
企業の業績や利益を向上させるためには、まず現状を正確に把握することが欠かせません。中でも収益性分析は、自社の稼ぐ力を客観的に把握するうえで有効な手法です。本記事では、収益性分析の基本的な考え方や代表的な指標、経営改善に生かすコツをわかりやすく解説します。
収益性分析とは
収益性分析とは、企業がどれだけ効率よく利益を生み出しているかを把握するための手法です。売上・コスト・資産などをもとに、利益の生み出し方や収益構造を評価します。企業経営では、「売上は伸びているのに利益が増えない」という課題がしばしば見られます。収益性分析は、こうした課題の原因やどこに改善の余地があるのかを検討するのに有効です。企業の「稼ぐ力」を高めるうえで、欠かせない取り組みと言えるでしょう。
収益性分析の目的
収益性分析は、企業の収益力の現状を把握し、経営判断に生かすために行います。主な目的は次のとおりです。
- 企業の利益構造を把握する
収益性分析を行うことで、売上・コスト・利益の関係性を整理し、自社がどのように利益を生み出しているのかを把握できます。どの事業や商品が利益に貢献しているのか、収益の内訳を理解することで、自社の強みや収益構造を明確にできます。
- 課題を把握し、改善につなげる
収益性分析は、過去のデータや競合他社との比較を通じて、「なぜ収益が伸びていないのか」といった課題を明らかにするのに役立ちます。原因を検証することで、コストの見直しや価格戦略の改善など、具体的な対策を検討できます。
- 事業戦略の妥当性を判断する
収益性分析は、現在の事業戦略が適切かどうかの判断に役立ちます。例えば、新規事業の利益率を確認することで、継続すべきか見直すべきかを判断できます。
収益性分析の主な指標

収益性分析では、企業の稼ぐ力を測るのにいくつかの指標を用います。ここでは、代表的な6つの指標を紹介します。
売上高総利益率
売上高総利益率は、売上から原価を差し引いた「粗利」がどの程度あるかを示す指標です。「粗利益率」とも呼ばれます。計算式は次のとおりです。
- 売上高総利益率=売上総利益÷売上高×100
この指標を確認することで、商品やサービスがどれだけ付加価値を生み出しているかを把握できます。数値が低い場合は十分な付加価値を確保できていない可能性があり、仕入れコストの高騰や価格戦略などの影響が考えられます。
適正な水準は業種によって異なるため、同業他社や過去の自社データと比較しながら評価することが重要です。
売上高営業利益率
売上高営業利益率は、本業でどれだけ効率よく利益を生み出せているかを示す指標です。計算式は次のとおりです。
- 売上高営業利益率=営業利益÷売上高×100
営業利益は、売上総利益から人件費や広告費などの販売費及び一般管理費(販管費)を差し引いた利益です。この指標を確認することで、本業の収益性やコストを把握できます。数値が低い場合は、販管費が多い可能性があり、コストの見直しが必要と考えられます。
売上高経常利益率
売上高経常利益率は、企業の経営活動による収益力を示す指標です。計算式は次のとおりです。
- 売上高経常利益率=経常利益÷売上高×100
経常利益は、営業利益に営業外収益や営業外費用を反映したものです。営業利益は本業の収益力を表すのに対して、経常利益は企業の事業活動全般の収益力を表します。数値が低い場合は、借入による利息負担が大きい、あるいは営業外費用がかさんでいる可能性が考えられます。
売上高当期純利益率
売上高当期純利益率は、最終的にどれだけの利益が手元に残ったかを示す指標です。計算式は次のとおりです。
- 売上高当期純利益率=当期純利益÷売上高×100
当期純利益には、特別損益や税金なども含まれるため、売上高当期純利益率は企業の最終的な利益を示す指標です。この数値を確認することで、企業の全ての活動を踏まえた成果を把握できます。
売上高経常利益率と比較して、売上高当期純利益率の数値が低い場合は特別損失の発生や税負担の影響などが考えられます。
ROA(総資本利益率)
ROAは、企業が保有する資産を使って、どれだけ効率よく利益を生み出しているかを示す指標です。計算式は次のとおりです。
- ROA=当期純利益÷総資本×100
この指標を確認することで、資産の運用効率を評価できます。数値が高いほど、資産を効率的に活用して利益を生み出していると言えます。
ROE(自己資本利益率)
ROEは、株主から出資された自己資本をもとに、どれだけ効率よく利益を生み出しているかを示す指標です。計算式は次のとおりです。
- ROE=当期純利益÷自己資本×100
ROEを確認することで、自己資本をどれだけ有効に活用できているかを把握できます。数値が高いほど稼ぐ力が強いことを意味し、株主からの評価も高くなる傾向があります。
収益性分析を経営改善に生かすポイント

収益性分析で重要なのは、分析結果をどのように経営改善につなげるかです。適切に活用することで、自社の強みや課題を明確にし、精度の高い意思決定に役立ちます。ここでは、収益性分析を生かすポイントを紹介します。
複数の指標を組み合わせる
収益性分析では、複数の指標を組み合わせて確認することがポイントです。利益は複数の要因によって構成されており、一つの指標だけでは全体像を把握できないためです。
例えば、売上高総利益率が高いにもかかわらず、売上高営業利益率が低い場合は、販管費に課題がある可能性が考えられます。また、売上高営業利益率は問題ないのに売上高経常利益率が低い場合は、借入金の利息負担など財務面に課題があるかもしれません。
このように、各指標の関係性を見ながら分析することで、どの段階で利益が圧迫されているのかを具体的に把握できます。
過去データ・同業他社と比較する
算出した指標を正しく評価するためには、自社の過去データや同業他社の数値と比較することがポイントです。
自社の過去データと比較することで、収益性が改善しているのか、それとも悪化しているのかといったトレンドを把握できます。一方、同業他社との比較では、自社の立ち位置を客観的に把握できます。例えば、同業他社と比較して利益率が低い場合は、非効率な業務プロセスがあるのかもしれません。コスト構造の変化や価格競争の激化といった問題が潜んでいる可能性もあります。
ただし、業種やビジネスモデルによって各指標の水準は異なるため、比較対象の選定には注意が必要です。
収益性低下の原因を見極める
収益性が低下している場合、各指標から原因を探ることが大切です。
例えば、売上高総利益率が低下している場合は、原価の高騰や販売価格の値下げの影響などが考えられます。また、売上高営業利益率の低下であれば、人件費や広告費など販管費の増加が要因でしょう。
このように、各指標の意味合いから、「どの要素が変化したのか」を検討することが重要です。また、一時的な要因なのか、持続的な要因なのかを見極めることも大切です。原因を正確に把握できれば、コスト削減や価格戦略の見直し、業務効率化といった具体的な改善策につなげることができます。
まとめ
収益性分析は、企業がどれだけ効率よく利益を生み出しているかを可視化し、経営改善へとつなげるための重要な手法です。特に利益が伸び悩んでいる企業にとっては、課題を明確にするための重要な取り組みです。分析結果をもとに、コスト構造の見直しや価格戦略の最適化、業務効率化などの具体的な改善につなげましょう。
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