2026年3月期の連結売上で並べると、首位はTDKの2兆5,048億円。村田製作所は1兆8,309億円で3位です。一方、営業利益では村田が2,818億円でTDKの2,724億円を逆転する。京セラは売上2兆702億円で2位だが、営業利益は1,181億円。太陽誘電は売上3,553億円・営業利益200億円で、規模は一段小さい。売上ランキングを「電子部品の強さ」と読むと誤る。TDKの過半はエナジー応用(二次電池など)、京セラは電子部品以外を含む多角化企業です。コンデンサを本業の中核に置く村田と太陽誘電だけを並べると、スマホ向けの値下がりと、AIサーバー・車載向けの数量増が同じ決算のなかで同時に起きている。この記事では、4社の順位表を先に置き、用途の違いまで順に見ます。

当コラムで注目する用語(先にこれだけ)

  • 積層セラミックコンデンサ(MLCC):電子回路のノイズ除去・蓄電に使う小型部品。スマホ1台に数百〜千個超、サーバーや車載はさらに多い。
  • エナジー応用製品:TDKの最大セグメント。小型二次電池などが中心で、受動部品とは別の事業。
  • 操業度益:工場の稼働率が上がると固定費が薄まり、利益が増える効果。
  • 汎用MLCC:規格が揃いやすく、中国・台湾勢が価格で取りやすい品種。
  • 高信頼MLCC:車載・産業・サーバー向け。温度・寿命・供給継続の要求が厳しく、価格競争が及びにくい。

2026年3月期の売上と営業利益(4社)

連結売上と営業利益を並べると、順番が一致しません。京セラの「売上2位」は電子部品単体の順位でもありません。

会社連結売上営業利益ひとこと
TDK2兆5,048億円(+13.6%)2,724億円(+21.5%)過半はエナジー応用
京セラ2兆702億円(+2.8%)1,181億円電子部品以外を含む多角化
村田製作所1兆8,309億円(+5.0%)2,818億円(+0.8%)利益額は4社中最大
太陽誘電3,553億円(+4.1%)200億円(+91.2%)コンデンサが売上の7割超

売上高営業利益率を短信の数字から単純計算すると、村田は約15%、TDKは約11%、京セラと太陽誘電は約6%前後です。京セラの電子部品セグメント売上は3,635億円で、太陽誘電の全社3,553億円とほぼ同じ土俵です。中小企業が「どこが強いか」を見るなら、完成品シェア表より、この順番のズレとセグメントの分母を先に見てください。

村田とTDKでは、売っているものが違う

村田のコンデンサは9,364億円(+12.6%)で売上の約半分です。高周波・通信は3,948億円(▲11.0%)と、スマホ向けが落ちました。用途別では通信が6,530億円(▲3.1%)、コンピュータが3,104億円(+28.4%)です。サーバー・データセンターがコンデンサ増の主因だと、会社自身が書いています。

TDKはエナジー応用製品が1兆3,703億円(+16.5%)で全体の54.7%です。受動部品は5,932億円(構成比23.7%、+6.0%)で、村田のコンデンサ単体9,364億円より小さい。TDKのコンデンサだけなら2,575億円。受動部品のセグメント利益は418億円(売上比7.1%)、エナジー応用は2,467億円(同18.0%)。ICTと産業機器は堅調、自動車のBEV需要は低迷が続いた、と短信は分けて書く。海外売上比率は92.7%。2027年3月期予想は売上2兆5,800億円、営業利益2,950億円。同じ「電子部品メーカー」ラベルでも、村田はコンデンサ会社、TDKは電池とHDDヘッドを抱える複合体です。

京セラは多角化、太陽誘電はMLCC特化

京セラの売上2兆702億円は電子部品単体の数字ではない。短信のセグメントはコアコンポーネント6,534億円(半導体関連部品3,794億円)、電子部品3,635億円(事業利益73億円・利益率2.0%)、ソリューション1兆709億円。電子部品の増収はKAVXグループの車載・情報通信向けコンデンサが円高減収を上回ったためで、シリコンダイオード・パワー半導体事業譲渡の一時損失約15億円を含んでも事業利益は黒字化した。ソリューションは2026年1月のサザンカールソン社譲渡で減収約270億円・譲渡益約170億円。2026年4月30日時点の翌期連結予想は1兆9,400億円(▲6.3%、機械工具の通年減が主因)だったが、7月30日発表の第1四半期決算でAI・半導体関連需要の拡大と円安進行を理由に2兆800億円(+0.5%)・営業利益1,600億円(+35.4%)へ上方修正済みだ。営業利益1,181億円(2026年3月期実績)の回復幅は大きいが、村田型の「コンデンサ利益率」と比較する対象ではない。太陽誘電はコンデンサ2,518億円(+8.5%)が売上の7割超。インダクタ643億円(+4.5%)、複合デバイスは148億円(▲35.6%)で回路モジュールの譲渡・撤退が完了した影響が出た。通信用デバイスは中国系ハイエンドスマホ向けが減り、構造改革が続いている。規模は村田の約5分の1だが、「何で稼いでいるか」は村田に近いです。

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スマホが減り、サーバーが増える(同じMLCCでも用途が違う)

4社に共通する構図は、スマホの台数停滞と単価下落が部品を削り、AIサーバーと周辺機器の搭載点数増がそれを埋める、という入れ替えだ。村田は高周波モジュールと樹脂多層基板がスマホ向けで減り、積層セラミックコンデンサがサーバー向けを中心に増えた。太陽誘電もAIサーバーと自動車向けコンデンサが増収の主因で、営業利益は91.2%増の200億円。値下がりペースは前期・期初想定より緩やかだった、と説明会で述べている。TDKはニアラインHDD用磁気ヘッドとAIデータセンター関連が次期見通しの根拠だ。磁気応用製品は2,629億円(+17.6%)、センサ応用は2,246億円(+18.6%)で、受動部品以外もICT回復の受け皿になっている。スマホ向け汎用MLCCだけを見ると市場は停滞に見える。サーバー向けの高容量・高信頼品を見ると、同じ部品名でも別の需要の区分に入っている。

車載はEV減速でもADASが残る

村田は自動車市場について、xEVの成長率鈍化はあるがAD/ADASの進展で堅調、と書く。TDKはBEV需要の低迷が継続し、車載向けの一部が期初を下回ったと明記する。太陽誘電は自動車向けコンデンサが増収要因に入る。矛盾ではない。パワートレインの電動化(電池・インバータ周りの点数)と、安全運転支援の電子化(カメラ・レーダー・ECU周りの点数)は別の需要だ。EV販売が想定を外しても、ADAS搭載率の上昇は部品点数を残す。中小が「車載電子部品」と一括りにすると、EV減速ニュースで仕事が消えたように見える。実際には、どのECU・どのセンサの周辺かを切らなければ、需要の残りが見えません。

汎用MLCCと高信頼MLCCでは競争の場が違う

汎用MLCC——スマホや家電の標準品種——は台湾・中国勢(国巨、華新科技など)が価格で取りやすい。韓国サムスン電機(SEMCO)は2025暦年の連結売上11兆3,145億ウォン・営業利益9,133億ウォンで、うちComponent(MLCC中核)が5兆1,985億ウォン。会社はAIサーバー・車載向け高級品の供給増を説明する。村田が業界紙で世界シェア約4割とされるのは会社自身の確定値ではなく、車載・産業・サーバー向けの高信頼品と供給継続を含めた推計である。全品種の個数シェアではない。日本の3月期と韓国の暦年を足してシェア表を作らない。太陽誘電も同一製品の値下がりは続いているが、想定より緩やかだったと説明する。価格競争が「及ぶ/及ばない」の境界は国籍ではなく、規格・寿命試験・長期供給契約・不良時の責任範囲だ。中小が中国サプライヤと競合するなら、汎用の単価勝負に入っている合図である。車載・産機・医療・サーバーの認証とトレーサビリティが残っているなら、まだ別の土俵にいます。

為替は採算を動かすが、値下げを隠すこともある

2026年3月期は「円安で電子部品が潤った年」ではない。村田の対米ドル平均は150.78円で、前期152.57円より1円79銭の円高。太陽誘電は149.99円(前期152.61円)で、為替が売上を41億円、営業利益を40億円押し下げた。アジア通貨高によるコスト増も重なった。円安局面では輸出採算が良く見え、値下げと為替益が相殺されて実態が隠れる。今期は逆に、円高方向でもサーバー数量と操業度益で利益を出した会社と、出せなかった会社が分かれた。村田は2026年4月30日時点で1ドル150円想定・売上1兆9,600億円・営業利益3,800億円(+34.8%)、データセンター関連3,250億円(+84%)という、数量増を主因とする見通しを示していた。だが7月31日発表の第1四半期決算で、下期の為替前提を1ドル155円(円安方向)に見直したうえで売上2兆1,100億円・営業利益4,300億円(前期比約+53%)、データセンター関連3,706億円(約2倍)へ上方修正した。コンデンサ生産能力への追加投資約800億円は据え置き。数量増に加え、円安方向への前提修正も上振れに寄与しており、「為替前提固定・数量増のみ」という説明は2026年8月時点では実態と乖離している。

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見るべきは完成品シェアではなく品種と用途

完成スマホや完成車のシェア表から「電子部品の仕事量」を推すと外す。1台あたりの搭載点数が用途で倍以上違うからだ。サーバー1台のMLCC点数はスマホを大きく上回り、車載は温度と寿命の規格が民生と別物になる。村田のコンピュータ用途+28.4%と通信▲3.1%は、同じ会社の同じ部品カテゴリでも用途が入れ替わった証拠だ。中小が大手の下請け・材料・装置・検査で食うなら、相手の連結売上順位より、相手のどの工場がどの用途向けを増やしているかを見る。TDKならエナジーと磁気ヘッド、村田ならサーバ向けコンデンサ、太陽誘電ならコンデンサ7割、京セラなら電子デバイス以外の事業が数字を動かしていないか——ここを切らないランキング表は営業資料になりません。

自社品の用途を1枚に整理する

まず、自社の主力品を「スマホ汎用/サーバー高信頼/車載ADAS/車載パワートレイン/産機・その他」の5つの用途に振り分ける。売上構成比が分からなければ、直近2四半期の受注先用途ヒアリングで概算する。汎用が過半なら、値下げと中国・台湾勢の納期競争が主戦場だと認める。サーバーと車載高信頼が3割を超えるなら、認証・長期供給・不良解析の方が単価より先に効く。見積もり依頼の宛先は連結IRの表紙ではなく、村田ならコンデンサ、TDKなら受動またはエナジー、京セラならKAVX/電子部品、SEMCOならComponentの担当部署にする。成長戦略17分野の「AI・半導体」は先端・次世代半導体とその製造装置・部素材が本体で、コンデンサのような汎用電子部品は裾野である。補助金申請の文言に自社を無理に当てはめない。TDK型(電池・ヘッド)や京セラ型(多角化)の取引先が多いなら、「電子部品市況」ニュースを自社の業績指標にそのまま結びつけない。用途表は1枚でよい。更新は四半期ごと。

まず決める一点

今日中に、自社トップ3品目の「今期いちばん効いている用途」を担当者に一言で書かせる。スマホか、サーバーか、車載か、分からないか。分からないなら、それが最初の穴です。分かっているなら、その用途の需要が増えている会社(村田のコンピュータ、太陽誘電のAIサーバーコンデンサ、TDKのエナジー/HDDヘッド)と減っている会社(村田の高周波・通信、太陽誘電の複合デバイス)のどちらに自社が近いかを、来週の営業会議の1枚目に置く。売上ランキングの順位表は、そのあとで十分です。

よくある質問

Q. 電子部品メーカーの売上ランキング1位はどこか。

2026年3月期の連結売上ではTDKが2兆5,048億円で4社中最大。ただし過半はエナジー応用製品であり、コンデンサ専業の首位ではない。

Q. 利益がいちばん厚いのはどこか。

営業利益の絶対額は村田製作所が2,818億円でTDKを上回る。短信数字からの単純計算で営業利益率も村田が約15%と高い。

Q. スマホ不況なのに電子部品が伸びる理由は。

スマホ向けは単価下落で減る一方、AIサーバーやADAS車載は1台あたりの部品点数が増える。同じMLCCでも用途が違う。

Q. 中国メーカーに全部取られるのか。

汎用・民生の標準品種は価格競争が強い。車載・産業・サーバーの高信頼品は試験・供給責任が壁になり、及ぶ範囲が限られる。

Q. 中小はまず何を見るべきか。

完成品シェア表ではなく、自社品がスマホ汎用・サーバー・車載のどのバケツに入っているか。用途が分からないことが最大のリスク。

主な出典

出典(調査時点:2026年8月)

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※2026年8月時点の情報をもとに作成しています。監修:森英朗。

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