
新規事業や商品開発において、顧客理解を深めることは重要です。その手段として、アンケートやインタビューなどの消費者調査が広く活用されています。しかし、「アンケートでは高評価だったのに売れない」といった課題に直面するケースも少なくありません。こうしたギャップが生まれる原因の一つとして、調査が非日常的な環境で行われている点が挙げられます。
このような課題を解決する手法として注目されているのが、ホームユーステストです。本記事ではホームユーステストとは何か、メリット・デメリット、成功事例をわかりやすく解説します。
ホームユーステストとは
ホームユーステストとは、対象者に商品やサービスを自宅などの日常環境で一定期間使用してもらい、その感想や評価を収集する調査手法です。顧客のリアルな声を収集できる点が特徴です。
ホームユーステストの主な目的は、顧客の実態に即した評価を得ることにあります。商品がどのような場面で使われるのか、どのような点に満足や不満を感じるのか、継続して使われるかどうかなど、体験に基づいた情報を収集することで商品開発や改善のヒントを得られます。
特に重要なポイントは、時間の経過による評価の変化を把握できる点です。初回利用時は高評価でも使い続けるうちに不便さが見えてくるケースや、逆に使い慣れることで満足度が高まるケースがあるためです。こうした変化は、実際の生活環境で一定期間使用してもらうホームユーステストだからこそ捉えられます。
会場調査との違い
顧客に商品やサービスを使用してもらい、感想や評価を得る調査手法にはホームユーステストのほかに会場調査があります。
会場調査とは、対象者を特定の会場に集め、同一条件のもとで商品やサービスを使用・評価してもらう調査手法です。あらかじめ用意された環境で実施されるため、複数の商品を同時に比較できる点や条件を揃えやすい点が特徴です。
ホームユーステストと会場調査の違いを次の表にまとめました。
| 項目 | ホームユーステスト | 会場調査 |
| 実施環境 | 対象者の自宅 | あらかじめ用意した会場 |
| 使用期間 | 数日から数週間 | 数分から数時間 |
| 機密性 | 管理が難しい | 管理しやすい |
| 得られるデータ | 実生活での使用体験・評価 | 条件を揃えた比較評価 |
| 向いている用途 | 使用感の検証 | 試作品の比較 |
このように、会場調査とホームユーステストは、それぞれが得意とする領域が異なります。短時間で比較評価を行いたい場合は会場調査、実際の使用感を把握したい場合はホームユーステストが適しています。
ホームユーステストの基本的な流れ
ホームユーステストは、以下の流れで実施されます。
1. 調査の企画
まずは調査の企画を立案します。具体的には、以下の内容を明確にします。
- 調査の目的
- ターゲット層
- テストする商品
- 調査期間
- 評価方法
この段階の出来次第で、ホームユーステストの精度が大きく変わります。
2. モニター募集
次はモニターの募集です。モニターは、調査の目的やターゲット層に合う対象者を選定します。
3. 調査の説明・商品の送付
モニターが決定したら、調査内容や商品の使用方法、注意事項などを事前に説明します。その後、モニターに商品を送付します。この段階での説明が不十分だと、正確なデータを得られない可能性があるため注意が必要です。
4. 一定期間の使用
モニターには、日常生活の中で一定期間、商品を使用してもらいます。
5. 意見の収集
使用期間終了後、アンケートやインタビューを通じて意見や評価を収集します。
6. 分析・改善
収集したデータを分析し、その結果をもとに商品の改良やマーケティング戦略の見直しにつなげます。
ホームユーステストのメリット

ホームユーステストには、他の調査手法では得られない様々なメリットがあります。特に重要な3つのメリットは次のとおりです。
- 実際の使用環境での評価を把握できる
ホームユーステストでは、自宅などの生活環境の中で商品やサービスを使用してもらうため、実際の利用シーンに即した評価を得られます。使い勝手や生活環境との相性に加え、日常生活の中で使うことで初めて見えてくる課題を把握できる点がメリットです。
- ターゲット層の本音に近い意見を収集できる
ホームユーステストは、ターゲット層の本音を収集できる点が特徴です。自宅などのリラックスした環境で商品を使用してもらうことで、率直な意見を引き出せるためです。また、実際の行動とあわせて評価を確認できるため、「なぜそのように感じたのか」といった背景も把握できます。
- 継続利用による評価の変化を捉えられる
ホームユーステストでは、一定期間にわたって商品を使用してもらうことで、継続使用による評価の変化を把握できます。時間の経過とともに見えてくる使い勝手の良し悪しや使用頻度の変化など、短時間の調査では捉えにくいポイントを把握できる点がメリットです。「最初は好印象だったが次第に使われなくなる理由」や「使い続けることで評価が高まる要因」などを明らかにできます。
ホームユーステストのデメリット・注意点
ホームユーステストには多くのメリットがある一方で、実施にあたってはいくつかの注意点もあります。ここでは、代表的なデメリットを紹介します。
- コストや手間がかかる
ホームユーステストには、「商品の送料」や「モニターへの謝礼」などにコストがかかります。これらに伴う手間もかかるため、事前に十分なリソースを確保しておくことが大切です。
- データのばらつきが生じやすい
ホームユーステストでは、モニターごとに使用環境が異なるため、データにばらつきが出やすい傾向があります。回答内容と実際の行動に差が生じる可能性もあるため、結果の解釈には注意が必要です。
- モニターが離脱するリスクがある
ホームユーステストは一定期間にわたる調査のため、途中でモニターが離脱するリスクがあります。特にモニターへの負担が大きいと離脱の可能性が高まるため、無理のない調査内容にすることが重要です。適切な謝礼を設定することに加え、あらかじめ余裕を持ったモニター数を確保しておくことも有効な対策です。
ホームユーステストの成功事例

出典:トップバリュ
ホームユーステストの成功事例として、イオン株式会社のプライベートブランド「トップバリュ」が挙げられます。トップバリュは、2025年度に売上高が前年度比11%増の1.2兆円となる見込みで、その好調の背景にはホームユーステストを活用した継続的な品質改良があります。
例えば、キムチ鍋つゆの調査では、多くの具材を入れることで味が薄まるという課題を発見しました。そこで、味の濃厚さやうまみを強化し、商品改良後は高い評価を獲得しています。
このように、他の商品においてもホームユーステストを通じた商品改良により、顧客満足度の向上につなげています。
参考:トップバリュ「ホームユース」
参考:物流ニュース「イオン/トップバリュ売上高は前期比11%増の1.2兆円、ベストプライスがけん引」
ホームユーステストで顧客理解を深めよう
ホームユーステストは、実際の生活環境で商品やサービスを使用してもらうことで、顧客の本音や実態を把握できる調査手法です。分析結果をもとに商品の改善やマーケティング施策の見直しを行うことで、顧客満足度の向上や顧客育成が期待できます。顧客理解を深めたい企業にとって、ホームユーステストは有力な選択肢と言えるでしょう。
セルウェルでは、市場調査や消費者調査、ホームユーステストなど各種リサーチを通じて、企業の事業成長を支援しています。新規事業の立ち上げや商品開発における顧客理解でお悩みのご担当者様は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
