5G/6Gでいま稼いでいるのは、基地局メーカーより先に、通信キャリアの連結決算です。2026年3月期、NTTグループの営業収益は14兆4,091億円、ソフトバンクは7兆387億円、KDDIは6兆719億円。政府の成長17分野で「情報通信」は第3分野で、政府資料の主要技術はオール光ネットワーク・海底ケーブル・次世代ワイヤレス(5G/Beyond 5G等)の3本柱です。本記事では実務の切り口として5G/6G・光ネットワーク・衛星通信の3レンズで、キャリアとインフラベンダーの一次数字、Beyond 5G基金、海外ベンダーとのシェア争いまでを分解して解説します。
当コラムで注目する用語
- 成長17分野③:政府の「情報通信」。政府資料の主要技術はオール光ネットワーク・海底ケーブル・次世代ワイヤレス(5G/6G等)。本記事は5G/6G・光ネットワーク・衛星通信の3レンズで解説します。
- RAN:無線アクセス網。基地局の装置・ソフトを指す市場。
- Beyond 5G(6G):2030年代導入を見据えた次世代通信。総務省・NICTの基金対象。
- ARPU:1契約あたりの月間平均収入。料金改定の効果が見える指標。
- 社会インフラ(NEC):通信・公共インフラを含むNECの報告セグメント。
- ネットワークプロダクト:富士通の基地局・光伝送など通信機器。
儲けの層は回線と装置で分かれる
一文で言うなら、情報通信の利益の厚い層はキャリアのモバイルと非通信、装置の層はNEC・富士通と海外RAN大手です。キャリア三社の売上はいずれも兆円規模で、ソフトバンクが7.0兆円と三社比較では最大、NTTグループは持株連結で14.4兆円です。
装置側のNEC連結は3.58兆円、うち社会インフラの外部売上は9,353億円。富士通連結は3.50兆円で、ハードウェアの外部売上は9,333億円です。5G投資のピークアウト後は、キャリアの設備投資が減り、利益は金融・DX・データセンターへ移ります。
提案する側は、「誰のどの層の数字か」を先に固定してください。同じ「5G案件」でも、料金収入の話と基地局装置の話では決裁部署が違います。
| FY2026(2026年3月期) | 売上・収益 | 営業利益(目安) |
|---|---|---|
| NTTグループ | 14兆4,091億円(+5.1%) | 1兆7,062億円 |
| ソフトバンク | 7兆387億円(+7.6%) | 1兆426億円 |
| KDDI | 6兆719億円(+4.1%) | 1兆991億円 |
| NEC連結 | 3兆5,827億円(+4.7%) | 3,599億円 |
| 富士通連結 | 3兆5,030億円(▲1.3%) | 3,483億円 |
成長17分野③:情報通信を3つの切り口で見る
政府の成長17分野で「情報通信」は第3分野です。政府資料が示す主要技術はオール光ネットワーク(APN)・海底ケーブル・次世代ワイヤレス(非地上系ネットワーク、5G/Beyond 5G(6G)等)の3本柱で、本記事ではこれを実務の切り口として5G/6G・光ネットワーク・衛星通信の3レンズに置き換えて解説します。
裾野は基地局、光ファイバー、ルーター・スイッチ、衛星通信機器です。防災分野とも通信インフラで交差します。つまり、同じ「通信」でも、モバイルの基地局、都市間の光、非地上系の衛星では、顧客と許認可が違います。
中堅企業が参入するなら、レンズを一つに落とすことが先です。政策文書の技術区分名を提案書の見出しにそのまま使うと、補助金・標準化・調達のどの話かが相手に伝わります。分野番号③を資料に書いておくと、社内の政策担当とも会話がつながります。
キャリア3社:回線の売上はまだ厚い
NTTグループの2025年度(2026年3月期)は営業収益14兆4,091億円、営業利益1兆7,062億円と増収増益でした。総合ICT(ドコモ等)の外部売上は約6.15兆円、うちモバイル通信サービス収入は約2.44兆円です。
NTTドコモグループ(総合ICT事業セグメント)の営業利益は9,421億円(▲7.7%)で、顧客基盤強化とネットワーク品質改善への投資が利益を押し下げたと説明されています。KDDIは売上6兆719億円、営業利益1兆991億円。5G中心のモバイル設備投資はピークアウトし、設備投資は6,790億円と会社が開示しています。
ソフトバンクは売上7兆387億円、営業利益1兆426億円と過去最高水準で、金融領域の伸びが目立ちます。回線の利益は残りますが、伸びしろは非通信に移っています。料金改定の効果はARPUに出ますが、品質投資のコストは営業利益を削ります。両方を同じ短信で確認してください。
新規事業の「決め方」を、メールで。
市場の見極め方・撤退基準・成功事例のノウハウを毎週お届けします(無料)。 どんな内容か見る →
NECと富士通:装置とSIの分かれ方
NECのFY2026は売上3兆5,827億円、営業利益3,599億円(+40.3%)でした。社会インフラの外部売上は9,353億円、セグメント損益は743億円です。ネッツエスアイをITサービスへ移したため、前年比較は組み替え後で読む必要があります。
富士通は連結3兆5,030億円と減収、営業利益3,483億円は増益です。サービスソリューションが2兆3,148億円と厚く、ハードウェア(システムプロダクト+ネットワーク)の外部は9,333億円です。基地局・光伝送はハードウェアの一角であり、全社の顔はSIとUvanceに移っています。
ベンダー提案では、「通信装置の会社」と一括せず、社会インフラ/ネットワークプロダクトの行を指定してください。海外RAN大手との競合は、この行の中で起きます。
Beyond 5G基金:累計2,022億円は誰の研究開発か
総務省はNICTに恒久基金を置き、Beyond 5G(6G)の社会実装・海外展開を支援しています。予算の積み上げは令和4年度補正662億円、令和5年度当初150億円・補正190億円、令和6年度当初159.4億円・補正357億円、令和7年度当初150億円・補正239億円、令和8年度(2026年度)当初115億円で、累計2,022.4億円とNICTの最新資料(2026年6月17日公表)が示します。
令和6年時点の集計(1,161.4億円)が一部資料で引用され続けていますが、その後の補正・当初予算の積み上げで額は倍近くに増えています。重点はオール光、非地上系、仮想化・統合ネットワークです。
2024年10月には共通基盤技術確立型にNTT、KDDI、富士通、NEC、楽天モバイルが採択されました。2026年6月には、ドコモ・NEC・1Finity・NTT・富士通が総務省の「電波資源拡大」研究(2026〜2029年度)に採択され、複数周波数の最適制御を6Gに向けて進める、と発表しています。基金は「いまのキャリア利益」ではなく、「次の標準と特許」の層です。中堅が触れるなら、採択コンソーシアムの下請け・部材・測定が現実的です。
海外ベンダーと、光・衛星の位置
世界RAN:上位はHuawei・Ericsson・Nokia
Dell’Oro Groupの2025年速報では、世界RAN売上の上位5社はHuawei、Ericsson、Nokia、ZTE、Samsungの順で変わりません。1〜3Q累計では上位5社が市場の約96%を占め、集中度は10年で最高水準に達した、と説明されています。
2025年はHuaweiとNokiaがシェアを伸ばし、EricssonとSamsungは安定、ZTEは低下した、と速報が整理します。日本では経済安保と調達方針により、中国系ベンダーの新規採用は事実上制約されます。国内キャリアの基地局は、エリクソン・ノキアとNEC・富士通(およびOpen RAN系)の組み合わせが主戦場です。世界シェア表をそのまま日本の受注表にコピーすると、窓口を見誤ります。
光と衛星:5Gの隣にある品目
成長17分野はモバイルだけで閉じません。光ネットワークはデータセンター間と都市間の幹線で、AI需要と直結します。NTTはデータセンターのREIT化などを増収要因に挙げています。
衛星通信はStarlink等の非地上系がキャリアの補完・競合になり、周波数と地上局が論点です。基金事業でも非地上系ネットワークが重点技術の一つです。中堅企業が「5G案件」とだけ書くと、光の部材と衛星の地上装置が落ちます。品目を三つ並べ、自社がどれに刺さるかを赤入れしてください。防災分野の通信インフラと交差する部材は、予算の原資が二つある点も確認してください。
新規事業の「決め方」を、メールで。
市場の見極め方・撤退基準・成功事例のノウハウを毎週お届けします(無料)。 どんな内容か見る →
中堅企業が入りやすい場所
入り方は四つです。第一はキャリアの品質改善・基地局増強の周辺工事と部材です。ドコモが投資を前倒しする局面では、施工と保守が動きます。第二はベンダーの社会インフラ/ネットワーク行です。NEC・富士通の一次数字の行に、自社製品を対応させてください。
第三はBeyond 5Gのコンソーシアム下です。採択5社の周辺で、測定器・部品・ソフト検証の発注が出ます。第四は光・衛星の品目です。データセンターと非地上系は、モバイルの次の予算項目になります。
提案資料の冒頭に「キャリア/ベンダー/基金/光衛星」のどれかを一語で書いてください。価格交渉の前に、相手の短信の該当行を一枚印刷して赤入れするのが実務的です。
「5Gを作っている会社が一番儲かる」は誤解
誤解は、基地局メーカーの売上がキャリアを上回ると考えることです。キャリア三社の売上は各6〜14兆円、NEC・富士通の通信装置は連結の一部です。
もう一つの誤解は、6G基金を「来年の受注」と読むことです。基金は2030年代の社会実装向けで、いまの利益はモバイル料金と非通信です。正しく読むなら、キャリアの連結、ベンダーのセグメント、基金累計2,022億円、世界RAN上位5社を同じ表に並べ、どの層の話かを分けます。数字のない5G論は提案に使わないでください。
まず確認すること
次の四半期までに、次の五点を押さえておくと商談が進めやすくなります。
- 相手がキャリアかベンダーか基金コンソーシアムかを固定する
- 引用する数字がNTT持株かドコモか、NEC連結か社会インフラかを注記する
- 5G投資がピークアウトしている会社(KDDIのモバイル設備投資など)では、保守・品質・非通信のどれが伸びるかを一次で確認する
- 海外シェアはDell’Oroの世界RANであり、日本調達とは別表にする
- 成長17分野③の3レンズ(5G/6G・光・衛星)から、自社の一行を選ぶ
情報通信で誰が儲けているかを一文で言うなら、「いまはキャリアの回線と非通信、次の標準は基金と海外RAN大手、装置はセグメントの一角」です。層を分けた表を一枚持って商談に入ってください。
この記事の要点 ①NTT14.4兆/SB7.0兆/KDDI6.1兆 ②NEC社会インフラ9,353億/富士通HW9,333億 ③Beyond 5G基金累計2,022億円 ④世界RAN上位=Huawei・Ericsson・Nokia ⑤品目は5G/6G・光・衛星
5G/6Gの産業は、スローガンではなく決算の行で分かれます。層を分けた資料だけが、次の商談の窓口を通せます。
よくある質問
Q. 5G/6Gでいちばん売上が大きいのは誰ですか?
国内では通信キャリアの連結です。FY2026はNTTグループ14.4兆円、ソフトバンク7.0兆円、KDDI6.1兆円です。
Q. 装置メーカーの位置づけは?
NECの社会インフラ外部売上は9,353億円、富士通のハードウェア外部は9,333億円です。連結全体の一角です。
Q. 政府は6Gにいくら使っていますか?
Beyond 5G基金の予算積み上げは、令和8年度(2026年度)当初予算までの累計で2,022.4億円とNICT資料(2026年6月17日公表)が示します。採択企業の周辺が中堅の仕事場です。
Q. 海外勢との競争はどうなっていますか?
世界RANの上位はHuawei、Ericsson、Nokia、ZTE、Samsungです。日本の調達は経済安保で別の組み合わせになります。
主な出典
NTT「2025年度決算短信〔IFRS〕」(営業収益14,409,121百万円、営業利益1,706,221、総合ICT外部等)/KDDI公式IR業績分析(売上6,071,915百万円、営利1,099,125、設備投資6,790億円)/ソフトバンク2026年3月期決算(売上7,038,680、営利1,042,576)/NEC「2026年3月期決算短信」(売上3,582,733、営利359,913、社会インフラ外部935,302)/富士通「2026年3月期決算短信」(売上3,502,971、営利348,329、HW外部933,329)/総務省・NICT「革新的情報通信技術(Beyond 5G(6G))基金事業」予算資料(2026年6月17日時点の累計2,022.4億円。内訳:R4補正662億円/R5当初150億円・補正190億円/R6当初159.4億円・補正357億円/R7当初150億円・補正239億円/R8=2026年度当初115億円)/NICT・各社Beyond 5G採択発表(2024-10)/NEC「電波資源拡大」採択(2026-06-23)/Dell’Oro Group RAN 2025速報(上位5社)/内閣官房「日本成長戦略」2026(成長17分野③情報通信=オール光ネットワーク/海底ケーブル/次世代ワイヤレス。本記事レンズ:5G/6G・光・衛星)/調査時点:2026年8月12日。
セルウェルは市場調査・マーケティング支援の会社として、国内市場のデータ整備から商品戦略の実装まで一貫して支援しています。検討中のテーマがどこまで固まっているかを短時間で確かめたい方は事業化スコア診断(無料)を、個別のご相談はお問い合わせからお気軽にどうぞ。
※2026年8月時点の情報をもとに作成しています。監修:森英朗。
その企画、いま投資する価値はあるか。
10問・無料3分の「事業化スコア診断」で、調査・事業化に進む前の投資判断を可視化します。







