精密機器メーカーのいまの順位は、売上ランキング表だけでは足りません。半導体の後工程と検査・洗浄の需要構造で読む必要があります。2026年3月期、アドバンテストの売上は1兆1,286億円(+44.7%)、ディスコは4,369億円(+11.1%)、SCREENホールディングスは6,057億円(▲3.1%)でした。AIサーバー向けの先端ロジックやHBMが装置需要を押し上げる一方、中国向けは国産化と輸出管理で会社ごとに事情が異なります。本記事では、三社の一次数字、需要が装置に波及する仕組み、中国比率、国内工場拡張までをわかりやすく解説します。

当コラムで注目する用語

  • 後工程:ウェハをチップに切り分け・研磨・実装する工程。ディスコの主戦場。
  • テスタ:完成前の半導体を電気的に検査する装置。アドバンテストの中核。
  • SPE:SCREENの半導体製造装置事業。洗浄・塗布現像などが柱。
  • HBM/HPC:広帯域メモリと高性能計算向けデバイス。AI需要が最初に伸びる分野。
  • 輸出管理:先端装置の輸出に許可が必要な制度。対中案件の前提。
  • 出荷額:ディスコが売上と別に開示する装置・ツールの出荷規模。

売上と工程位置は分けて見る

会社(2026年3月期)売上高営業利益(目安)工程上の位置
アドバンテスト1兆1,286億円(+44.7%)4,991億円テスタ(SoC=システムオンチップ/メモリ)
SCREEN HD6,057億円(▲3.1%)1,225億円SPE(洗浄・塗布現像等)
ディスコ4,369億円(+11.1%)1,850億円後工程(切断・研磨+ツール)

精密機器の成長戦略は、どの工程の装置を売っているかで決まります。

売上規模ではアドバンテストが1兆円超、SCREENが約6,000億円、ディスコが約4,400億円です。利益率や地域構成は別物です。

ディスコの営業利益率は約42%、アドバンテストも高収益製品比率の上昇で営業利益が約4,991億円まで伸びました。SCREENはSPEの売上が依然大きい一方、連結では減収減益でした。

まずは切断・研磨/検査/洗浄・塗布という工程の位置づけを置き、そのうえで地域と規制を重ねる読み方です。部材・サービス提案も、相手会社の工程位置が決まらないと窓口がずれます。

売上だけで順位を決めない

売上の大きい会社を「いちばん強い精密機器」と断定すると、読みがずれます。アドバンテストは規模で首位級ですが、工程は検査です。

ディスコは規模で三社中最小でも、利益率と後工程の消耗品で別の強さがあります。SCREENは連結減収でもSPE計画は拡大を示します。

中国売上の増減を景気だけと読むのも危ういです。国産化と輸出管理が同時に効いています。工程・地域構成・工場投資の三点を並べて見るのが安全です。

AIサーバーの需要が装置に波及する仕組み

生成AIの投資は、データセンターのサーバーから先端ロジックとHBMの生産能力に落ちます。その先で、ウェハ上の微細加工(前工程)と、切断・研磨・検査(後工程・テスト)の装置が動きます。

アドバンテストは短信で、HPCデバイスやAI関連半導体向けのSoC(システムオンチップ)テスタ需要が大幅に拡大したと説明しています。テストシステム事業の売上は1兆194億円(+49.3%)でした。

ディスコは先端ロジックやHBM向けの精密加工装置と消耗ツールが好調で、出荷額4,428億円・売上4,369億円と6期連続の過去最高です。

SCREENは短信で、先端ロジックやメモリー向け投資が堅調な一方、ファウンドリ向け装置売上が減少したと書いています。同じ「半導体装置」でも、どのノードのどの工程かが、四半期の顔を決めます。

営業資料では「AI関連」と一語でまとめず、ロジック/メモリ/後工程のどれに効くかを書いてください。

アドバンテストの検査装置と1.1兆円規模

FY2026の規模と地域

アドバンテストのFY2026(2026年3月期)は、売上1兆1,286億円、営業利益4,991億円、当期利益3,754億円と、いずれも過去最高を更新しました。海外売上比率は97.8%です。

地域別ではアジアが1兆359億円と大半を占め、日本は251億円、米州445億円、欧州231億円です(顧客所在地)。日本の精密機器として見るなら、国内売上は小さく、アジアのAI・メモリ投資が本体です。

SoCテスタの供給能力

会社はSoCテスタの生産能力について、従来目標だった年間7,500台規模を前倒しで達成しました。現在は年間約1万台規模への増強を加速する方針を決算説明資料で示しています。

2028年末までの実現を目指すが、2029年にずれ込む可能性が高いとしています。消耗品のテスト用インタフェースも伸びています。

提案する側は、「国内工場向け」ではなく「アジア顧客のテスタ供給網」として読む必要があります。

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ディスコの後工程とツール

ディスコは装置だけでなく、砥石などの精密加工ツール(消耗品)も稼ぎます。FY2026の売上は4,369億円です。

地域別は中国1,350億円、台湾1,174億円、日本456億円、韓国331億円、その他アジア441億円、米州349億円、欧州268億円です。中国は連結の約30.9%、台湾は約26.9%で、台湾の伸びが目立ちます。

営業利益率約42%は、高付加価値装置と稼働連動のツールが両立していることの表れです。後工程は、前工程の投資が一段落したあとも、実装・パッケージの複雑化で装置とツールが続きやすい領域です。

ランキング表で売上規模が小さく見えても、利益と消耗品のストックで存在感が出ます。

SCREENのSPE主力と連結減収

SCREENホールディングスのFY2026は、売上6,057億円(▲3.1%)、営業利益1,225億円(▲9.7%)でした。半導体製造装置事業(SPE)の外部売上は約4,853億円で、依然として連結の中核です。

短信によると、台湾向けが増えた一方、中国や米国向けが減少しました。海外売上比率は約86%です。グラフィックアーツやディスプレー関連も抱えるため、半導体装置専業ではありません。ただし成長戦略の主戦場はSPEです。

FY2027の上方修正

会社は2026年7月28日、FY2027通期の計画を売上7,430億円・営業利益1,565億円に上方修正しました。2026年5月公表の当初計画は売上7,250億円・営業利益1,500億円でした。

先端投資の取り込みが前提になっています。ランキングでSCREENを見るときは、連結の減収とSPEの売上規模を分けて考えてください。

中国売上の比率と輸出管理

対中は、売上比率と輸出管理の両方で見ます。ディスコの中国売上は1,350億円と依然大きい一方、台湾が急伸して相対的な依存の形が変わっています。

業界報道によると、東京エレクトロン・アドバンテスト・SCREEN・ディスコ・KOKUSAI ELECTRICの日系5社合計の中国売上は、2026年3月期に約1割減りました。前年度割れは今回が初めてだと伝えられています(二次報道。個別開示の合算)。

背景には、中国側の装置国産化と、日米などの輸出管理強化があります。日本は2023年7月に先端半導体製造装置の輸出管理を強化しており、案件ごとに許可要否が論点になります。

中国比率が高い会社ほど、売上が減った理由を需要減と規制・国産置換で切り分ける必要があります。商談では、顧客所在地ベースの売上と、出荷先の許可区分を混同しないことが大切です。

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呉の郷原工場とテスタ増産

こうした需要の伸びを支えるのは、国内の供給能力です。

ディスコの郷原工場

ディスコは広島県呉市郷原町に精密加工ツールの新工場(郷原工場)を建設すると発表しました。第1期は建築費約330億円、2026年2月着工・2028年4月竣工予定です。

既存の呉・桑畑のツール生産を集約し、高潮リスクに備える事業継続マネジメント(BCM)強化も目的に含みます。地元報道では、第1期完成後に最大1,300人規模の雇用可能性が報じられています(会社取材ベースの二次)。

アドバンテストのテスタ増産とSCREENの投資

アドバンテストは前述のとおりSoCテスタの供給能力拡大を短信に明記しています。SCREENも設備投資と研究開発を継続しており、グループ従業員は6,884人へ増えました。

精密機器の成長戦略は、海外需要の取り込みと国内の人・工場の両輪です。

中堅企業が関わりを探す場所

関わりどころは三つあります。

消耗品・部品

ディスコのツール、アドバンテストのインタフェース、SCREEN装置の周辺部材は、装置本体の投資サイクルとずれた需要が残ります。

工場建設・ユーティリティ・保全

呉の新工場やテスタ増産ラインは、建築・クリーン・自動化の受注機会になります。

輸出管理・物流

対中・対アジアの出荷は、許可と納期が商談条件に入ります。成長17分野の「AI・半導体」でも、製造装置・検査装置が政策の対象語として並びます。

提案前に確認すること

提案資料では、「どの会社のどの工程か」「中国案件か台湾・韓国案件か」を先に固定してください。価格交渉の前に、相手の四半期説明資料の地域表を一枚印刷して赤入れするのが実務的です。

次の四半期までに、(1) 提案先がディスコ/アドバンテスト/SCREENのどれか、工程は後工程・テスタ・SPEのどれかを固定する。(2) 引用する数字が連結かセグメントかを注記する。(3) 中国案件なら売上比率と輸出管理の要否を一次で確認する。(4) 国内工場・増産計画(郷原工場、テスタ年産1万台規模など)をサプライ提案の前提に書く。(5) ランキング表は導入に使い、成長戦略の本文は工程と地域の構成で書く。

精密機器メーカーを一文で言うなら、「AI半導体の工程ごとに装置を分け、地域と規制で需要を読み直す産業」です。

読み解きのポイント ①アドバンテスト1.13兆・テスト1.02兆 ②ディスコ4,369億・中国30.9%・台湾26.9% ③SCREEN 6,057億・SPE約4,853億 ④日系5社対中約1割減(報道) ⑤郷原工場330億円・2028年竣工

精密機器の順位は、売上表の一点ではなく、工程と地域の位置づけで決まります。会社名と工程を分けた資料をそろえてこそ、次の商談を具体的に進められます。

よくある質問

Q. 精密機器メーカーの売上順位はどうなっていますか?

FY2026ではアドバンテスト約1.13兆円、SCREEN約6,057億円、ディスコ約4,369億円です。工程が違うため、利益率や地域構成も別物です。

Q. AI需要はどの会社に効きますか?

先端ロジック・HBM投資は、テスタ(アドバンテスト)と後工程(ディスコ)、洗浄・塗布(SCREEN SPE)に広がります。短信の文言で工程を確認してください。

Q. 中国売上は減っていますか?

ディスコは中国1,350億円と依然大きい一方、台湾が伸長。業界報道では日系5社合計の対中が約1割減とされます。個別開示と規制を分けて見てください。

Q. 国内の工場投資はありますか?

ディスコは呉市郷原工場(第1期約330億円・2028年竣工予定)を発表。アドバンテストはSoCテスタの供給能力拡大を短信に記載しています。

主な出典

ディスコ「2026年3月期決算短信」(売上436,889百万円、営業利益184,989、地域別・出荷額442,824)/アドバンテスト「2026年3月期決算短信〔IFRS〕」(売上1,128,610、営業利益499,120、テストシステム1,019,400、地域別、海外比率97.8%、SoC供給能力方針)/アドバンテスト2026年3月期決算説明会Q&A・Note(2026-04-27、SoCテストシステム生産能力を年間1万台規模へ前倒し加速、CY2028末目標・CY2029ずれ込みの可能性)/SCREENホールディングス「2026年3月期決算短信」(売上605,748、営業利益122,522、SPE外部約485,344、海外比率、グループ従業員6,884人)/SCREENホールディングス「業績予想の修正に関するお知らせ」(2026-07-28、FY2027通期を売上7,430億円・営業利益1,565億円へ上方修正)/ディスコ公式ニュース「郷原工場建築決定」(2025-04-18、建築費330億円・着工2026-02・竣工2028-04)/日本経済新聞等(日系装置5社の対中売上約1割減・2026年報道)/経産省・成長戦略「AI・半導体」分野の装置・検査装置記載/PROVE DataLakeの海外市場データ(半導体装置セルの規制骨格)/調査時点:2026年8月12日。

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