PoCとは何か?ビジネスに役立つ概念実証をわかりやすく解説

ビジネスの現場では、新しいアイデアや技術を導入しても想定したような反応を得られないことがあります。その結果、実現するために費やしたリソースが無駄になってしまうことも少なくありません。こうしたリソースの無駄を防ぐ手段として活用されているのが「PoC(読み方:ピーオーシー、ポック)」です。
本記事ではPoCの意味やメリット・デメリット、進め方、ポイントをわかりやすく解説します。 

PoCとは何か 

PoCとは、新規事業や新商品の開発などのプロジェクトにおいて、実現可能性を検証するための手法です。Proof of Conceptの略で、日本語では「概念実証」という意味です。具体的には、新たなアイデアや技術を本格的に導入する前に、小規模な範囲で試してみることで、実現可能性を確かめるプロセスを指します。 

もともとは医薬品や航空機の開発などで活用されていました。現在では新規事業や新商品の開発といったビジネスシーンやシステム開発などの幅広い分野で使われるようになっています。 

PoCとPoVとPoBの違い 

PoCと似た言葉にPoVとPoBがあります。 

PoVとは、Proof of Valueの略で、日本語で「価値実証」という意味です。プロジェクトを本当にやる価値があるか、ニーズがあるかを検証することを指します。 
PoBとは、Proof of Businessの略で、日本語で「ビジネス実証」という意味です。プロジェクトの費用対効果や事業性を検証することを指します。 

PoC、PoV、PoBの違いを簡単にまとめると以下のとおりです。 

PoC:実現可能性を検証する手法 
PoV:実施する価値や本当にニーズがあるかを検証する手法 
PoB:プロジェクトの費用対効果や事業性を検証する手法

ビジネスにおけるPoCのメリット 

PoCが様々な分野で活用されるのは、多くのメリットがあるためです。ここでは、ビジネスにおけるPoCの主な3つのメリットを紹介します。 

メリット① 事業のリスクを抑制できる 

PoCを実施すると、大規模な投資に踏み切る前に、事業の実現可能性を客観的に見極めることができます。もし「実現が難しい」と判断された場合でも、早い段階でプロジェクトを中止できるため、無駄なコストや時間の損失を防げます。このように、PoCは事業のリスクを抑制できる点がメリットです。 

メリット② 意思決定に役立つ 

PoCを実施することで、事業の実現可能性に関する定量的・定性的なデータが得られます。これらのデータは、ステークホルダーや経営層にとって、重要な意思決定の判断材料です。つまり、PoCのメリットは円滑な意思決定に役立つことです。 

メリット③ ボトルネックを早期に発見できる 

PoCを実施することで、計画段階では見えなかった課題が明らかになることがあります。例えば、製造工程で技術的な問題が発生したり、既存の設備では対応が難しいと判明したりするケースです。このようにPoCによってボトルネックを早期に発見できれば、改善や方向転換につながります。 

ビジネスにおけるPoCのデメリット 

PoCには多くのメリットがありますが、同時に注意すべきデメリットも存在します。PoCを実施する際は、次の2つのデメリットを把握した上で、慎重に進めることが大切です。 

デメリット① コストがかかる 

PoCの実施には、人件費やサンプルの制作費用などのコストがかかります。小規模な検証であっても、繰り返し行うことで想定以上のコストになることもあります。このような課題を防ぐには、PoCの目的を明確にし、無駄のない適切な予算配分を行うことが大切です。 

デメリット② 検証に時間がかかる 

PoCを実施するには、ある程度の時間が必要です。また、検証中に何度も改善を行うことで、想定より期間が延びてしまうこともあります。このような遅延は、新製品のリリース時期やプロジェクト全体のスケジュールに影響を及ぼす恐れがあります。そのため、PoCを始める前に、適切な期間を設定し、スケジュール管理を徹底することが重要です。 

PoCの進め方 

PoCで効果的な検証を行うには、進め方が大切です。ここでは、PoCを成功へ導くための4つの手順を紹介します。 

ステップ① 目的の明確化 

PoCを実施する目的を明確にします。目的があいまいだと、検証の方法や最終目標がぶれてしまう可能性があるためです。例えば、新商品の開発プロジェクトであれば、「生産コストを損益分岐点以下に抑えられるか」といった目的が考えられます。このようにPoCの目的は、本格稼働の際に求められる状態を想定し、それを達成するための内容にしましょう。 

ステップ② 検証項目と方法の設定 

次に、PoCで検証すべき項目と、その検証方法を具体的に設定します。例えば、「1時間あたりの生産能力」や「製品1個あたりの生産コスト」などが考えられます。加えて、それらの項目をどのような手順やツールで検証するのかも、あらかじめ明確にしておくことが重要です。 

ステップ③ 検証の実施と記録 

設定した内容に基づいてPoCを実施します。このステップでは、計画どおりにプロジェクトが進んでいるかを確認しつつ、検証結果を正確に記録することが大切です。また、実施中にターゲットとなるユーザー層に試してもらい、フィードバックを収集することで、実際のニーズに即した改善につながります。 

ステップ④ 分析と評価 

最後に、得られたデータを分析して評価します。設定した検証項目に対して、どのような結果が得られたのかを整理し、目的が達成されたかどうかを判断します。 

PoCで確認すべきポイント 

PoCを実施する際、特に確認すべきポイントは次の3つです。 

価値検証 

新しいアイデアや技術がユーザーに価値を提供できているかを検証します。具体的には、ユーザーの課題を解決できているか、ニーズに合っているか、どのようなベネフィットがあるかです。 

技術検証 

技術的にそのアイデアを実現できるかを検証することです。設計段階で理論上可能でも、実際の環境下では異なるケースがあるためです。例えば、設備の処理速度や安定性などに問題が出るかもしれません。PoCの実施において、このような技術的な問題がないかを確認することは重要なポイントです。 

事業性検証 

新しいアイデアや技術が事業として成立するには、採算性が重要なポイントです。実際のユーザーからの反応や費用対効果、導入や運用の手間などを考慮して判断します。 

新規事業創出を支えるPoC 

PoCは、新しいアイデアや技術が実現可能かどうか、またビジネスとして成り立つかを判断するのに有効な手法です。実施にはコストや時間がかかりますが、リスクを抑制できるというメリットがあります。 

変化の激しい現代において、競争力を維持・強化するためには、新規事業への取り組みがますます重要になっています。そのような中、PoCはビジネスを成功に導くための重要な手法の一つと言えるでしょう。 

セルウェルでは、新規事業支援サービス「メデテル」を通じて、企業様の新規事業創出をサポートしています。体制構築やアイデアの抽出、PoCの実施、そして市場投入まで、トータルで支援できるのが強みです。新規事業に関してお悩みの経営者様は、ぜひお気軽にご相談ください。