
新しいプロジェクトを立ち上げる際、「どのようなチーム編成にするか」は、成功の鍵を握る重要なポイントです。日本企業では以前から、複数の部門から人材を集めたクロスファンクショナルチーム(以降は、「CFT」と言います。)が広く活用されてきました。
しかし、「今さらその意味やメリット・デメリットを人に聞きにくい」と、感じているビジネスパーソンもいらっしゃるでしょう。そこで本記事では、CFTの概要や目的、導入によるメリット・デメリット、成功事例をわかりやすく解説します。
クロスファンクショナルチーム(CFT)とは
CFTとは、複数の部門からメンバーを選抜して構成するチーム編成手法です。日本語では一般的に「部門横断チーム」と訳されます。通常の業務範囲を超えて、組織全体で課題に取り組む必要があるプロジェクトに適しており、特に全社的な改善活動や新規事業の立ち上げなどで力を発揮します。
もともとこの手法は日本の製造業で発展し、生産性や品質の向上を実現してきました。近年では、現場での対話や連携が薄れる中、改めてCFTの価値が見直されています。
CFTを結成する目的
CFTを結成する目的は、多様な視点を持つ人材をチームに加えることで、チーム全体のパフォーマンスを高めることです。他にも以下のような目的が挙げられます。
- 幅広い専門知識による問題の解決
- コミュニケーションの強化による部門間の分断の予防
これらの目的を通じて、組織全体のスピード感や柔軟性の向上が期待できます。
CFTとタスクフォースの違い
CFTに似たチーム編成手法に、タスクフォースがあります。
タスクフォースとは、特定の課題や任務を達成するために、一時的に編成されるチームのことです。具体的には緊急性の高い案件に対応する際、短期間での問題解決を目的に専門知識を持つメンバーを集めることを指します。
つまり、CFTとタスクフォースの主な違いは、緊急性と活動期間です。CFTは中長期的な課題解決や改善活動に採用されるのに対し、タスクフォースは短期集中型のチームでよく用いられます。
クロスファンクショナルチームのメリット

CFTには、部門内のチーム編成では得られない様々なメリットがあります。ここでは、CFTの主な4つのメリットを紹介します。
メリット① 組織の活性化につながる
CFTは、普段あまり接点のないメンバー同士が協働するため、社内コミュニケーションの増加に貢献します。部門の垣根を越えて協力し合うことで、社員同士の相互理解が深まり、組織全体に一体感が生まれやすくなります。結果として、組織全体の活性化につながる点がCFTのメリットです。
メリット② 新たなアイデアが生まれやすい
異なる背景や専門性を持つメンバーが集まるため、様々な視点からの意見交換が活発になります。部門内のチームでは出てこなかった発想や切り口が登場するため、新たなアイデアが生まれやすい点がメリットです。このメリットにより、イノベーションの創出や組織の競争力の強化も期待できます。
メリット③ 全体最適な解決方法を得やすい
部門内のチーム編成では、部門単位での最適化に陥りやすいという課題があります。一方、CFTでは複数の部門のメンバーが参加することで、全体最適な解決方法を得やすいのがメリットです。例えば、部門間の作業で発生しやすいミスや非効率な業務の改善などです。このような全体最適された解決方法は、業務効率化や生産性の向上にもつながります。
メリット④ 外部からの意見を取り入れやすい
CFTは、社外パートナーや外部専門家をチームに加えることもできます。外部メンバーの視点を取り入れることで、社内だけでは気づきにくい視点や課題が議論に反映され、より実践的で効果的なアイデアが生まれやすくなります。
また、マーケティング部門が参加することで、顧客の声や市場のニーズを反映できるのもメリットです。これにより、顧客視点を取り入れた商品やサービスが開発しやすくなります。
クロスファンクショナルチームのデメリット

CFTは多くのメリットがある一方で、うまく機能しないケースも少なくありません。「CFTを導入したのに成果が出ない」や「逆に混乱が生じた」といった失敗を避けるためには、次の3つのデメリットに注意が必要です。
デメリット① チーム編成のバランスが成果を左右する
CFTの成果は、誰をチームに選ぶかによって大きく異なります。部署間の利害を考慮しないメンバーや、経験やスキルに偏りがあると、チームの連携がうまく取れなくなるためです。このようなデメリットを回避するには、バランスの取れた人選に加えて、適切な役割分担が不可欠です。
デメリット② リーダーの負担が大きい
CFTでは、リーダーにかかる負担が大きくなる傾向があります。各部門の異なる意見や立場を理解しながら、まとめる役割を求められるためです。特にメンバーの役職や経験、スキルに差がある場合には、意見の衝突や温度差が生じやすくなり、リーダーの負担が大きくなります。このことから、CFTを成功させるには、適任のリーダーを選ぶことが重要なポイントです。
デメリット③ モチベーションを維持しにくい
CFTでは、メンバーが本来の業務と並行してプロジェクトに関わるため、モチベーションが下がりやすくなります。忙しい日々の業務の合間にプロジェクトを進めるのは、大きな負担やストレスにつながる場合があるからです。こうしたモチベーションの低下を防ぐには、適切な目標設定や評価制度を整備することが重要です。
クロスファンクショナルチーム導入のコツ
クロスファンクショナルチームを成功に導くために、次のコツを押さえておきましょう。
- 目的とゴールを明確にする
- リーダーは調整力を重視して選ぶ
- メンバー構成はバランスを意識する
- コミュニケーションツールを導入してメンバー同士の交流を促す
- 評価制度を整備する
これらを実践することで、CFTの効果を高められます。
クロスファンクショナルチームの事例
クロスファンクショナルチームの事例として、株式会社りそなホールディングスと日産自動車株式会社の取り組みを紹介します。
事例① 株式会社りそなホールディングス
株式会社りそなホールディングスは、顧客課題や社会課題に対応する新規ビジネス創出を目的として、2020年4月にCFTを結成しました。多様化するニーズの中、従来の組織構造では対応が難しいと判断したためです。
同社のCFTは、「既存ビジネスの強化」と「新規事業の創出」という2つを軸に活動しています。さらに、同社はCFTの拠点として「Resona Garage」を開設し、柔軟で斬新なアイデアの創出を支援しています。
参考:株式会社りそなホールディングス「オープン・イノベーション共創拠点「Resona Garage」の開設について」
事例② 日産自動車株式会社
日産自動車株式会社は、1990年代に深刻な業績不振に陥っていました。そこで業績回復を目的にCFTを結成。社内で10名のメンバーを選出し、3カ月間で社内の抜本的な改革を実施しました。その結果、コスト削減や新商品の開発に成功し、V字回復を実現しました。同社のこの取り組みは、CFTの代表的な成功事例の一つです。
CFTで課題解決力を高めよう
CFTは、全体最適な解決方法や新しいアイデアの創出に有効なチーム編成手法です。複数の部門からメンバーを集めることで、様々な視点や発想が生まれやすくなります。ただし、メンバーやリーダーの選び方を誤ると、期待した成果が得られない場合もあります。
そのため、CFTの結成や運営に不安を感じているご担当者様もいらっしゃるでしょう。
セルウェルでは、そうしたご不安にお応えするため、問題解決に特化したコンサルティングサービスを提供しています。新規事業のアイデア出しやその他の課題についても、どうぞお気軽にご相談ください。

