2025年12月1日、ウエルシアホールディングスは株式交換によりツルハホールディングスの完全子会社となりました(同社株式は前月27日付で上場廃止)。直近本決算を並べると、ツルハHD(2026年2月期・売上高約1兆4,505億円)、参考値として開示が続くウエルシア(同・約1兆2,850億円)、マツキヨココカラ&カンパニー(2026年3月期・売上高約1兆1,174億円)という3つの数字になります。「3強」という言い方は、この1年で実は「2つの経営体」に近づきました。それでも稼ぎ方——化粧品か、調剤か、OTC医薬品か——は3つとも違います。決算短信・統合発表資料・行政統計を一次情報として、再編後の構図を数字で整理します。

2025年12月1日、売上高2兆円級のドラッグストアが1つ増えた

ウエルシアHDとツルハHDの経営統合は、2024年2月28日にイオン・ウエルシアHD・ツルハHDの3社が資本業務提携の協議入りを発表したところから始まりました。当初は2027年末までの最終合意を予定していましたが2年前倒しとなり、2025年4月11日に最終契約と株式交換契約を締結。ツルハHDは2025年9月1日付で1株を5株にする株式分割を行い、同年12月1日、ツルハHDを株式交換完全親会社、ウエルシアHDを完全子会社とする株式交換の効力が発生しました。ウエルシアHD株1株にツルハHD株1.15株(分割前0.23株)を割り当てる比率です。ウエルシアHD株式は2025年11月27日付で上場廃止となっています。また、イオンによるツルハHD株の公開買付けは2026年1月6日に終了し、同月14日付でツルハHDはイオンの連結子会社となりましたが、公開買付けだけでは議決権50.9%には届かず(買付け後の保有比率は50.11%)、その後の市場買付けを経て2026年4月15日にイオンの持株比率が50.9%に達しています。

1兆4,505億円・1兆2,850億円・1兆1,174億円——3つの本決算を並べる

この経営統合により、2026年2月期(2025年3月1日〜2026年2月28日)のツルハHD決算には、ウエルシアHDの業績が2025年12月〜2026年2月の3か月分だけ連結されました。ウエルシアHD自身はもう決算短信を出しませんが、ツルハHDの決算資料内に「参考値」として12か月分の数字が示されています。

会社直近本決算売上高営業利益前期比
ツルハHD(連結・ウエルシア3か月分含む)2026年2月期約1兆4,505億円約630億円比較データなし(決算期変更のため)
ウエルシアHD(参考値・12か月分)2026年2月期約1兆2,850億円約364億円売上+5.3%・利益+15.5%
マツキヨココカラ&カンパニー(連結)2026年3月期約1兆1,174億円約849億円売上+5.3%・利益+3.5%

出典:各社決算短信(2026年4月9日・5月13日発表)。ツルハHDの前期(2025年2月期)は決算期変更に伴う9.5か月の変則決算のため、対前期増減率は記載されていません。ウエルシアHDの参考値はツルハHD決算短信内の記載に基づく当社整理です。

店舗数5,676——2,658店から一晩で3,018店増えた内訳

ツルハHDグループの国内店舗数は、2025年3月1日時点の2,658店から、2026年2月28日時点で5,676店になりました。増加分の内訳は、新規出店117店、閉店90店、そして「子会社化等」による純増2,991店です。この2,991店の大半が、株式交換によって12月1日付でグループに加わったウエルシアHDの店舗網にあたります。つまり店舗が一晩で3,000店近く増えたように見えるのは、出店ラッシュではなく会計上の連結範囲の変更によるものです。ツルハHDはもともと北海道発祥で郊外に強く、ウエルシアHDは関東・東海の都市近郊と調剤に強いという、地理的にも重なりの少ない補完関係にあります。

マツキヨとココカラ、2021年10月から続く「非対称な4年半」

ドラッグストア業界の統合はウエルシア・ツルハが最初ではありません。マツモトキヨシホールディングスは2021年10月1日、株式交換比率1対1.70でココカラファインを完全子会社化し、商号を株式会社マツキヨココカラ&カンパニーに変更しました。統合前日の2021年9月30日時点の店舗数は、マツモトキヨシグループ1,787店、ココカラファイングループ1,512店(合計3,299店)。2026年3月31日時点では、マツモトキヨシグループ事業1,970店(+183店・+10.2%)、ココカラファイングループ事業1,536店(+24店・+1.6%)と、4年半で伸び方が非対称になっています。2026年3月期のセグメント利益も、マツモトキヨシグループ事業が608億1,800万円(前期比+4.9%)と伸びた一方、ココカラファイングループ事業は234億5,600万円(同△1.5%)とわずかに減っています。

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新生堂薬局とユニバーサルドラッグ——「アンドカンパニー」という受け皿

マツキヨココカラ&カンパニーは2025年8月1日、M&Aの受け皿となる中間持株会社「株式会社アンドカンパニー」を新設しました。2031年3月期を最終年度とする経営目標に「連合体構想」を掲げ、単独のオーガニックな成長だけでなく、M&Aで規模を広げる方針です。

新生堂薬局——2025年10月1日、対価115億円で子会社化

アンドカンパニーは2025年10月1日、九州北部で調剤薬局・ドラッグストアを119店展開する新生堂薬局(昭和53年創業、福岡県)の全株式を現金115億400万円で取得しました。同社は第3四半期から新たな報告セグメントとして加わり、2026年3月末時点でアンドカンパニー事業は112店(うち調剤薬局93店)となっています。

ユニバーサルドラッグ——2026年4月1日、対価10億円で子会社化

2026年2月13日の取締役会決議を受け、アンドカンパニーは東京都・埼玉県で19店を展開するユニバーサルドラッグの全株式を、2026年4月1日付で現金10億円で取得しました。マツキヨココカラ&カンパニーの2027年3月期以降の連結対象になります。

調剤16.4%、化粧品12.8%——ツルハが分けて出す数字

ツルハHDグループは物販事業の単一セグメントで開示していますが、品目別の販売実績は分けて公表しています。2026年2月期の構成比は、食品27.1%、雑貨24.0%、調剤16.4%、化粧品12.8%、医薬品(OTC)10.0%、その他9.4%という順です。調剤は単独の品目として医薬品(OTC)と別立てで示されており、金額は237億5,700万円ではなく2,375億7,000万円(前期比の記載は決算期変更のためなし)です。

品目金額構成比
食品約3,936億円27.1%
雑貨約3,479億円24.0%
調剤約2,376億円16.4%
化粧品約1,862億円12.8%
医薬品(OTC)約1,445億円10.0%
その他約1,361億円9.4%

出典:ツルハHD 2026年2月期決算短信「4.その他(1)仕入及び販売の状況」。原数値は百万円単位(医薬品144,457・化粧品186,248・雑貨347,894・食品393,616・その他136,114・調剤237,570)で、億円換算は当社算出です。

マツキヨココカラの「医薬品」という括りが、調剤を隠す

一方、マツキヨココカラ&カンパニーの決算短信では「医薬品」という1つの括りにOTC医薬品と調剤の両方を含めて開示しています。2026年3月期の商品別売上高(管理サポート事業を除く)は、医薬品387億7,000万円(前期比+5.1%)、化粧品381億2,800万円(同+7.9%)、日用品194億1,000万円(同±0.0%)、食品97億9,900万円(同+4.7%)。医薬品と化粧品を合わせた「美と健康」カテゴリーの売上構成比は72.4%(前期比+0.9ポイント)まで伸びています。ツルハHDが調剤とOTCを分けて出すのに対し、マツキヨココカラは合算でしか出しません。どちらが優れているという話ではなく、都市型で化粧品に強い店舗網と、郊外型で調剤併設を進める店舗網とで、開示の粒度そのものが変わるということです。

3社の数字を読むときに混同しやすい点 ①「調剤・ヘルスケア」(業界団体の集計区分)と「医薬品」(マツキヨココカラの品目区分)は同じ言葉に見えて範囲が違う ②ウエルシアHDの数字は「参考値」であり、監査済みの単独決算短信ではない ③ツルハHDの前期比は決算期変更により非公表の年がある

訪日客4,268万人、買物代2兆5,490億円——化粧品はどこで買われたか

日本政府観光局(JNTO)の発表によると、2025年の年間訪日外客数は4,268万3,600人(前年比+15.8%)で、初めて4,000万人を超え過去最高を更新しました。観光庁「インバウンド消費動向調査」2025年暦年(速報、2026年1月21日発表)では、訪日外国人旅行消費額は9兆4,559億円(同+16.4%、過去最高)。費目別では宿泊費36.6%(3兆4,617億円)に次いで買物代が27.0%(2兆5,490億円)を占め、1人当たりの買物代は6万1,014円でした。マツキヨココカラ&カンパニーは2026年3月期の決算短信で「都市部や繁華街、商業施設における人流の増加や、訪日外国人観光客の需要動向を取り込み、化粧品を中心に売上が好調に推移いたしました」と明記しています。業界専門メディアのダイヤモンド・チェーンストアオンライン(2026年6月25日)も、同社の期中について「インバウンド増加により免税売上が伸長した」と報じました。

2025年のインバウンド指標(観光庁・JNTO、速報)
4,268万人 訪日外客数(前年比+15.8%・過去最高)|9兆4,559億円 旅行消費額(同+16.4%・過去最高)|2兆5,490億円 買物代(構成比27.0%)

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2026年11月、免税は「その場で引く」から「後で返す」に変わる

ここで押さえておきたい制度変更があります。令和7年度税制改正により、2026年11月1日から輸出物品販売場(免税店)制度が「リファンド方式」に切り替わります。国税庁によると、免税店はこれまでのように購入時に消費税を免除するのではなく、いったん税込価格で販売し、購入者が購入日から90日以内に出国時の税関確認を受けたことを店舗側が確認したうえで、消費税相当額を返金(リファンド)する仕組みに変わります。一般物品と消耗品の区分は撤廃され、消耗品にあった1日50万円の購入上限もなくなる一方、免税購入した物品はすべて出国まで所持している必要があります。ドラッグストアは訪日客向け免税売上の比重が大きい業態だけに、店頭の会計オペレーションとシステムの両方を、この期日に合わせて変える必要があります。

鶴羽社長が明言した「調剤併設率」という伸ばす余地

ツルハHDの鶴羽順社長は、2026年2月期決算発表の場で「27年2月期は統合のシナジーを早期に実現。スケールメリットを生かした仕入れを統合し、棚割り、販促の統一を推進する。ツルハグループはウエルシアグループに比べ調剤併設率が低いので、こちらも伸ばしていきたい」と述べました(流通ニュース、2026年4月9日)。実際、ツルハHD連結の調剤取扱店舗割合(調剤併設率)は58.5%で、内訳はツルハグループ14.1%・ウエルシアグループ23.0%とグループ間で差があります。ツルハHDは同日発表の中期経営計画(2027年2月期〜2029年2月期)で、この調剤併設率を2029年2月期までに62%へ引き上げる目標を掲げました。なお、前述の「調剤16.4%」はあくまで品目別の売上構成比であり、店舗単位の調剤併設率とは別の指標です。これはウエルシアHDが3か月分しか入っていない数字でもあります。ウエルシアHDが通期で連結される2027年2月期の業績予想は、売上高2兆5,550億円(前期比+76.1%)、営業利益994億円(同+57.7%)。調剤併設率という1つの指標に、統合効果の実際が最初に表れることになります。

処方箋を持たない企業は、この業界のどこに入れるか

調剤薬局を持たない企業にも、この業界には実務的な接点があります。

PBや専売品を卸す

マツキヨココカラ&カンパニーの「matsukiyo」ブランドは誕生10周年を迎え、メーカーとの共創品・専売品開発を続けています。ツルハHD・ウエルシアHD連合も共通PB「からだとくらしに、+1」を2026年春をめどに投入する計画で、いずれもメーカー側にとっては共同開発の相手になります。

多言語対応とデータ基盤を支える

免税のリファンド方式移行は、店頭端末・多言語案内・決済連携のいずれにもシステム投資を必要とします。訪日客対応のUI・翻訳・決済の実務を持つ企業にとっては、この移行期そのものが商機になります。

調剤・物流網に相乗りする

日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)によれば、2024年度(2025年3月26日発表)のドラッグストア業界全体の総売上高は10兆307億円(前年比+9.0%)、総店舗数は2万3,723店(同+682店)。カテゴリー別では調剤・ヘルスケアが3兆3,318億円(構成比33.2%、うち調剤は1兆5,205億円)と最大です。高齢化を背景に調剤需要は業界全体で拡大しており、定温物流・調剤支援システム・医療データ活用の周辺領域には、調剤薬局を自社で持たない企業でも入り込む余地があります。

稼ぎ方の違いは、統合の次に何を分けるか

経済産業省「商業動態統計」の分析(経済解析室、2026年4月14日発表)では、2025年(暦年)のドラッグストア販売額は前年比+5.5%、店舗数は同+3.6%。増加への寄与度が最も大きかったのは食品、次いで調剤医薬品でした。ここに3社を当てはめると輪郭がはっきりします。ツルハHD・ウエルシアHD連合は「規模と調剤」、マツキヨココカラ&カンパニーは「都市部の化粧品とインバウンド」で稼ぐ構造です。統合が一段落した今、次に業界を分けるのは店舗数ではなく、調剤併設率をどこまで上げられるか、そして2026年11月の免税制度変更後もインバウンド需要を売上に変換し続けられるか、という2つの実務指標になります。

よくある質問

Q. ウエルシアホールディングスは今も決算を発表していますか?

単独の決算短信は発表していません。2025年11月27日付で上場廃止となり、同年12月1日付の株式交換によりツルハホールディングスの完全子会社となったためです。ただし、ツルハHDの決算短信の中に「参考値」として12か月分の業績が示されています。

Q. ツルハHDとマツキヨココカラ&カンパニー、どちらが売上規模が大きいですか?

2026年2月期のツルハHD(ウエルシアHDを3か月分含む連結)が約1兆4,505億円、2026年3月期のマツキヨココカラ&カンパニーが約1兆1,174億円で、ツルハHDの方が大きくなっています。ただしウエルシアHDが通期で連結される2027年2月期は、ツルハHDグループの売上高が2兆5,550億円まで拡大する見通しです。

Q. ドラッグストア業界全体で調剤の売上比率はどれくらいですか?

日本チェーンドラッグストア協会の調査(2024年度)では、調剤・ヘルスケア全体で構成比33.2%、うち調剤単独では1兆5,205億円です。個社では、ツルハHDグループが調剤単独で構成比16.4%(2026年2月期)と開示しています。

Q. 免税店の「リファンド方式」とは何ですか?

2026年11月1日から始まる新しい免税制度です。購入時に消費税を免除する現行方式から、いったん税込価格で販売し、出国時に税関確認を受けたことを条件に消費税相当額を返金する方式に変わります。

Q. ドラッグストアと直接取引がない会社にも接点はありますか?

PB・専売品の共同開発、免税制度移行に伴う多言語・決済システムの需要、調剤併設拡大に伴う定温物流や医療データ活用など、調剤薬局を持たない企業でも入り込める領域があります。

主な出典

ツルハホールディングス「2026年2月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」(2026年4月9日)/同「イオン株式会社、株式会社ツルハホールディングス及びウエルシアホールディングス株式会社による資本業務提携に係る最終契約締結に関するお知らせ」(2025年4月11日)/イオン株式会社「株式会社ツルハホールディングスとウエルシアホールディングス株式会社の経営統合及び経営の基本方針と目指す姿の概要に関するお知らせ」(2025年12月1日)/マツキヨココカラ&カンパニー「2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」(2026年5月13日)/同「株式会社マツモトキヨシホールディングスと株式会社ココカラファインとの経営統合に関する経営統合契約の締結のお知らせ」(2021年2月26日)および2021年6月・2022年3月期決算説明資料(店舗数の時系列)/日本チェーンドラッグストア協会「第25回(2024年度)日本のドラッグストア実態調査」(2025年3月26日発表、日本食糧新聞・薬事日報・激流オンライン各報道)/経済産業省「商業動態統計調査」および経済解析室「2025年小売業販売を振り返る」(2026年4月14日)/観光庁「インバウンド消費動向調査2025年暦年(速報)」(2026年1月21日)/日本政府観光局(JNTO)「訪日外客数(2025年12月推計値)」(2026年1月21日)/国税庁「輸出物品販売場制度のリファンド方式への見直し」特設サイト(令和7年度税制改正)/流通ニュース「ツルハHD 決算/2月期売上高1兆4505億8500万円」(2026年4月9日)/ダイヤモンド・チェーンストアオンライン「ドラッグストア決算ランキング2026 『1兆円企業』が続々誕生」(2026年6月25日)/時事通信「ツルハ、ウエルシアと経営統合 新PB、来春投入」(2025年12月1日)/ウエルシアホールディングス「当社株式の上場廃止のお知らせ」(2025年11月26日付、上場廃止日2025年11月27日)/イオン株式会社「(開示事項の経過)株式会社ツルハホールディングスに対する公開買付け後の株式取得の完了に関するお知らせ」(2026年1月7日・4月15日)およびツルハホールディングス同日付開示/ツルハホールディングス「中期経営計画(2027年2月期〜2029年2月期)策定に関するお知らせ」(2026年4月9日)。数値は各社決算短信・行政統計の確報・速報値に基づき、百万円単位の原数値を億円換算した箇所は本文・表内に原数値または換算過程を明記しています。

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※2026年8月時点の情報をもとに作成しています。監修:森英朗。

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