食品・飲料メーカーの国内売上高ランキングは、直近通期で日本たばこ産業(JT)が約3兆4,677億円、サントリーホールディングスが約3兆4,325億円(酒税込み)、アサヒグループホールディングスが約2兆8,947億円で上位を占めます。ただしランキングは「どこまでを食品・飲料と数えるか」で順位が入れ替わるため、本記事では各社の一次資料(決算短信・有価証券報告書)で確認した数字と、その集計条件を明示したうえで、上位企業が今どこで稼ぎ方を変えているのかを整理します。
この記事の数値は各社の直近通期決算(2025年12月期または2026年3月期)を一次資料で確認したものです。業界全体の市場規模・利益率・事業所数は公的統計を自動更新している食品・飲料業界ファクトシートに接続しています。
食品・飲料業界の現在地:市場は伸びているが、利益率は薄い
食品・飲料の国内市場規模は52.55兆円(2024年・出荷額/売上ベース、財務省 法人企業統計)で、前年比+10.0%。直近四半期(2026年1-3月)の売上高も前年同期比+6.0%と伸びています。一方で長期成長率(CAGR 2005〜2024年)は+0.9%/年にとどまり、足元の伸びの多くは数量ではなく価格改定による金額の伸びだと読めます。
| 指標 | 最新値 | 時点 | 読み方 |
|---|---|---|---|
| 市場規模(出荷額・売上) | 52.55兆円 | 2024年 | 前年比+10.0%。同一出典で比較できる18年のうち最高水準 |
| 長期CAGR | +0.9%/年 | 2005〜2024年 | 構造的な成長は緩やか。足元の伸びは価格要因が大きい |
| 売上高営業利益率 | 3.6% | 2024年 | 直近20年の最高は2016年の3.8%。薄利構造は変わっていない |
| 営業利益率(四半期) | 1.9% | 2026年1-3月 | 前年同期比+1.1pt。改善はしているが水準は低い |
| 事業所数 | 24,769 | 2022年 | 小規模事業者が分散する構造(参入密度780.7所/兆円) |
| 輸入浸透度/輸出比率 | 2.9%/0.9% | 2023年 | 輸出が少なく輸入比率3.0%。円安は売上より原価に効く |
| 価格転嫁ギャップ(全国値) | -5.4pt | 2026年6月 | 消費者物価−企業物価の前年比差。仕入コストを売価に転嫁しきれていない |
ここが食品・飲料業界を読むときの起点です。売上は増えるが、利益率は3%台で張り付く。だから上位企業は「もっと売る」ではなく「利益の出る場所を持つ」方向に動いています。以下のランキングは、その動きの結果として見ると意味が読み取れます。

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食品・飲料メーカーランキング【売上高トップ10・2026年版】
| 順位 | 企業 | 売上高 | 前期比 | 決算期 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 日本たばこ産業(JT) | 3兆4,677億円 | +13.4% | 2025年12月期 |
| 2 | サントリーホールディングス | 3兆4,325億円(酒税込み) | +0.4% | 2025年12月期 |
| 3 | アサヒグループホールディングス | 2兆8,947億円 | △1.5% | 2025年12月期 |
| 4 | キリンホールディングス | 2兆4,334億円 | +4.1% | 2025年12月期 |
| 5 | 味の素 | 1兆5,837億円 | +3.5% | 2026年3月期 |
| 6 | 日本ハム | 1兆4,574億円 | +6.3% | 2026年3月期 |
| 7 | 山崎製パン | 1兆3,114億円 | +5.4% | 2025年12月期 |
| 8 | 明治ホールディングス | 1兆1,737億円 | +1.7% | 2026年3月期 |
| 9 | Umios(旧マルハニチロ) | 1兆1,059億円 | +2.5% | 2026年3月期 |
| 10 | 日清製粉グループ本社 | 8,650億円 | +1.6% | 2026年3月期 |
この順位の読み方(他のランキングと数字が合わない理由)
ランキングを実務で使うなら、集計条件の違いを知っておく必要があります。
- JTは売上の大半がたばこ事業:加工食品事業も持つため東証の業種分類では「食料品」だが、食品メーカーとして比較するなら加工食品事業だけを見る必要がある
- サントリーHDは非上場:株式は公開していないがIRで業績を開示しており、売上収益は酒税込み3兆4,325億円/酒税控除後3兆701億円と2つの数字がある。どちらを使うかで順位が変わる
- 決算期が12月期と3月期で混在:2025年12月期と2026年3月期を並べているため、厳密には同じ期間の比較ではない
- 会計基準の違い:IFRSの「売上収益」と日本基準の「売上高」は範囲が完全に一致しない
- 社名変更がある:9位のUmiosは2026年3月にマルハニチロから社名変更した企業。古いランキングでは「マルハニチロ」で載っている
「食品メーカーランキング」で検索して出てくる順位がばらばらなのは、この5点のどれを採るかが記事ごとに違うためです。社内資料に使うときは順位ではなく、集計条件と決算期を添えた金額で引用してください。
大手4社は、どこで稼ぎ方を変えているか
利益率3%台の市場で上位を維持している企業は、主力商品の値上げだけで戦っていません。直近決算から見える4つの型を挙げます。
キリンホールディングス:酒類以外の柱を立てる
2025年12月期の売上収益は2兆4,334億円(+4.1%)、事業利益は2,518億円(+19.3%)で過去最高。注目すべきはセグメントの中身です。
| セグメント | 売上収益 | 前年比 | 事業利益 |
|---|---|---|---|
| 酒類 | 1兆753億円 | △0.6% | 1,354億円(+9.1%) |
| 飲料 | 5,782億円 | +2.4% | 677億円(+5.8%) |
| 医薬 | 4,965億円 | +0.2% | 1,023億円(+11.4%) |
| ヘルスサイエンス | 2,514億円 | +43.4% | 111億円(前年△109億円から黒字転換) |
主力の酒類は減収です。それでも全社で最高益なのは、医薬が事業利益1,023億円を稼ぎ、ファンケルの完全子会社化を含むヘルスサイエンスが赤字から黒字に転換したからです。「本業が伸びない前提で、別の柱が利益を出す構造」を作った例と言えます。
日本ハム:食品以外の資産で稼ぐ
2026年3月期は売上高1兆4,574億円(+6.3%)、事業利益683億円(+60.7%)で売上・事業利益ともに過去最高。売上の伸びは食肉事業(豪州産牛肉の販売伸長と国産鶏肉の単価上昇)ですが、事業利益が6割増えた理由にはボールパーク事業の来場者増が挙げられています。食品メーカーが自社ブランドの体験施設を収益源として持つ、という形です。
アサヒグループホールディングス:事業継続リスクが売上を直撃した年
2025年12月期は売上収益2兆8,947億円(△1.5%)、営業利益1,859億円(△30.9%)と減収減益。原因はサイバー攻撃による国内システム障害で、第4四半期の出荷・受注が大きく落ち込みました。決算発表そのものも2026年7月8日まで遅れています。
2026年12月期は売上収益3兆2,200億円(+11.2%)を計画しており、回復前提の見通しです。ここから読めるのは、食品・飲料は受注・物流・出荷が止まると即座に売上が消える事業構造だということです。商品力やブランドの議論とは別に、供給を止めない仕組みが競争力そのものになっています。
Umios(旧マルハニチロ):事業の再定義を社名から始める
2026年3月期は売上高1兆1,059億円(+2.5%)、営業利益311億円(+2.7%)でいずれも過去最高。同社は2026年3月にマルハニチロからUmios(ウミオス)へ社名を変更し、中期経営計画「For the ocean, for life 2027」のもとで不採算漁業の撤退や北米生産拠点の統合を進めています。水産という原料調達リスクの大きい事業で、やめる領域を決めることで利益を作った例です。
なお同社は増収・営業増益の一方で、経常利益と最終利益は減益でした。ランキングの売上順位だけを見ると読み取れない部分なので、金額と併せて利益の内訳を見る必要があります。

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この業界で新規事業・商品戦略を考えるときの3つの起点
- 「量」ではなく「利益が出る場所」から入る:業界の営業利益率は3.6%(2024年)。売上規模を追う戦略は構造的に苦しい。キリンの医薬・ヘルスサイエンス、日本ハムのボールパークのように、食品の隣で利益率の高い領域を探すほうが現実的
- 円安は原価に効く前提で設計する:輸出比率0.9%・輸入比率3.0%(2023年)のため、円安は売上増より原価増として表れる。価格転嫁ギャップも全国値で-5.4pt(2026年6月)と転嫁しきれていない
- 供給を止めない設計を戦略に含める:アサヒの事例のとおり、システム障害・物流停止は商品力に関係なく売上を消す。事業計画のリスク欄ではなく戦略の一部として扱う
値上げが通る商品と通らない商品の分かれ目は別記事で詳しく整理しています。円安が業種別にどう効くかは円安で儲かる業界・企業、PBとの競合構造はプライベートブランドの解説を参照してください。業界の最新データは食品・飲料業界ファクトシートで自動更新しています。
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よくある質問
Q1. 食品・飲料メーカーの売上高1位はどこですか?
直近通期の売上高では日本たばこ産業(JT)が3兆4,677億円(2025年12月期)で最大です。ただしJTは売上の大半がたばこ事業のため、食品事業だけで比較する場合は順位が変わります。非上場のサントリーホールディングスは3兆4,325億円(2025年12月期・酒税込み)で、酒税控除後では3兆701億円です。
Q2. 食品・飲料業界の市場規模はどのくらいですか?
国内市場規模は52.55兆円(2024年・出荷額/売上ベース、財務省 法人企業統計)で前年比+10.0%です。ただし2005〜2024年の長期成長率は+0.9%/年にとどまり、足元の金額の伸びは価格改定の影響が大きいと読めます。
Q3. 食品・飲料メーカーの利益率はどのくらいですか?
業界全体の売上高営業利益率は3.6%(2024年)です。直近20年の最高でも2016年の3.8%で、薄利構造が続いています。直近四半期(2026年1-3月)は1.9%で、前年同期比+1.1ptの改善にとどまります。
Q4. マルハニチロはなくなったのですか?
会社がなくなったわけではなく、2026年3月に社名をマルハニチロからUmios(ウミオス)に変更しました。2026年3月期の売上高は1兆1,059億円(+2.5%)、営業利益311億円(+2.7%)でいずれも過去最高です。2026年より前に作成されたランキングでは「マルハニチロ」の名称で掲載されています。
Q5. ランキングによって順位が違うのはなぜですか?
集計条件が記事ごとに異なるためです。主な違いは、たばこや医薬など食品以外の事業を含めるか、サントリーのような非上場企業を含めるか、酒税込みか控除後か、決算期(12月期と3月期)をどう揃えるか、IFRSの売上収益と日本基準の売上高を混在させるかの5点です。社内資料に使う場合は、順位ではなく集計条件と決算期を添えた金額で引用することを推奨します。
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