マイクロマーケティングとは?メリット・デメリット、成功事例を紹介

消費者のライフスタイル・趣味・嗜好が多様化している現代において、従来のマスマーケティングよりも、特定のターゲットに絞ったアプローチが有効な場合があります。本記事では、マーケティングの基礎知識として、マイクロマーケティングの概念やメリット・デメリット、活用事例を紹介します。 

Contents

マイクロマーケティングとは 

マイクロマーケティングとは、ターゲットとする顧客グループを細分化し、個人単位で最適なアプローチを行うマーケティング戦略です。消費者の行動履歴や属性などのデータを分析し、個別にアプローチをすることで高い効果が期待できます。この概念は、消費者のニーズに対応する必要性から1980年代に注目され始めました。 

具体的な手法としては、SNS広告やメールマーケティング、レコメンド(おすすめ商品の表示)などが挙げられます。例えば、ECサイトでは閲覧履歴や購入履歴を基に、ユーザーごとに最適な商品をレコメンドすることで、購入率や顧客単価の向上を図っています。また、地域密着型店舗が対象エリアの消費者向けに、パーソナライズしたサービスやプロモーションを展開するのもマイクロマーケティングの一例です。 

なお、ターゲットの顧客グループと各種マーケティングを示した図は以下のとおりです。 

ここでは、マイクロマーケティング以外の手法についても簡単に解説します。 

ニッチマーケティングとは 

ニッチマーケティングとは、特定の顧客層やニーズに焦点を当てたマーケティング手法です。例えば、「男性専用の化粧品」や「ビーガン向けの食品」などが挙げられます。この手法は小規模な市場を対象にしている点が特徴で、マイクロマーケティングよりもターゲットの範囲が広く、個別化していない点が異なります。つまり、ニッチな市場に属する特定のグループに向けた戦略です。 

セグメントマーケティングとは 

セグメントマーケティングとは、消費者の年齢や住まいといった属性、ライフスタイル、価値観などでグループ分けし、それぞれのグループに最適なアプローチを行う手法です。例えば、「20代の女性」や「健康志向の人」といったグループを対象に、ニーズを満たす商品や広告を展開します。この手法は、ニッチマーケティングよりもターゲットの範囲が広く、より多くの消費者に訴求できます。 

マスマーケティングとは 

マスマーケティングとは、不特定多数のターゲットに対して画一的なアプローチをする手法です。具体的には、テレビやラジオ、新聞、雑誌などに広告を出すことを指します。マスマーケティングは、自社製品やサービスの認知拡大を目的に行われることがほとんどです。幅広い消費者にリーチできることから、大量販売につながる可能性がある一方で、莫大な広告費用が発生します。 

マイクロマーケティングのメリット・デメリット 

マイクロマーケティングは、高い精度で個別のニーズに訴求できる一方で、注意が必要な点もあります。ここでは、マイクロマーケティングを導入する際に押さえておくべきメリット・デメリットを解説します。 

メリット① 訴求力が高い 

マイクロマーケティングの最大のメリットは、訴求力の高いアプローチができることです。ターゲットを絞り、個別に最適なアプローチをすることで、消費者にとって魅力的な情報を提供できるからです。このメリットにより、マイクロマーケティングを実施することで売上アップが期待できます。 

メリット② 広告費用を削減できる 

マイクロマーケティングは、マスマーケティングの大規模な訴求方法と比較して、広告費用を削減できるのがメリットです。マスマーケティングは不特定多数に訴求するのに対して、マイクロマーケティングは広告を配信する人数が限定的なためです。 

デメリット① 時間と手間がかかる 

マイクロマーケティングは、ターゲットの選定のためにデータ収集や分析が必要で、さらに個別化した広告を作成するのに多くの手間と時間がかかります。そのため、場合によっては人的リソースを大量に消費する可能性があります。これにより、大規模な訴求方法と比較して、顧客獲得単価が上がるリスクがあるので注意が必要です。 

デメリット② 規模を拡大しにくい 

マイクロマーケティングのデメリットは、規模を拡大しにくい点です。ターゲットを細分化して個人単位に絞っていることから、規模の経済性が働きにくいためです。そのため、マスマーケティングのような大量販売につなげるのは容易ではありません。 

マイクロマーケティングの実施手順 

マイクロマーケティングで成果を上げるには、適切な方法で実施することが重要です。ここでは、実施手順について解説します。 

ペルソナを作成 

まずはターゲット層を明確にするために、ペルソナを作成します。ペルソナとは、典型的な顧客の人物像を具体的にイメージしたものです。顧客データを収集して分析し、年齢や性別、職業、趣味、ライフスタイルなど、顧客の特徴を詳細に洗い出します。このように、ペルソナを作成すると顧客理解が深まり、効果的な戦略を立案しやすくなります。 

戦略を立案 

次に、戦略の立案です。具体的には以下の項目を検討します。 

  • どのチャネルを活用するか:(SNS、メールマーケティング、地域特化型イベントなど) 
  • KPI(業績評価指標)をどうするか:(受注収入、売上高、集客数など) 

これらの項目を決定する際には、ペルソナに対して最適な方法かどうかを基準に判断します。 

参考までに、マイクロマーケティング施策は以下のような場面でよく使われます。 

  • リターゲティング広告:ECサイトで購入した顧客に対して、関連製品やセール情報を配信 
  • 顧客ロイヤリティ対策:特定の顧客層に対して特典を付与 
  • レコメンド機能:ECサイトで顧客情報を基におすすめ商品を表示 
  • 地域特化型キャンペーン:特定の地域にローカライズしたキャンペーンやイベントの実施 

戦略の実行と結果の分析 

戦略が決定したら、次は実行に移します。実施後は結果をしっかり分析し、改善につなげることが大切です。得られたデータを基に判断し、戦略を最適化することで、より高い効果が期待できます。 

マイクロマーケティングの成功事例 

マイクロマーケティングの成功事例は、コカ・コーラ社の「ネームボトル」キャンペーンです。 

「ネームボトル」キャンペーンは、名前をデザインしたボトルを期間限定で発売した企画です。2014年にヨーロッパやアメリカ、日本など世界70カ国で展開され、当時のアメリカでは10年ぶりに2%の売上アップを達成するほど大成功しました。 

日本においても250種類以上の名前をデザインしたボトルが販売され、累計2.5億本を販売しました。自分の名前入りのネームボトルを探す消費者が増えた結果、オークションサイトなどで売買されることもあったようです。 

このようにコカ・コーラ社の「ネームボトル」キャンペーンは、「名前」という個人に強く訴えられる要素を商品に組み込んだことで、大量製品の商品でありながらマイクロマーケティングによって成功を収めました。 

マイクロマーケティングで競争力を高めよう 

マイクロマーケティングは、消費者の多様なニーズに特化したマーケティング手法です。個人単位で最適なアプローチを行うことで、高い訴求力を実現できます。マスマーケティングなどの大規模な訴求方法で「結果が出にくくなった」と感じている経営者様は、マイクロマーケティングの活用を検討してみてはいかがでしょうか。