラでは、都市部をコンクリートで覆うことで発生するヒートアイランド現象が問題でした。グリーンインフラはコンクリート部分を緑化することで、植物が二酸化炭素を吸収するのに加えて、ヒートアイランド現象を緩和できると期待されています。
※ヒートアイランド現象とは、都市部の気温が郊外と比較して高くなる現象です。
メリット③ 自然災害への対策になる
グリーンインフラに取り組むメリットは、自然災害への対策になることです。
例えば、緑化は木が根を張ることで、土砂災害が起こりにくくなります。他にも、雨水の地下浸透は、地域の水の吸収量が増えて洪水を抑制します。
このように、グリーンインフラは自然の持つ機能を積極的に活用することで、災害に強い地域づくりが可能です。
グリーンインフラのデメリット
グリーンインフラにはメリットだけではなく、以下の2つのデメリットがあります。
- 初期費用がかかる
- メンテナンスに手間がかかる
2つのデメリットについて解説します。
デメリット① 初期費用がかかる
グリーンインフラのデメリットは、地域の特性に適したインフラ整備が必要なため、設計などに初期費用がかかることです。例えば、地盤の弱い地域に雨水浸透をすると、土砂崩れを招くなどの逆効果な場合もあるためです。
反対に、グレーインフラは安く整備できる一方、メンテナンス費用や使用できる年数などを考慮すると、コストパフォーマンスが悪いこともあります。
デメリット② メンテナンスに手間がかかる
グリーンインフラのデメリットは、メンテナンスに手間がかかることです。例えば、緑化は草刈や剪定、水やりなどの定期的なメンテナンスが必要です。このことから、グリーンインフラはコストパフォーマンスが悪いと感じるかもしれません。しかし、長期的に使用できることを考慮すると、費用の節約になると考えられています。
グリーンインフラの事例:気仙沼市大谷海岸
ここではグリーンインフラの事例として、大谷地区振興会連絡協議会・大谷里海づくり検討委員会の「大谷海岸の砂浜再生まちづくり事業」を紹介します。
宮城県気仙沼市にある大谷海岸は、東日本大震災で被災した結果、砂浜のほとんどが消失しました。さらに残された砂浜の上には、防波堤の建設が予定され、大谷海岸の砂浜を失う計画でした。
しかし、防波堤事業を実行すると環境や景観への悪影響、観光客や商業施設への集客の減少などが考えられ、地域コミュニティの分断が懸念されていたとのことです。
そこで、同事業では署名活動を行い、当初の計画を大きく変更し、砂浜を残した整備を実現しました。その結果、2021年には11年ぶりに海水浴場がオープンし、1.2万人の海水浴客が訪れています。
参考:国土交通省「第2回グリーンインフラ大賞「国土交通大臣賞」を決定しました!」
まとめ
人口減少・少子高齢化、インフラの老朽化などにより、グリーンインフラが注目されています。国土交通省も推奨していることから、今後もビジネスチャンスのある分野と言えるでしょう。新規事業のアイデアに悩んでいる方は、グリーンインフラ関連の事業を検討してみてはいかがでしょうか。