エシカル消費は、持続可能な社会の実現に向けて注目されている消費行動です。
SDGsの認知度が高まり、達成に向けた取り組みが求められる現代において、ビジネスを展開するうえでも重要なキーワードです。
しかし、「今さら意味を聞けない」や「具体例が知りたい」というビジネスパーソンもいるでしょう。
そこで本記事ではエシカル消費の意味や注目される背景、企業の取り組み事例3選を紹介します。
Contents
エシカル消費とは
エシカル消費とは人や社会、環境に配慮した消費行動のことです。エシカルは倫理的や道徳的という意味から、日本語では「倫理的消費」とも呼びます。簡単にいえば、人や社会、環境がより良くなるであろうと感じる商品やサービスを優先的に購入する考え方のことです。
エシカル消費が注目される背景
近年ではエシカル消費が注目されるようになり、労働環境だけではなく、畜産やアパレルなどの多くの産業で倫理的な取り組みが進められています。
このようにエシカル消費が注目される背景は以下の2つです。
- SDGsの達成
- 社会・環境問題への対応
この章では注目される背景についてわかりやすく解説します。
SDGsの達成
エシカル消費は、SDGs目標12の「つくる責任、つかう責任」の達成に深く関係しています。エシカル消費の考え方が広く浸透することで、企業などの社会活動に大きな影響を及ぼし、持続可能な生産・消費形態の確保につながるためです。
SDGsとは、2015年に国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」のことで、2030年までに達成すべき持続可能な開発目標です。17の目標のうち目標12では、2030年までに「フードロスを半分に減らす」や「天然資源を持続的に管理し、効率よく使えるようにする」などが達成目標に掲げられています。
社会・環境問題への対応
エシカル消費は、さまざまな社会問題・環境問題への対応策として注目されています。
例えば、児童労働による問題です。ユニセフの「児童労働」によると、世界の子どもの10人に1人が働いているとのことです。そのなかでも健康・安全・道徳面で有害な労働、人身売買、強制労働、兵士の徴用などの「最悪の形態の児童労働」に従事する子どもが7,900万人もいます。
このような児童労働による商品・サービスをエシカル消費により避けることで、児童労働を抑制できると期待されているのです。
また環境汚染や地球温暖化など、環境問題に対しても同様です。エシカル消費の浸透により企業に取り組みを促すことで、社会全体が良い方向に改善すると期待されています。
エシカル消費の具体例
エシカル消費は商品を購入する際に、以下の5つのうちいずれかに配慮した商品・サービスを優先的に選択する消費行動です。
- 人
- 社会
- 地域
- 環境
- 動物福祉
この章では、エシカル消費がどのような消費行動なのかイメージしにくい方に向けて、各項目の具体例を紹介します。
人
障がい者支援につながる商品・サービスを選択するのもエシカル消費です。例えば、障がい者が作った製品を適正価格で購入することで、低賃金で働かされるのを予防できます。
厚生労働省の「平成30年度障害者雇用実態調査」では、平成30年5月の障がいごとの平均賃金は以下のとおりでした。
身体障がい者:21万5千円
知的障がい者:11万7千円
精神障がい者:12万5千円
発達障がい者:12万7千円
平成30年の民間給与の平均は441万円(月額36万7千円)であったことから、日本において障がい者は低賃金で働いているのが現状です。
つまりエシカル消費は、障がい者が輝ける社会の実現につながり、ひいてはSDGsの目標でもある多様性の実現につながります。
社会
社会に配慮したエシカル消費の具体例は、フェアトレード商品を選択することです。
フェアトレードとは、公正な取引を意味する言葉で、発展途上国などで生産された製品を適正な価格で購入する仕組みです。フェアトレード商品は認証機関がフェアトレードと認めた原材料を使った製品のことで、購入により取り組んでいる企業を応援できます。
生産者が正当な対価を得られることで、生産者の子どもが児童労働から解放され、教育を受けられるといったメリットもあります。
またフェアトレード商品かどうかは、認証ラベルが貼ってあるかどうかで判別可能です。
地域
地域に配慮したエシカル消費の具体例は、地産地消を意識することです。地元地域で採れた食材を購入することで、他地域からの食材の輸送を削減できます。すると地域の活性化だけではなく、温室効果ガスの排出削減にもつながり、持続可能な社会の実現に貢献できるのです。
環境
環境に配慮したエシカル消費の具体例は、再生可能エネルギーを使用することです。例えば太陽光発電や風力発電などを積極的に活用し、化石燃料を燃やす火力発電から脱却することで、二酸化炭素排出量を削減できます。また、リサイクル品を選択するのも環境に配慮したエシカル消費といえます。
動物福祉
動物福祉に配慮したエシカル消費の具体例は、アニマルウェルフェア畜産認証の商品を選ぶことです。
アニマルウェルフェアとは、家畜が誕生から死を迎えるまでストレスや苦痛なく健康的に生活できる飼養管理です。このような動物福祉は世界的な潮流となっており、エシカル消費の選択肢に含まれます。
例えば、採卵養鶏業における「バタリーケージ」です。
バタリーケージとは鶏を金網のなかに収容し、その金網を連ねて飼育する手法です。その飼育方法は鶏の福祉にとって重大な欠点があるとして、EUでは2012年に全面的に禁止されました。
このような動物福祉への配慮は日本でも議論されつつあり、山梨県では2022年に全国の自治体に先駆けて「やまなしアニマルウェルフェア認証制度」を創設しています。
企業のエシカル消費への取り組み事例3選
エシカル消費への対応として、国内企業3社の取り組み事例を紹介します。
事例① ソニー:環境負荷ゼロへの取り組み
出典:ソニー「ソニーの環境計画」
ソニーは2050年までに環境負荷をゼロにすることを、長期環境計画の「Road to Zero」で掲げている企業です。実現に向けて気候変動・資源・生物多様性・化学物質の4つの項目で、それぞれ以下のゴールを設定しています。
気候変動:製品でもCO2排出量ゼロ
資源:新たな採掘資源の使用ゼロ
化学物質:原材料からの徹底管理
生物多様性:自然環境との共生
このように、企業が高い目標を掲げることで製品やサービスの付加価値を高めているのです。
事例② セブン‐イレブン:フードロスへの取り組み
出典:セブン-イレブン「食品ロス削減のためエシカルプロジェクトを推進しています!」
セブン‐イレブンは、食品ロス削減を目的にエシカルプロジェクトを推進しています。具体的には、店側が販売期限の迫った弁当やおにぎりに緑色のシールを貼り、その商品を消費者が購入することでポイントを付与する仕組みです。
つまり、消費期限の近い商品を優先的に購入してもらうことで、食品ロスにつながります。店舗側は食品を廃棄する必要がなくなり、消費者はポイントがたまるため、双方にメリットのあるプロジェクトといえます。
事例3 日本ハム:動物福祉に対する取り組み
出典:日本ハム「アニマルウェルフェアの取り組み」
日本ハムは動物福祉に対する配慮として、アニマルウェルフェアに取り組んでいる企業です。
同社では2020年に「アニマルウェルフェアに配慮した取り組みの推進」を掲げ、2022年には「アニマルウェルフェアガイドライン」を制定しました。2030年度までに、日本ハムが資本の過半数を保有する国内養豚場において、妊娠ストールの廃止を掲げているのが特徴です。
妊娠ストールとは、妊娠期間中の母豚を単頭飼育するための狭い檻のことで、振り返ることもできないことから動物福祉に反すると批判されています。
日本ハムではすでに一部の養豚場で妊娠ストールを廃止し、母豚のストレスの軽減により生産性が向上しているとのことです。
エシカル消費の浸透で倫理的な取り組みが必要に
エシカル消費は、倫理的・道徳的に正しいと思える製品やサービスを選択する消費行動です。SDGsの達成や地球温暖化、社会課題への解決策として注目を集めています。企業においてもエシカル消費で選ばれるために、ますます社会課題の解決に役立つ倫理的な取り組みが求められるでしょう。