SCAMPER法とは?短時間でアイデア出しができるフレームワーク 

新規事業案や商品開発、業務改善などで「もっと良いアイデアが欲しい」と感じることはありませんか。 

そのようなときに役立つフレームワークがSCAMPER法(スキャンパー法)です。 

本記事では新規事業のアイデアを探している経営者様に向けて、SCAMPER法の概要やメリット、活用ポイントを紹介します。 

Contents

SCAMPER法とは 

SCAMPER法は、「オズボーンのチェックリスト」をもとに、アメリカのボブ・エバール氏が提唱したフレームワークです。あるテーマに対して以下の7つの質問に答えながら、アイデアを創出します。 

  • Substitute:代用できないか 
  • Combine:組み合わせられないか 
  • Adapt:適応できないか 
  • Modify:修正できないか 
  • Put to other uses:他の用途に使えないか 
  • Eliminate:除去できないか 
  • Reverse・Rearrange:逆転・再構成できないか 

※「オズボーンのチェックリスト」はアレックス・F・オズボーンが提唱した、9つの質問を用いてアイデアを生み出す手法です。9つの質問内容については本記事の最後に紹介します。 

SCAMPER法のメリット 

SCAMPER法のメリットは、短時間でアイデアを量産できることです。あるテーマを7つの質問に当てはめることで、効率的に新しい視点からアイデアを検討できるためです。 

例えば、ある企業が新商品のパッケージで悩んでいるとします。会議などで「新しいデザインを考えよう」と言われても、漠然としているため、すぐにアイデアが思い浮かばないかもしれません。それが「他の素材に代えられないか?」や「似たものが他にないか?」などの質問があれば、アイデアが生まれやすくなるでしょう。 

このように、質問に答えることでアイデアを次々と生み出せるのがSCAMPER法です。 

SCAMPER法の7つの質問 

SCAMPER法を実践するには、7つの質問について理解を深める必要があります。そこで、この章では各質問の解説に加えて、質問例も合わせて紹介します。 

Substitute(代用する) 

1つ目の質問は、「Substitute(代用する)」です。既存の商品やサービスの一部を、別の要素に置き換えられるかを考えます。 

●質問例 

  • 代わりに何か使えないか 
  • 代わりとなる材料は何か 
  • プロセスを置き換えられるか 

例えば、飲食店であれば使用しているプラスチック製ストローを紙製に代えるといった具合です。素材を代えることで、環境問題に取り組んでいる企業としてイメージアップが期待できます。他にも、食肉を大豆に置き換えることで生まれた大豆ミートが挙げられます。 

Combine(組み合わせる) 

2つ目の質問は、「Combine(組み合わせる)」です。既存の商品やサービスに、別の商品やサービスを組み合わせることで新しいアイデアを生み出します。 

●質問例 

  • 別の商品やサービスを組み合わせられるか 
  • 別の材料や素材を混ぜ合わせられるか 
  • 目的や方法を組み合わせられるか 

例えば、スーパーマーケットと薬局を組み合わせたのがドラッグストアです。ドラッグストアでは食品と薬を同じ店舗で購入できるようにすることで、消費者の利便性を高めています。他にも、時計に血圧計や健康管理機能を組み合わせたスマートウォッチなどが挙げられます。 

Adapt(適応させる) 

3つ目の質問は、「Adapt(適応させる)」です。別の商品やサービスで使用したアイデアを適用させたり、既存の商品やサービスを新しい環境やニーズに適応させたりできないかを考えます。 

●質問例 

  • 既存のアイデアやプロセスを適用できないか 
  • 他の業界や製品の手法を自社商品・サービスに適応できないか 
  • 過去の成功事例に当てはまるか 

例えば、無人販売所です。無人販売所は、販売員を置かないことでコストや手間を省くアイデアで、農家が野菜や果物を販売する手法としてよく見られます。その無人販売所のアイデアを様々な商材や業種に適応することで、「無人スイーツ販売所」「無人コンビニエンスストア」「無人餃子販売所」などの新たなサービスが生まれています。 

Modify(修正する) 

4つ目の質問は、「Modify(修正する)」です。既存の製品やサービスを修正することで、新たなアイデアを生み出せないかを考えます。 

●質問例 

  • 製品を大きく、もしくは小さくしたらどうなるか 
  • 製品を重く、もしくは軽くしたらどうなるか 
  • 製品の長さを変えたらどうなるか 
  • 機能を強く、もしくは弱くしたらどうなるか 
  • 色やデザインを変更できないか 
  • 音を変更できないか 

例えば、長さを短くすることで、ゆで時間を短縮したパスタです。通常の3分の2の長さにすることで、ゆで時間が短いという付加価値を与えることに成功しています。他にもカレーの色を白にすることで、差別化を図ったホワイトカレーなどが挙げられます。 

Put to other uses(他の用途に使う) 

5つ目の質問は、「Put to other uses(他の用途に使う)」です。製品やサービスを元々の用途以外に利用できないかを考えます。 

●質問例 

  • そのままの状態で他に使い道がないか 
  • 違う業界に用途がないか 
  • ターゲットを変えたらどうなるか 

例えば、海苔を千切りにするために開発された「海苔切りバサミ」です。海苔切りバサミは、必要とするターゲットが限られていました。そのようなとき、あるユーザーからそれを使って紙を切っているという声を聞いたことで、「シュレッダーハサミ」として販売したところ、大ヒットしています。 

Eliminate(除去する) 

6つ目の質問は、「Eliminate(除去する)」です。商品やサービスの何かしらの性能やプロセスを排除することで、新たなアイデアを生み出せないかを考えます。 

●質問例 

  • 機能やサービスを最小限にできないか 
  • プロセスを簡略化できないか 
  • 形状やデザインをシンプルにできないか 
  • 何かを取り除いたり、除去したりできないか 

例えば、「レジなし決済」です。レジなし決済とは、消費者が商品を手に取り、店を出ると自動的にキャッシュレス決済が行われる仕組みです。レジなし決済は、会計というプロセスを除去することで、消費者だけではなく、従業員の手間を削減しています。 

Reverse・Rearrange(逆転・再構成する) 

7つ目の質問は、「Reverse・Rearrange(逆転・再構成する)」です。発想を逆転させたり、構成を変更したりすることで新たなアイデアを生み出せないかを考えます。 

●質問例 

  • プロセスの順番を入れ替えてみる 
  • 逆転の発想で、弱みを強みにする 
  • 裏返してみる 

例えば、逆転の発想でヒットした商品は付箋です。付箋に使われている接着剤は、元々、強力な粘着力を持つものを目指して開発されていました。しかし、粘着力の弱い接着剤ができてしまったのです。そこで、その弱い粘着力を逆に生かし、簡単に貼って剝がせる付箋が作られました。 

SCAMPER法の活用ポイント 

SCAMPER法を活用する際、効果を高めるためにはいくつかのポイントを押さえることが重要です。この章では、SCAMPER法の活用ポイントを紹介します。 

テーマを用意する 

まずは、解決したいテーマを用意します。SCAMPER法は、テーマから想像を膨らませてアイデアを生み出す手法のためです。反対に、何もない状態からアイデアを生み出す必要がある場合には向いていません。 

チェックリストを準備する 

次に、先に紹介した7つの具体的な質問項目を網羅したチェックリストを準備します。チェックリストには、質問に対して回答する欄を作成して、思い浮かんだアイデアをすぐに書き出せるようにするのがおすすめです。 

とにかくアイデアを出す 

テーマとチェックリストが準備できたら、7つの質問をもとに、時間制限を設けてとにかくアイデアを出します。SCAMPER法でアイデアを出す際のポイントは、自由な発想で多くのアイデアを生み出すことです。奇抜なアイデアでも、何かのヒントになることがあるためです。書き出しておきましょう。 

ディスカッションをする 

アイデアを共有することで、新たなアイデアが生まれることもあります。そのため、チーム全体でSCAMPER法を実施する際は、最後にディスカッションの時間も確保しましょう。

オズボーンのチェックリスト 

この章では、SCAMPER法よりも多くの視点からアイデアを検討したい方に向けて、「オズボーンのチェックリスト」の質問項目と質問内容を簡単に紹介します。 

 質問項目 質問内容 
Put to other uses(他の用途に使う) 他の用途に使えないか 
Adapt(適応させる) 適応させられないか 
Modify(修正する) 修正できないか 
Magnify(拡大する) 機能やサイズを拡大できるか 
Minify(縮小する) 何か縮小できるか 
Substitute(代用する) 代用できないか 
Rearrange(置換する) 置き換えることは可能か 
Reverse(逆転する) 逆転の発想をするとどうなるか 
Combine(結合する) 組み合わせたらどうなるか 

このように、SCAMPER法と「オズボーンのチェックリスト」の大きな違いは、質問項目の数です。 

SCAMPER法は質問項目の数が少ないので短時間でアイデアを出せる一方、時間をかけてより多くのアイデアを出したい時は、「オズボーンのチェックリスト」のほうが向いている場合もあります。 

状況に応じて、2つのフレームワークを使い分けましょう。 

新規事業のアイデア出しにSCAMPER法を活用しよう 

SCAMPER法は、7つの質問を通じてアイデアを引き出すためのフレームワークです。短時間で多くのアイデアを生み出せるのがメリットです。もし新規事業のアイデアに悩んでいるのであれば、SCAMPER法を試してみましょう。自社の商品やサービスをテーマにアイデアを検討することで、これまでにはなかったアイデアが生まれるかもしれません。