地球沸騰化とは?企業の経済活動への影響や対策方法を解説

近年、日本においても40℃を超える日が珍しくなくなったと思いませんか。現代は、地球温暖化を超えて地球沸騰化と呼ばれることがあります。

地球沸騰化は、2023年の「ユーキャン 新語・流行語大賞」にもノミネートされ、注目を浴びた言葉です。しかし、「今さら意味を聞けない」と思っているビジネスパーソンもいるでしょう。

そこで本記事では、地球沸騰化の意味や要因、企業への影響などをわかりやすく解説します。

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地球沸騰化とは?

地球沸騰化とは、地球温暖化がより深刻になった状況を表す言葉です。2023年7月に国連にてグテーレス事務総長が「地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰化の時代が到来したのです。」と発言したことで注目を浴びました。

実際に世界の年平均気温は上昇を続けており、100年で0.76℃上昇しています。世界の平均気温偏差の推移は以下のとおりです。

出典:気象庁「世界の年平均気温

2015年の国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)で採択されたパリ協定は、世界共通の目標として「世界の平均気温上昇を産業革命以前と比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃以内に抑える努力をする」を掲げています。

しかし、BBC NEWS  JAPANの「世界の平均気温、年平均で「1.5度」目標超える=EU機関」によると、すでに努力目標の1.5℃を超えたとの研究も出てきているのが現状です。

引用:国際連合広報センター「記者会見におけるアントニオ・グテーレス国連事務総長発言(ニューヨーク、2023年7月27日)

地球沸騰化の要因

なぜ地球沸騰化まで温暖化が深刻化したのかと言えば、大きく以下の2つの要因が考えられます。

  • 温室効果ガスの排出
  • 森林破壊

地球沸騰化を把握するために、2つの要因についても理解を深めましょう。

温室効果ガスの排出

地球沸騰化の最大の要因と考えられているのは、温室効果ガスの排出です。

二酸化炭素やメタンガスなどの温室効果ガスには、地球から宇宙へ熱を放出するのを妨げる働きがあります。この働きにより、地球上の温室効果ガスの量が増えると、地球に熱がたまりやすくなり温暖化につながるのです。

パリ協定の1.5℃の努力目標を達成するには、2030年に二酸化炭素の排出量を全世界で約42%削減する必要があります。しかし、2022年の二酸化炭素の排出量は1.2%増加しており、目標の達成は容易でないのが現状です。

森林破壊

地球沸騰化の2つ目の要因は森林破壊です。

植物は光合成により二酸化炭素を吸収し、酸素を排出します。そのため森林破壊が進むと、二酸化炭素の吸収源である植物が減ることになるので、大気中の二酸化炭素の濃度が高くなります。

実際に世界の森林は、2010年から2020年の年平均で470万ヘクタールが減少しました。470万ヘクタールは東京ドーム100万個分に相当します。わかりやすく言えば、1分に東京ドーム1.9個分の森林がなくなっていることになります。

地球沸騰化による企業への影響

地球沸騰化の影響は、異常気象の発生や生態系の破壊などが挙げられます。しかし、ビジネスパーソンであれば、企業の経済活動にどのような影響が出るのかを知りたいでしょう。そこで、ここでは地球沸騰化による企業への影響をわかりやすく解説します。

原材料の調達が困難になる

地球沸騰化による企業への影響は、原材料の調達が困難になることです。

例えば、気温が高くなることで農作物が不作になることも珍しくなくなるでしょう。また、気温の上昇は海水温の上昇につながり、海の生態系の乱れで漁獲量が減るかもしれません。

このような農作物の不作や漁獲量の減少により、原材料の調達が困難になったり、高騰したりするリスクがあります。

自然災害による損害のリスクが高まる

地球温暖化の影響に、海面上昇や降水量の増加などが挙げられます。地球沸騰化では、より影響が大きくなるため、沿岸部の低い地域の人々や設備は引っ越さなければならなくなるでしょう。また、豪雨や洪水などの自然災害で設備が被害を受けるリスクも高まります。

さらに、サプライチェーンの施設が被害を受けることで、サプライチェーン全体に混乱を生じる可能性もあります。

規制強化によりコストが増える

地球沸騰化の現在、世界では気候変動対策として環境規制を強化する動きが見られています。例えば、温室効果ガスの排出規制や環境報告書の公開です。これらに対応するためには、新たな設備を導入したり、報告書の作成や監査をしたりする必要があります。するとコストが増大し、企業の安定的な経営に影響が出る場合も考えられます。

従業員の健康被害のリスクが高まる

地球沸騰化は人々の健康にも悪影響を及ぼします。気温が上昇することで、熱中症のリスクが高まることはイメージしやすいでしょう。

他にも気温が高くなることで、感染症を媒介する昆虫の生息域の拡大が懸念されています。例えばマラリアを媒介するハマダラカ、デング熱を媒介するネッタイシマカ、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)を引き起こすマダニなどです。

重症熱性血小板減少症候群は致死率が高く、命に関わる感染症です。マダニは西日本に生息していましたが、地球温暖化の影響により生息域を北に拡大しています。

このように、企業にとって従業員が健康被害を受けるリスクが高まるのも地球沸騰化の影響です。

気温上昇による労働生産性の低下

UN Newsの「INTERVIEW: Heatwaves endanger workers and reduce productivity」によると、気温が上昇すると仕事の生産性が低下するとのことです。具体的には気温が24~26℃を超えると、暑さによるストレスで生産性が低下し、33~34℃を超えると最大50%低下します。つまり企業にとって、地球沸騰化は労働生産性を低下させるリスクがあります。

地球沸騰化を防止するための対策

人類や経済活動などへの影響が大きいことから、地球沸騰化への対策は国や自治体だけではなく、企業・個人レベルでの取り組みが求められています。しかし、何をすれば良いのかわからないという方もいるでしょう。そこで、企業ができる地球沸騰化の対策について解説します。

再生可能エネルギーを活用する

地球沸騰化を防止するための一つ目の対策は、風力発電・太陽光発電・水力発電などの再生可能エネルギーを活用することです。再生可能エネルギーは、地球温暖化の要因となる温室効果ガスの排出を抑えられるためです。再生可能エネルギーが普及することで、石炭や石油を燃料にして発電する火力発電の割合を減らす効果も期待できます。

二酸化炭素の吸収量を増やす

地球沸騰化を防止するには、二酸化炭素の排出量を削減するだけではなく、すでに排出された二酸化炭素の量を減らすことも大切です。そこで対策方法としては、森林保護や植林、敷地内の緑地を増やすなどが挙げられます。植物を増やすことで、二酸化炭素の吸収量を高められるためです。また、空気中の二酸化炭素を回収して地中などに埋めるといった、より積極的に減らす技術の開発も進められています。

地球沸騰化の今!企業の取り組みがますます重要に

地球沸騰化は、人類や生態系に破壊的な影響を及ぼすと考えられています。また、気温上昇は2100年に2.8℃に達する見込みで、さらなる深刻化が予想されています。このため、企業・個人レベルでの対策がますます重要視されるでしょう。