
新たな接客手法として注目されているのが「アバター接客」です。株式会社ローソンが導入を進めており、今後、接客の新たな選択肢として定着する可能性があります。本記事ではアバター接客とは何か、企業が導入するメリット・デメリット、株式会社ローソンの事例をわかりやすく解説します。
アバター接客とは?
アバター接客とは、モニターやスマートフォンの画面に映し出されたキャラクター(アバター)を通じて行う接客のことです。アバターは、遠隔地にいるスタッフが操作する場合もあれば、AIによって自動的に対応することもあります。リアルタイムでやり取りができるため、まるでその場にスタッフがいるかのような接客体験を提供できるのが魅力です。
この仕組みは、インターネットやAI(人工知能)、CG(コンピューターグラフィックス)といったデジタル技術によって実現されています。
オンライン接客との違い
遠隔地からの接客と聞いて、「オンライン接客と何が違うの?」と思う方もいるかもしれません。両者の大きな違いは、アバターを使用しているかどうかです。
オンライン接客は、主にテキストチャットやビデオ通話を通じて顧客とやり取りを行う接客手法です。ただし、テキストチャットは身振り手振りといった非言語的な情報を伝えられません。ビデオ通話ではスタッフの顔や背景が映るため、カメラ映りを気にしたり、対応に心理的ハードルを感じたりするケースもあります。
一方、アバター接客では、スタッフの顔や姿が画面に映ることはなく、代わりにキャラクター(アバター)が対応します。アバターは操作によって表情や動作を加えることができ、身振り手振りを含めた非言語コミュニケーションも可能です。
このように、アバター接客はコミュニケーションの質を保ちながら、スタッフ側の心理的負担を軽減できるという点で、従来のオンライン接客とは異なる価値を提供できます。
アバター接客が注目される背景
アバター接客が注目される主な背景は、少子高齢化・人口減少による人手不足です。特に、小売りや飲食、観光業などでは人手不足が深刻化しており、限られた人的リソースで効率よく接客する手段が求められています。アバター接客であれば、一人のスタッフが複数の店舗で接客できることから、人手不足の解消につながると期待されています。
また、アバターは遠隔地から操作できるため、障がいのある方でも自宅から働くことが可能です。そのため、今まで活躍の場が限られていた人材の活用や、テレワーク希望者の雇用にもつながります。
このように、人材確保の新たな手段としての可能性や、多様な働き方に対応できる柔軟性によってアバター接客は注目されています。
企業がアバター接客を導入するメリット

アバター接客を導入することで、企業には次の4つのメリットがあります。
メリット① 店舗の省人化
アバター接客は、一人のスタッフで複数の店舗の接客が可能です。そのため、導入することで店舗運営に必要な人員を減らせます。これにより、人手不足の解消や人件費の削減が期待できます。
メリット② 対応できる時間の拡大
アバター接客を導入すると、対応できる時間を拡大しやすくなります。リモートワークが可能なため、短時間勤務に対応しやすいためです。また、AIによる自動応答機能を組み合わせることで、24時間体制の接客対応も実現できます。これにより、サービスの利便性と顧客満足度の向上が期待できます。
メリット③ 多様な人材の雇用が可能
アバター接客の導入により、店舗勤務が難しかった人材も雇用できるようになります。例えば、障がいのある方、育児や介護などで在宅勤務を希望する方、地方や海外在住者などです。
このように、多様な人材を活用できるのは、企業にとって人材確保の選択肢を広げるだけでなく、ダイバーシティやインクルージョンの推進にもつながります。
なお、ダイバーシティやインクルージョンの詳しい内容については、「ダイバーシティとは?ビジネスで活用するメリットや成功事例を紹介」をご覧ください。
メリット④ 新たな接客体験の提供
アバター接客は、従来にはない新しい接客体験を提供できる手法として注目されています。例えば、子ども向けの商品を扱う店舗では、アニメ調のアバターを用いることで、まるでエンターテインメントのような楽しい接客体験を提供することが可能です。また、訪日外国人観光客に対しては、AIを用いて多言語対応を行うことで、顧客一人ひとりに合わせたコミュニケーションを実現できます。
さらに、アバターのデザインや演出次第で、企業の世界観やブランドストーリーをより効果的に伝えるのにも役立つでしょう。このように、人間では困難な接客体験を提供できるのも、アバター接客のメリットです。
企業がアバター接客を導入するデメリット
アバター接客はメリットばかりではなく、デメリットもあります。導入する際は、これらのデメリットにも配慮する必要があります。
デメリット① 導入時の初期コストの負担
アバター接客の導入には、システム構築や機材の準備といった初期投資が必要不可欠です。例えば、アバターを表示するためのモニターやカメラ、専用ソフトウェアの導入にコストがかかります。さらに、自社独自のキャラクターを使用する場合は、デザインやアニメーションの制作費も発生します。このように、導入にはまとまった費用がかかるため、初期コスト面の負担がデメリットと言えるでしょう。
デメリット② 顧客のアバターやAIへの抵抗感
アバター接客のデメリットは、顧客がアバターやAIによる接客に対して、抵抗を感じる可能性があることです。また、「AIでは正確な説明が受けられないのでは?」という不安や不信感を抱く方もいるかもしれません。そのため、導入の際は顧客の反応にも十分注意する必要があります。
株式会社ローソンの事例

出典:ローソン公式サイト「ローソン×AVITA アバター活用で協業開始!」
株式会社ローソンは、2022年よりAVITA株式会社と新たな働き方の実現を目指して、アバター接客の取り組みを開始しました。2022年11月に初めて店舗に導入し、2024年11月時点で17店舗に展開。さらに、2024年11月から2025年2月にかけて、8店舗での実証実験が行われました。この取り組みでは、障がいのある方をスタッフとして実際に採用しており、多様な人材が働ける新しい雇用のかたちとしても注目されています。
参考:ローソングループ公式note「ハンディキャップがあっても、自分らしく接客したい」
アバター接客が拓く新たなビジネスチャンス
アバター接客は、これまでの対面接客やオンライン接客とは異なり、企業に新たな可能性をもたらします。遠隔地からの接客や24時間対応が可能になることで、サービスの提供範囲が広がり、顧客満足度の向上が期待できます。
また、多様な人材を活用できるため、人材確保に貢献するのも大きなメリットです。さらに、キャラクターを使ったエンターテインメント性の高い接客は、ブランドイメージの向上や他社との差別化にもつながるでしょう。
このように、アバター接客は企業にとって新しいビジネスチャンスを切り拓く手段となる可能性があります。新規事業のアイデアを探しているご担当者様は、一つの選択肢として検討してみてはいかがでしょうか。