日本は現在、歴史的な円安水準にあり、2026年4月30日には日本政府・日本銀行による大規模な為替介入が実施されました。しかし、その後も円安のトレンドが続き、1ドル=160円目前の水準まで再び戻っています。

こうした状況の中、物価高や原材料費の高騰といった円安のマイナス面が注目されがちです。しかし、同時に円安を背景に業績を伸ばしている企業や業界も存在します。

新規事業のアイデアを考える上で、こうした成長領域を捉えることは重要です。

そこで本記事では、新規事業のヒントとして、円安で儲かる業界・企業の特徴や円安のメリットをわかりやすく解説します。※2026年5月29日時点の情報をもとに執筆しています。

参考:J-CASTニュース「為替介入から1か月足らずで1ドル160円目前

なぜ為替介入後も円安が続くのか

為替介入は短期的な相場の急変動を抑える効果はありますが、円安のトレンドを反転させるほどの影響力はありません。そのため、現在も円安の圧力が強いのは、次のような日本経済の構造的な原因が挙げられます。

円安のトレンドが続く原因の一つは日米の政策金利差です。金利差は、お金をどの通貨で持つかを左右するため、為替に強く影響します。2026年5月29日時点では、日本の政策金利は0.75%、一方で米国は3.50~3.75%と約3%もの開きがあります。この差が意味するのは、「円よりもドルのほうが高利回り」ということです。その結果、投資家や金融機関はより高いリターンを求めて資金がドルへ流れやすくなり、円売り・ドル買いが発生します。

2025年の日本の貿易収支は2兆6,507億円の赤字となりました。このように、日本では貿易赤字が常態化しています。貿易赤字になると輸出で得る外貨よりも、輸入のために支払う外貨の方が多い状態です。不足分は、円を売って外貨を調達する必要があります。この構造が続くことで、円安圧力が高まりやすくなっています。

参考:財務省「令和7年分貿易統計(速報)の概要

積極財政による国債発行の増加も円安要因の一つです。政府支出の拡大に伴い財政悪化の懸念が高まるためです。通貨としての円の魅力が相対的に弱まることで、円安圧力につながります。

これらの要因は同時に作用しており、いずれも短期間で解消できるものではありません。そのため、為替介入によって一時的な変動はあっても、円安のトレンドそのものを大きく変えるのは難しい状況です。

こうした環境を踏まえると、新規事業を考える上でも「円安を追い風に成長する領域」に着目したアイデアは、十分に検討する価値があると言えます。

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円安で儲かる業界・企業の特徴

円安の恩恵を受けるために重要なのは、「外貨をどのように獲得するか」という視点です。

国内取引の場合は円でのやり取りになるため、為替変動の影響を受けません。一方で、海外の顧客に商品やサービスを販売して外貨を獲得した場合は、円安であるほど円換算の金額が増えます。

つまり、円安で業績が伸びるかどうかは、海外の顧客を取り込めているかがポイントです。ここではその前提を踏まえ、円安で儲かる業界・企業の特徴を紹介します。

輸出依存度が高い

輸出依存度が高い業界・企業は、円安の恩恵を受けやすい代表例です。海外の顧客に製品を販売しており、売上の多くを外貨で得る構造になっているからです。

例えば、海外で1万ドルの製品を販売している場合、為替が1ドル=100円なら円換算の売上は100万円になります。一方、1ドル=150円の円安になると、同じ1万ドルでも売上は150万円に増加します。

このように、販売数量が変わらなくても、円安が進むことで円換算の売上・利益も増えるのが輸出依存度の高い企業の特徴です。

代表的な業界・企業

これらの企業は、いずれも円安の追い風を受けて好調を維持しています。実際にトヨタ自動車株式会社の2026年3月期の営業収益は50兆円を超え、過去最高を更新しました。

海外売上比率が高い

売上の軸が海外にある企業ほど、円安の恩恵を受けやすいという特徴があります。つまり、海外売上比率の高い業界・企業がこれに該当します。

その理由は、海外で得た利益が円換算される際に為替の影響を受けるためです。この構造は海外に子会社を持ち、現地で事業を展開している企業にも当てはまります。そのため、グローバル展開が進んでいる企業ほど、円安局面では追い風を受けやすくなります。

代表的な業界・企業

三菱商事株式会社は売上の約半分を海外事業が占めています。その結果、2026年3月期の売上高は18兆9,159億円に達し、好調を維持しています。

インバウンド需要を取り込める

インバウンド需要関連の業界・企業は、円安の恩恵を受けやすい分野の一つです。

円安が進むと、訪日外国人にとって日本での消費は割安となり、同じ価格でも「お得感」が生まれるためです。その結果、旅行中の消費意欲が高まり、宿泊・飲食・買い物などの支出が増えやすくなります。こうした消費の拡大は、インバウンド関連企業の売上を直接押し上げる要因となります。

代表的な業界・企業

株式会社ゲオホールディングスの2026年3月期の売上高は4,812億円に達し、過去最高を更新しました。この成長を後押ししたのは、リユース品の販売を手掛けるセカンドストリート事業です。同事業は、物価高による消費者の節約志向とインバウンド需要の拡大を追い風に、2桁成長を達成しています。

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円安による企業のメリット

新規事業を検討する上で、押さえておきたい円安のメリットは以下のとおりです。

これらはいずれも企業の収益構造に直接影響を与える重要な要素です。どの業界・市場に参入するかによって、円安は追い風にも逆風にもなり得ます。したがって新規事業の検討段階から、こうした為替の影響を意識することが重要です。

歴史的円安を踏まえた新規事業の視点

円安は物価高などのマイナス面が注目されがちですが、事業内容によっては成長を後押しする要因です。

外貨で収益を得る輸出型ビジネスや海外進出企業では、円安によって円換算の売上・利益が押し上げられます。一方、訪日外国人需要を取り込むインバウンド領域では、価格面での割安感が消費を促進します。

このように、円安がビジネスに与える影響は一様ではありません。そのため歴史的な円安が続く今、新規事業を検討する際には、為替の影響も含めて検討することが重要です。

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