日本のSPA大手を売上で並べると、ファーストリテイリングが3兆円超、しまむらが7,000億円、ワークマンが全店売上約2,000億円、と桁がはっきり分かれます。原材料高と円安のあと「値上げは通ったのか」は、客数を落とさず既存店が増えたか、粗利と販管が耐えられたかで見ます。ファストリは国内ユニクロ既存店+8.1%、北米は価格見直しで関税を吸収。しまむらは連結増収のなか台湾が+10.3%。ワークマンは既存店+9.0%、客数+3.9%。順位表のあとに、海外の収益差とECの中身までを一次決算で分解します。

売上順は変わらないが値上げの通り方は会社で違う

会社(決算期)売上(または全店)営業利益値上げ・既存店の手がかり
ファーストリテイリング(2025年8月期)売上収益3兆4,005億円(+9.6%)5,642億円(+12.6%)国内ユニクロ既存店(EC含む)+8.1%
しまむら(2026年2月期)連結売上7,000億円(+5.2%)614億円(+3.8%)PB高価格帯・機能性で一点単価上昇(会社説明)
ワークマン(2026年3月期)チェーン全店2,092億円(+14.3%)296億円(+21.7%)既存店+9.0%、客数+3.9%、客単価も上昇

「アパレルメーカー」と検索すると、縫製工場の序列と、ユニクロのような企画・販売一体のSPAが混ざります。ここでは、決算が公開されている国内SPA大手の直近通期を、売上・営業利益・既存店・海外の4列で並べます。

値上げが通ったかどうかは、値札の改定表ではなく、既存店売上と客数・粗利の動きです。客数が落ちて客単価だけ上がった会社と、客数も単価も上がった会社では、次の仕入れ交渉の強さが違います。

ファストリの国内1兆円と海外1.9兆円

2025年8月期(IFRS)の連結売上収益は3兆4,005億円、営業利益5,642億円、親会社利益4,330億円。4期連続で過去最高です。

国内ユニクロは売上収益1兆260億円(+10.1%)、事業利益1,813億円、営業利益1,844億円。初めて1兆円を超え、既存店(EC含む)は通期+8.1%(上期+9.8%、下期+6.2%)です。

粗利率はほぼ前年並み(▲0.1ポイント)、販管費比率は1.2ポイント改善しました。海外ユニクロは売上1兆9,102億円(+11.6%)、事業利益3,053億円(+10.6%)。売上の柱はすでに海外側です。

ジーユーは売上3,307億円(+3.6%)だが事業利益283億円(▲12.6%)。ヒット不足と人件費・米国出店費で減益です。順位表の1位は「ユニクロ全体」ではなく、「国内+海外+GU+その他」の合算だと先に固定します。

海外ユニクロの地域差

地域別の売上収益(会社開示)は、グレーターチャイナ6,502億円(▲4.0%)、韓国・東南アジア・インド・豪州6,194億円(+14.6%)、北米2,711億円(+24.5%)、欧州3,695億円(+33.6%の増収と短信に明記)です。

事業利益はグレーターチャイナ899億円(▲12.5%)、韓国・東南アジア等1,169億円(+20.5%)。中国大陸は現地通貨ベースで約4%減収・事業利益約10%減。台湾は増収減益(ロイヤリティ費用増を除けば若干の増益、と会社注記)です。

北米・欧州は旗艦店とマーケティングで認知が上がり、ECも伸びた、と説明があります。米国は第4四半期に追加関税の影響が出始めた一方、商品価格の見直しと値引率改善、経費抑制でコスト増を吸収し、事業利益率も改善した、と短信に書かれています。

値上げは「全世界一律」ではなく、北米の価格・値引き設計として通った、と読むのが一次文面に近いです。

しまむらの国内多業態と台湾103億円

2026年2月期の連結売上高は7,000億3,400万円(+5.2%)、営業利益614億8,300万円(+3.8%)、親会社利益444億6,000万円(+6.1%)です。期末店舗は連結2,278店。

しまむら事業は売上5,196億5,800万円(+4.4%)、店舗1,423。アベイル703億、バースデイ813億、シャンブル172億、ディバロ10億。台湾の思夢樂は売上約21億NT$(103億3,200万円、+10.3%)、店舗45です。

会社は、生活必需品の断続的な値上げで節約志向が強いなか、機能性PB(吸水速乾・吸湿発熱)と高価格帯PBで一点単価が上がった、と書いています。

客数の全社一本の既存店%は短信の要約では明示が薄いため、値上げの「通り」は単価上昇の定性と増収で押さえます。客数は催事・周年企画が寄与した、と事業別に読むに留めます。次期連結予想は売上7,291億円、営業利益668億円です。

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ワークマンの既存店と客数

2026年3月期のチェーン全店売上高は2,092億3,400万円(+14.3%)、営業総収入1,608億5,200万円、営業利益296億7,600万円(+21.7%)です。

既存店売上は+9.0%、客数+3.9%。客数が伸びたうえで全店が大きく伸びた、という意味で、値上げ・客単価上昇が客離れを起こしていない型です。

加盟店荒利益率36.9%(+0.7ポイント)、海外仕入利益108億7,600万円(+41.7%)。平均決済レート148.06円、海外直接仕入比率64.4%。円安は仕入コストを押し上げる一方、海外仕入の利益項目としても開示されています。

出店は新規48店など、店舗網の拡大が全店伸長のもう一本の柱です。ファストリの「価格見直し」、しまむらの「一点単価」、ワークマンの「客数+既存店」は、同じ「値上げ」でも指標が違います。

ECの構成比と店舗送客

ファストリの統合報告書2025は、連結売上に占めるグローバルEC構成比を約15%と示しています(売上3兆4,005億円から単純計算すると約5,100億円規模)。

国内ユニクロのECは1,523億円(+11.2%)、EC化率14.8%(+0.1ポイント)。北米・欧州では旗艦店がメディアになり、ECがさらに伸びる循環、と短信が説明します。

しまむらは店舗受取の利用率が高く、EC成長に加えて実店舗への送客とあわせ買いが効いた、と記述。バースデイはECが大幅増、ディバロはグループ統合に合わせてオンラインを開設しました。

ワークマンの決算説明は店舗・加盟店が主軸で、EC比率の単独開示は薄いです。ECシフトが粗利を上げたかは、ファストリでは販管改善と在庫効率の話として、しまむらではオムニチャネルの定性として出ます。全社で「EC化=粗利上昇」とまでは言えません。

在庫と仕入れの開示の違い

ファストリは設備投資1,719億円(前期比+597億円)のうち海外ユニクロ1,200億円、システム他274億円。自動化倉庫などへの投資を、グローバル成長のための積極投資と説明しています。

粗利率がほぼ横ばいで販管が改善した国内ユニクロは、値引き抑制と経費効率のセットです。ワークマンは好調販売を背景に通年・春夏在庫を拡充し、1店舗当たり売価在庫を増やした、と説明資料にあります。

しまむらはASEAN生産の拡大と貿易部仕入れの強化を次期方針に書いています。繊維の国内生産は縮小が長く続いており、仕入れの主戦場は海外縫製です。

日本繊維輸入組合が衣類輸入の国別統計を月次更新していますが、各社の粗利を国別輸入シェアだけで説明するのは飛びすぎです。ここでは「輸入前提のSPA」であることだけを骨格にします。

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値上げは会社と地域で分ける

ファストリ国内ユニクロは、既存店+8.1%と販管改善で「数量と効率」が残っています。北米は価格見直しが関税吸収の手段として明示されています。中国は値上げ以前に、需要と構成の問題で減収減益です。

しまむらは一点単価上昇と増収増益ですが、客数の全社既存店%が短信で一本化されていないため、「客数を維持した値上げ」とまでは断定しません。

ワークマンは既存店・客数ともプラスで、値上げ・ミックス改善が客離れを起こしていない一次証拠があります。したがって、「値上げは通った」は全業界の結論ではなく、会社と地域ごとの結論です。

中小のアパレル・縫製・資材が押さえる点

発注側がファストリなら、中国向けと東南アジア・欧米向けで、納期と単価の交渉材料が違います。しまむらなら、機能性PBと高価格帯PBの増分が、どの縫製拠点・どの素材に載るかを聞きます。

ワークマンなら、海外直接仕入比率64%超と店舗在庫積み増しが、リードタイムと最低発注に効きます。自社が「値上げを通したメーカー」なのか「値上げを受けたサプライヤー」なのかを、先に1行で書いてから商談資料を作ります。

まず確認すること

次の四半期までに、次の五点を押さえてください。

(1) 自社の取引先がファストリ/しまむら/ワークマン/その他SPAのどれかを固定する。

(2) 使う数字が連結売上か、事業別か、チェーン全店かを注記する。

(3) 値上げの評価を、既存店・客数・粗利・販管のどれで見るか決める。

(4) 海外案件は中国減収と東南アジア・欧米増収を分けて書く。

(5) ECは構成比と店舗送客のどちらが開示されているかを確認する。

ランキングの1位を眺めるだけでは、値上げが通った会社と通っていない地域を取り違えます。

読み解きのポイント ①売上:ファストリ3.40兆/しまむら0.70兆/ワークマン全店0.21兆 ②国内ユニクロ既存店+8.1%、初めて1兆円 ③海外は中国▲、SEA・北米・欧州+ ④ワークマン既存店+9.0%・客数+3.9% ⑤ECはファストリ約15%・国内ユニクロ14.8%

SPAの売上順はファストリが突出したままです。値上げが通ったかは、会社ごとの既存店と客数・地域別の利益で分けて読む必要があります。

よくある質問

Q. いちばん売上が大きいのはどこですか?

公開決算ベースではファーストリテイリングです(2025年8月期・売上収益3兆4,005億円)。しまむら・ワークマンとは桁が違います。

Q. 値上げは業界全体で成功しましたか?

いいえ。国内ユニクロやワークマンは既存店が伸びましたが、ユニクロのグレーターチャイナは減収減益です。会社と地域で分かれます。

Q. 海外で伸びているのはどこですか?

ファストリは韓国・東南アジア・インド・豪州、北米、欧州が増収増益。中国大陸は減収です。しまむらは台湾思夢樂が+10.3%です。

Q. ECの比率はどれくらいですか?

ファストリはグローバルECが売上の約15%、国内ユニクロEC化率14.8%。しまむら・ワークマンはEC単独比率の開示が薄いです。

主な出典

ファーストリテイリング 2025年8月期決算短信〔IFRS〕(売上収益3,400,539百万円・営業利益564,265・親会社利益433,009。国内ユニクロ1,026,096/事業利益181,300/既存店+8.1%。海外ユニクロ1,910,200/事業利益305,300。グレーターチャイナ650,232・事業利益89,900。韓国・SEA等619,417・事業利益116,900。北米271,130。ジーユー330,701/事業利益28,300。設備投資171,900。2026/8期末店舗見込み国内UQ794・海外UQ1,765・GU489・GB546・計3,594)/同社決算サマリー・統合報告書2025(グローバルEC構成比約15%、国内UQ EC1,523億円・EC化率14.8%、海外店舗数内訳)/しまむら 2026年2月期決算短信(連結売上700,034・営利61,483・親会社利益44,460。店舗2,278。しまむら事業519,658・アベイル70,352・バースデイ81,394・シャンブル17,254・ディバロ1,042。思夢樂約21億NT$(約103億円)。次期連結予想729,193/66,842)/ワークマン 2026年3月期決算説明資料(全店209,234・営業総収入160,852・営利29,676。既存店+9.0%・客数+3.9%。荒利益率36.9%。海外仕入利益10,876・決済レート148.06円・直接仕入比率64.4%)/日本繊維輸入組合(衣類輸入統計の存在・組合員向け。個別シェアは本文で断定せず)/調査時点:2026年8月11日。

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※2026年8月時点の情報をもとに作成しています。監修:森英朗。

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