2026年3月期の五大総合商社は、収益(売上に相当)では三菱商事が約18.9兆円で首位、親会社帰属の純利益では伊藤忠商事が9,003億円で首位です。「商社の順位」を一つの表だけ見ると取り違えます。売上規模と稼ぎ方は別の指標だからです。本記事では、五大商社の直近通期を表で並べたうえで、資源・非資源の差と来期予想までを一次決算でわかりやすく解説します。

当コラムで注目する用語

  • 親会社帰属利益:IFRSの「親会社の所有者に帰属する当期利益」。商社比較の標準指標。
  • 収益:IFRSの売上高に相当する開示項目。
  • 資源/非資源:金属・エネルギー等と、食料・小売・金融・デジタル等。
  • 非資源比率:利益のうち非資源が占める割合(各社定義あり)。
  • 累進配当:減配しない方針を明示する配当政策。
  • セグメント利益:事業別の親会社帰属利益。

五大商社の収益と純利益(2026年3月期)

会社(2026年3月期)収益親会社帰属純利益純利益の前期比2027年3月期予想(純利益)
三菱商事18兆9,160億円8,005億円△15.8%1兆1,000億円
伊藤忠商事14兆8,231億円9,003億円+2.3%9,500億円
三井物産13兆9,952億円8,340億円△7.4%9,200億円
丸紅8兆2,658億円5,439億円+8.1%5,800億円
住友商事7兆3,373億円6,003億円+6.8%6,300億円

ここでの「収益」は、各社がIFRSで開示する連結の売上高に相当する項目です。日本基準の「売上高」と名称は違いますが、規模比較の出発点として使います。

純利益は、いずれも親会社の所有者(株主)に帰属する当期利益です。非支配持分を含む「当期利益」合計とは金額が違うので、短信のどの行を見ているかを先に固定します。

税引前利益も会社によって開示の位置が違います。例えば三菱商事の税引前利益は1兆961億円(△21.3%)、住友商事は7,020億円(+0.9%)、三井物産は1兆871億円(△4.2%)です。丸紅と伊藤忠は短信上で営業利益も自主表示しており、丸紅の営業利益は2,567億円(△5.7%)、伊藤忠は7,019億円(+2.6%)です。

収益順位と純利益順位は一致しない

収益の並びは三菱商事→伊藤忠→三井物産→丸紅→住友商事です。一方、純利益の並びは伊藤忠→三井物産→三菱商事→住友商事→丸紅です。

例えば、住友商事は収益では5社中5位ですが、純利益では丸紅を上回り4位です。丸紅は収益では住友商事より約9,000億円大きく、純利益では約560億円小さくなります。

中小企業が商社と組むとき、「売上規模が大きい=自社案件の優先度が高い」とは限りません。相手が今どのセグメントで利益を積んでいるか、の方が商談の温度に効きます。

なぜ順位が食い違うのか

総合商社の利益は、トレーディングの口銭だけではなく、持分法投資や資源権益、金融・不動産、コンビニなどの事業投資の合算です。

収益が大きくても、資源価格の下落や一過性利益の剥落で純利益が減る会社があります。逆に、収益が相対的に小さくても、非資源の積み上げで純利益が増える会社があります。

したがって「五大商社ランキング」と検索して出てくる1位は、収益なのか純利益なのか、時価総額なのかを必ず確認します。軸が違う表を混ぜると、提案資料の前提がずれます。

伊藤忠が純利益9,003億円で首位になった中身

伊藤忠の説明資料では、2025年度実績の連結純利益9,003億円のうち資源が1,333億円、非資源が約7,747億円(その他含む集計)と示され、非資源比率は84%前後です。

短信のセグメントでは、機械1,556億円、金属1,435億円、情報・金融930億円、食料921億円、エネルギー・化学品693億円、住生活608億円、繊維433億円、第8が450億円などと開示されています。

第8にはファミリーマートなどが含まれ、会社説明でも商品力・販促や店舗網の再構成が寄与したと書かれています。生活・流通系の厚みが、純利益首位の背景です。

来期の当社株主帰属純利益予想は9,500億円です。実績でも予想でも、非資源の積み上げを軸にした読み方がしやすい会社です。

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三井物産は金属資源とエネルギーが厚い

三井物産の親会社帰属純利益は8,340億円(△7.4%)です。収益は13兆9,952億円で、前期比△4.6%でした。

セグメントでは、金属資源の親会社帰属利益2,536億円、エネルギー1,642億円、機械・インフラ2,259億円、化学品675億円、生活産業520億円などが開示されています。

金属資源とエネルギーを足すと約4,178億円で、純利益8,340億円の約半分になります。これは会社が定義する「資源比率」そのものではなく、セグメント合算の目安です。それでも、市況が動いたときに利益が振れやすい構造であることは読み取れます。

来期予想は9,200億円です。減益実績のあと増益計画なので、四半期ごとの金属資源・エネルギーの進捗を追う価値があります。

三菱商事は収益18.9兆でも純利益は減益

三菱商事の収益は18兆9,160億円(+1.6%)で5社最大です。一方、親会社帰属純利益は8,005億円(△15.8%)でした。

セグメントの当期純利益では、金属資源2,045億円、地球環境エネルギー1,609億円、S.L.C.910億円、社会インフラ851億円、食品産業833億円、モビリティ576億円、電力ソリューション434億円、マテリアルソリューション263億円などが開示されています。

税引前利益は1兆961億円(△21.3%)と、純利益以上に落ち込みが見えます。減益の理由は短信の注記と説明資料で確認し、本稿では開示数値の並びを優先します。

来期予想は1兆1,000億円です。実績の減益と来期の増益幅が大きいため、「今の順位」と「会社の計画」を分けて書く必要があります。

住友商事6,003億円と丸紅5,439億円の増益

住友商事の親会社帰属純利益は6,003億円(+6.8%)です。収益は7兆3,373億円(+0.6%)で、収益規模では5社中5位です。

セグメントでは、エネルギートランスフォーメーション1,024億円、輸送機・建機889億円、都市総合開発815億円、資源823億円、鉄鋼743億円、自動車632億円、メディア・デジタル512億円などが並びます。資源一本槍ではなく、インフラ・都市・モビリティ側の寄与が見えます。

丸紅は収益8兆2,658億円(+6.1%)、純利益5,439億円(+8.1%)です。セグメント利益では金融・リース・不動産1,620億円、金属1,343億円、食料・アグリ815億円、電力・インフラサービス536億円、エアロスペース・モビリティ478億円が厚いです。

丸紅の営業利益は2,567億円で前期比△5.7%です。純利益が増益でも営業利益が減益なら、一過性の評価益や持分法の影響を短信の注記で確認します。

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2027年3月期予想は5社とも増益

2027年3月期の親会社帰属純利益予想は、三菱商事1兆1,000億円、伊藤忠9,500億円、三井物産9,200億円、住友商事6,300億円、丸紅5,800億円です。

実績で減益だった三菱商事・三井物産も、来期は増益計画です。計画どおりに進むかは資源価格・為替・案件の進捗次第なので、予想を「確定した順位」として使わない方が安全です。

配当や自社株買いの方針も各社で更新されています。伊藤忠は株式分割後の1株配当、住友商事は2026年7月1日付の1株→4株分割を前提にした表示があるため、分割前後を混同しないよう注記を読みます。

丸紅は年間配当107.50円(来期予想115円)、三菱商事は年間110円(来期予想125円)、三井物産は年間115円(来期予想140円)といった開示があります。還元策は別表で追い、本稿の主軸は収益と純利益の順位差に置きます。

中小が商社を選ぶときの5手順

自社が食品・日用品・流通に近いなら、伊藤忠の食料・第8や丸紅の食料・アグリの開示を先に見ます。資源・金属・エネルギーの案件なら、三井物産・三菱商事のセグメント利益の厚みを見ます。

機械・インフラ・都市開発・モビリティなら、住友商事の輸送機・建機や都市総合開発、丸紅のエアロスペース・モビリティなども候補になります。

ベトナムなど海外での販路では、五大商社の現地法人が製造業の調達・販売の両方に関わることが多いです。国ごとに「どの商社が自社業種に強いか」を、IRのセグメントと現地の取引先リストの両方で確認します。

確認の手順

(1) 比較したい指標を「収益」か「親会社帰属純利益」かに固定する。

(2) 相手商社の直近通期で、自社業種に近いセグメント利益を1行抜き出す。

(3) 増益・減益の理由が資源価格か、一過性か、非資源の積み上げかを注記で分ける。

(4) 来期予想は参考値として扱い、四半期ごとの進捗で更新する。

(5) 海外案件は、商社経由と自社現地法人のどちらが主かを先に決める。

提案資料に書くべき数字の例

五大商社の「1位」は、収益なら三菱商事、純利益なら伊藤忠です。同じ「ランキング」でも軸が違えば結論が変わります。

提案資料の冒頭に置くなら、例えば次の3行で足ります。「相手候補は伊藤忠(純利益9,003億円・非資源比率約84%)。比較対象の三菱商事は収益18.9兆円・純利益8,005億円。自社商材は食料/金属/インフラのどれに近いかを先に固定する。」

資源比率が高い会社と非資源比率が高い会社では、市況が動いたときの利益の振れ方が違います。売上規模だけを並べた資料より、セグメント利益を1行添えた資料の方が、商社側の担当も答えやすいです。双日は純利益1,036億円(△6.3%)と規模は一段小さく、来期1,300億円予想です。五大の表とは別に置くと取り違えません。

読み解きのポイント ①収益1位=三菱18.9兆/純利益1位=伊藤忠9,003億 ②三井は金属資源+エネルギーで利益の約半分 ③伊藤忠は非資源比率約84% ④住友6,003億・丸紅5,439億は増益 ⑤来期は5社とも増益予想

総合商社を選ぶときは、売上の大きさだけでなく、純利益の順位とセグメントの中身をセットで見てください。

よくある質問

Q. 総合商社でいちばん売上が大きいのはどこですか?

2026年3月期の連結収益では三菱商事(約18兆9,160億円)です。純利益の首位は伊藤忠商事(9,003億円)です。

Q. なぜ売上と純利益で順位が違いますか?

収益は取扱規模、純利益は資源権益や持分法・事業投資の結果が大きく効くためです。住友商事のように収益順位と純利益順位が入れ替わる例もあります。

Q. 資源に強いのはどの会社ですか?

三井物産は金属資源・エネルギーのセグメント利益が大きく、両社合計で純利益の約半分です。伊藤忠は会社資料上、非資源比率が約84%と高めです。

Q. 来期はどう見ればよいですか?

2027年3月期は5社とも親会社帰属純利益の増益予想です。ただし予想は前提が変わるため、四半期決算で進捗を確認します。

主な出典

伊藤忠商事 2026年3月期決算短信〔IFRS〕(収益14,823,087百万円・当社株主帰属当期純利益900,283百万円・営業利益701,888。2027/3期予想9,500億円)/同社「2025年度決算実績・2026年度経営計画」説明資料(連結純利益9,003億円、資源1,333・非資源約7,747、非資源比率84%前後、セグメント利益)/三菱商事 2026年3月期決算短信〔IFRS〕(収益18,915,995百万円・親会社帰属800,460百万円・税引前1,096,094。2027/3期予想1兆1,000億円。セグメント利益)/三井物産 2026年3月期決算短信・有価証券報告書(収益13,995,222百万円・親会社帰属833,971百万円。金属資源・エネルギー等。2027/3期予想9,200億円)/住友商事 2026年3月期決算短信〔IFRS〕(収益7,337,259百万円・親会社帰属600,334百万円・税引前701,998。2027/3期予想6,300億円)/丸紅 2026年3月期決算短信〔IFRS〕(収益約8兆2,658億円・親会社帰属5,439億円・営業利益2,567億円。2027/3期予想5,800億円)/調査時点:2026年8月13日。

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