
Bt新規事業の立ち上げは、多くの企業にとって重要な成長戦略の一つです。しかし、ゼロから事業を立ち上げる場合、次のような不安や課題が伴います。
- 事業化までに時間がかかる
- 事業が成功するか見通しを立てにくい
- 必要な人材やノウハウが不足する
- 市場参入までに競合が先行してしまう
こうした課題を解決する手段として注目されているのは、M&Aを活用した新規事業です。既存企業や事業を取得することで、顧客基盤・技術・人材・ノウハウを一括で獲得でき、短期間で新市場へ参入できます。
本記事では、M&Aを活用した新規事業のメリット・デメリット、成功事例を紹介します。
M&Aによる新規事業とは
M&Aによる新規事業とは、企業買収や事業譲渡により新市場へ参入する手法です。例えば、次のようなケースが該当します。
- IT企業がAI企業を買収し、新サービスを展開する
- 製造業がヘルスケア事業を取得し、サプリメント市場へ参入する
- メーカーがEC企業を買収し、DtoC事業を始める
通常の方法で新規事業を立ち上げる場合には、市場調査や商品開発、人材採用、販路開拓などに多くの時間とコストが必要です。また、事業化までに時間がかかるだけでなく、収益化できる保証もありません。
一方、M&Aを活用すれば、既存企業や事業の顧客基盤・人材・ノウハウを獲得できることから事業の立ち上げに伴う負担を軽減できます。特に近年は、事業環境の変化が速くなっていることから、短期間で新市場へ参入する手法として注目されています。
新規事業にM&Aを活用するメリット

新規事業にM&Aを活用する手法は、ゼロから立ち上げる手法と比較して次のようなメリットがあります。
短期間で新市場へ参入できる
M&Aのメリットは、短期間で新市場へ参入できる点です。既に事業基盤を持つ企業を買収することで、迅速に事業を展開できるためです。変化の激しい市場では、参入スピードが競争優位性を左右することも少なくありません。そのため、M&Aは短期間で新市場へ進出したい企業にとって有効な成長戦略と言えます。
人材・技術・ノウハウを獲得できる
新規事業を立ち上げる際、課題となりやすいのは人材の確保です。近年は少子高齢化や人材不足の影響により、専門性を持つ優秀な人材の採用が難しくなっています。その点、M&Aを活用すれば、専門知識や経験を持つ人材を確保できます。さらに、独自の技術やノウハウも同時に取り込めるため、経営資源を効率的に補完できる点がM&Aを活用するメリットです。
参入障壁の高い市場に進出できる
M&Aを活用することで、参入障壁の高い市場にも進出しやすくなります。例えば、次のような業界・市場です。
- 専門技術や許認可が必要な市場
- 法規制が厳しい業界
- ブランド力や実績が重視される市場
これらの市場は、新規参入のハードルが高く、自社だけで事業を立ち上げるには多くの時間やコストがかかります。一方、M&Aを活用することで、参入障壁をクリアしている既存企業を介して事業を展開できます。そのため、自社単独では参入が難しい市場にも進出しやすい点はM&Aを活用するメリットです。
新規事業の失敗リスクを抑えやすい
M&Aを活用した新規事業は、既存の顧客基盤や売上実績をもとに事業性を見極めたうえで参入できる点が特徴です。そのため、商品やサービスを開発したものの、市場ニーズがなく事業化に至らないといった失敗リスクを抑えやすくなります。こうした特徴から、M&Aによる新規事業は、ゼロベースで事業を立ち上げる場合と比べて、成功確率を高めやすい手法と言えます。
M&Aによる新規事業のデメリット・注意点
M&Aは、新規事業をスピーディに展開するのに有効な手法です。一方で、買収ならではのリスクや注意点も存在します。ここでは、M&Aによる新規事業のデメリット・注意点を解説します。
条件に合う買収先が見つからない場合がある
M&Aでは、自社の目的や戦略に合った買収先を選定することが重要です。しかし、希望条件に合う企業が必ず見つかるとは限りません。求める技術や顧客基盤を持つ企業が市場に存在しないケースや、条件に合う企業があっても売却を希望していないケースなどです。そのため、M&Aによる新規事業の成功には、適切な買収先を見極める知識やノウハウが必要です。
多額の資金が必要になる
M&Aを実施するには多額の費用がかかり、場合によっては経営を圧迫する可能性もあります。M&Aを進める際は、「買収できるか」だけで判断するのではなく、投資回収の見込みや収益性まで含めて検討することが重要です。
負債や経営リスクを引き継ぐ可能性がある
M&Aでは、買収先が抱える負債や経営リスクを引き継ぐ可能性があります。帳簿に記載されていない未払い残業代などの簿外債務といった財務リスクや、不適切な契約といった法務リスクが買収後に発覚するケースもあります。また、業績が低迷している企業を買収した場合、経営改善に想定以上の時間やコストを要することも少なくありません。こうしたリスクを回避するには、買収前にデューデリジェンス(適正評価手続き)を実施し、財務・法務・事業面を十分に確認することが重要です。
M&Aによる新規事業の成功事例
M&Aを活用して新規事業を立ち上げ、成長につなげている企業は数多く存在します。ここでは、その中から国内企業の代表的な成功事例を紹介します。
KDDI株式会社 × 株式会社ローソン

出典:KDDI株式会社「「未来のコンビニ」への変革!KDDI×三菱商事×ローソンが目指すReal×Techの取り組みを紹介!」
KDDI株式会社は2024年、株式会社ローソンに対してTOB(公開買付け)を実施しました。これによりローソンは、三菱商事株式会社とKDDI株式会社が50%ずつ出資する共同経営体制へ移行しています。本件により、KDDIのデジタル技術とローソンの全国的な店舗網を掛け合わせることで、「未来のコンビニ」の実現を目指しています。主な方向性は次のとおりです。
- AIロボティクスによる店舗業務の自動化・効率化
- AIスマホレジやデジタルサイネージによる新しい購買体験の提供
- 店舗を物流拠点としたクイックコマースの展開
- AIによるリモート接客など新たな顧客対応の実現
2025年には、未来のコンビニをコンセプトとする「Real×Tech LAWSON」の1号店をオープンしました。リアル店舗とデジタル技術を融合させた実証店舗として、新しいコンビニの在り方を検証しています。
本件は、KDDIが小売・生活インフラ領域へ事業領域を拡大するための戦略的な取り組みと言えます。
キリンホールディングス株式会社 × 株式会社ファンケル

キリンホールディングス株式会社は2019年、株式会社ファンケルと資本業務提携を締結し、本格的にヘルスサイエンス領域へ参入しました。その後、両社は関係を強化し、2024年にはファンケルを完全子会社化しています。
これにより、サプリメントや健康食品、化粧品などのヘルスサイエンス事業を新たな成長領域として確立しました。2025年度におけるヘルスサイエンス事業の売上収益は2,514億円に達しており、同社の主要事業の一つとして成長を牽引しています。
新規事業をスピーディに立ち上げるならM&A
M&Aによる新規事業は、ゼロから立ち上げる場合と比べて、短期間で事業基盤を獲得できるのがメリットです。事業性を見極めたうえで参入できることから、成功する見通しを立てやすいのも特徴です。こうした点を踏まえ、M&Aは新規事業をスピーディに実現する有力な選択肢と言えます。
一方で、買収先の選定には専門的な調査や判断が不可欠です。セルウェルでは各種調査に加え、新規事業支援サービス「メデテル」を通じて、アイデア出しから上市までを支援しています。新規事業の立ち上げでお困りの際は、お気軽にご相談ください。
