
新規事業を立ち上げる上で欠かせない工程が「アイデアの創出」です。事業の成長規模や市場の需要、成功確率などは、どのようなアイデアを生み出せるかによって大きく左右されます。
しかし、質の高いアイデアを出すのは容易ではありません。その課題を解決する手法の一つがアイデアソンです。本記事ではアイデアソンの意味に加えて、ハッカソンやブレストとの違い、効果的な進め方をわかりやすく解説します。
アイデアソンとは
アイデアソンとは、特定のテーマや課題に対して新しいアイデアを生むワークショップ形式のイベントです。1990年代にアメリカのIT企業で広まり、現在では新規事業の開発や社会課題の解決など、様々なアイデアの創出に活用されています。
イベントでは、参加者が複数のグループに分かれてアイデアを出し合います。その案をもとに議論を重ねてブラッシュアップし、プレゼンテーションを通じて共有するのが一般的な流れです。
ハッカソンとブレストとの違い
アイデアソンと似た言葉には、ハッカソンやブレストがあります。2つの言葉との違いについて解説します。
ハッカソンとの違い
ハッカソンとは、短期間でプロトタイプやアプリケーションを開発するイベントです。アイデアソンが「新しいアイデアを生み出すこと」に重点を置くのに対し、ハッカソンは「アイデアを実際の形にすること」に焦点を当てています。両者を連続で実施することで、アイデアの発想からプロトタイプの作成までを一気に進めることもできます。
ブレストとの違い
ブレストとは、ブレインストーミングの略で、次の4つの原則に基づいて自由に意見を出し合うミーティング手法です。
・他人の意見やアイデアを批判しない
・質よりも量を重視する
・誰でも自由に発言できるようにする
・出たアイデアを整理・統合する
ブレインストーミングはアイデアを量産することを目的としているのに対し、アイデアソンは量産したアイデアから質の高いアイデアを創出することを目的としている点に違いがあります。
ブレインストーミングの詳細については、「ブレインストーミングとは?意味や4原則、やり方を徹底解説」の記事をご参照ください。
アイデアソンのメリット

アイデアソンは有用性から企業や教育機関など、様々な団体で活用されています。ここでは、主な3つのメリットについて解説します。
メリット① 革新的なアイデアが生まれやすい
アイデアソンでは、異なる背景や専門性を持つメンバーが意見を交わします。その結果、個人ではなかなか思いつかない斬新な視点や発想を得られることがあります。このように多角的な視点からアイデアを検討することで、革新的なアイデアを創出できるのがアイデアソンのメリットです。
メリット② 社員の育成につながる
アイデアソンは、社員のディスカッション能力や主体性を高めるのに有効です。参加者は互いのアイデアを尊重しながら意見を交換し、ブラッシュアップする必要があるためです。若手社員にとっては、部署や役職の壁を超えた多様なメンバーと議論する貴重な機会となり、様々な考え方やアプローチを学ぶ場にもなります。このように、アイデアソンは社員の成長やチーム全体の能力向上を促す場としても活用できます。
メリット③ 多数の人が参加できる
アイデアソンは、参加者を複数のグループに分けて進める形式が一般的です。そのため、ブレインストーミングと比べて、より多くの人が参加できる点がメリットです。エンジニアやデザイナー、営業、企画などの異なる背景や専門性を持つメンバーが一堂に会することで、より多角的な視点からアイデアを検討できます。
さらに、多くの参加者が集まることで、アイデアの量が増え、質の高いアイデアが生まれる確率も高まります。このように多数の参加者が関わることは、アイデアソンの成果を高めるための重要な要素です。
アイデアソンのデメリット
アイデアソンで成果を上げるには、デメリットを押さえておくことも大切です。ここでは、主な2つのデメリットについて解説します。
デメリット① 1回で成果が出るとは限らない
アイデアソンは、短期間でアイデアを創出することを目的としたイベントです。しかし、1回で具体的な成果を得られるとは限りません。
例えば、アイデアが多すぎて十分に検討できなかったり、進行に不慣れなメンバーが多く思うように議論が進まなかったりすることがあるためです。このような場合は、アイデアソンを複数回に分けて実施することも選択肢の一つです。
デメリット② 方向性がずれやすい
参加者が自由に意見を出せる一方で、テーマや目的の共有が不十分だと、議論の方向性がずれてしまうことがあります。特に、多くの人が参加する大規模なアイデアソンでは、話し合いが脱線しやすく、テーマに沿った議論が難しくなるケースがあります。
この課題を防ぐには、ファシリテーターの存在が不可欠です。
ファシリテーターがテーマやゴールを明確に設定し、議論の進行やアイデアの整理を適切に行うことで、参加者が同じ方向を向いて効率的にアイデアを創出できます。
アイデアソンの進め方

アイデアソンを成功させるには、プロセスを把握しておくことが大切です。ここでは、一般的な進め方について解説します。
手順① テーマを設定する
アイデアソンの進め方は、まず議論するテーマの設定です。テーマを明確にすることで、議論の方向性がぶれるのを防ぎ、より質の高いアイデアを生み出しやすくなります。
具体的には、以下のようなテーマが考えられます。
・新規事業のアイデア創出
・既存サービスの改善策
・社会課題の解決に関する取り組み
また、アイデアソンの開催準備として、事前にファシリテーターを選出しておくことも重要です。
手順② 参加者を募集する
次に、アイデアソンに参加するメンバーを募集します。テーマによっては、予想以上に多くの人から応募が集まる可能性があります。そのような場合に備えて、選定プロセスを明確にしておくことも大切です。
手順③ グループ分けをする
参加者が集まったら、複数のグループに分けます。一般的には、1グループあたり5~6人程度です。グループ編成のポイントは以下のとおりです。
・専門性や経験の異なるメンバーを組み合わせる
・バランスの良いチーム構成を意識する
このようにグループを編成することで、活発な議論が期待できます。
手順④ アイデア出しとディスカッション
グループごとにディスカッションを行い、テーマに沿ったアイデアを出していきます。口頭だけで意見を出し合うのではなく、付箋やホワイトボードを活用して、意見を可視化することがポイントです。
手順⑤ アイデアの選出とブラッシュアップ
出されたアイデアの中から、実現可能性や評価の高いものを選定します。選定方法には、次のような手法があります。
・賛成票の多いアイデアを選ぶ
・アイデアをまとめて整理・統合する
また、似たアイデアを組み合わせてブラッシュアップすることで、より質の高いアイデアを生み出せることもあります。
手順⑥ 各グループの発表
最後に、各グループが選定したアイデアを発表し、全体で共有します。発表の際には、次の点を意識しましょう。
・アイデアの背景や目的を明確に伝える
・実施に向けた具体的な施策案を提示する
さらに、他のグループからのフィードバックを受けることで、アイデアを改善する機会にもなります。
アイデアソンで新規事業のアイデアを創出しよう
アイデアソンは、革新的なアイデアを創出するのに役立つイベントです。新規事業のアイデア出しに悩んでいるご担当者様は、この機会に開催を検討してみてはいかがでしょうか。
また、セルウェルでは新規事業支援サービス「メデテル」を提供しています。アイデア出しや企画の立案など、新規事業に関するお悩みは、お気軽にご相談ください。
