2023年6月、佐賀県佐賀市が「佐賀市公式スーパーアプリ」の本格運用を開始しました。この取り組みは日本DX大賞2024「優秀賞」を受賞するなど、高い評価を得ています。そのため、スーパーアプリを活用した取り組みは、自治体や企業から注目されています。しかし、スーパーアプリという言葉に聞き慣れない方もいるでしょう。そこで本記事では、スーパーアプリの意味やメリット・デメリット、代表例をわかりやすく紹介します。
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スーパーアプリとは
スーパーアプリは、複数の機能やサービスを1つに統合したアプリケーションのことです。
多くの方は、普段からスマートフォンで以下のようなサービスを利用していることでしょう。
- SNS
- 通信販売
- インターネットバンキング
- キャッシュレス決済
- タクシーの手配
- ホテルの予約
- 公共交通機関の予約
- マップ 等
簡単に言えば、このような機能を複数利用できるのがスーパーアプリです。
冒頭で紹介した「佐賀市公式スーパーアプリ」では、ごみ収集日のプッシュ通知、図書館利用カードのデジタル化、電子申請、防災情報の閲覧、地域マップといった様々な機能を利用できます。
ミニアプリとの違い
スーパーアプリの話題でよく出てくる用語はミニアプリです。ミニアプリとは、スーパーアプリ内で動作するアプリケーションのことです。ネイティブアプリとは異なり、ミニアプリはスーパーアプリのユーザーであれば、ダウンロードせずに利用できます。
ネイティブアプリとは
ネイティブアプリとは、1つの機能やサービスが利用できる従来のアプリケーションです。ネイティブアプリはその仕組みから、利用する機能ごとにそれぞれのアプリケーションをインストールしたり、立ち上げたりする必要があります。
スーパーアプリが注目される背景
スーパーアプリが注目されるようになった背景は、ネイティブアプリの数が多すぎてほとんどがインストールされないためです。MMD研究所の「2022年版:スマートフォン利用者実態調査 第2弾」によると、スマートフォン利用者がインストールしているアプリケーション数の平均は19.3個でした。一方、アプリケーションの数は、Androidが230万でiPhoneが200万と言われています。
この数の差から、開発コストやリソースをかけてネイティブアプリ市場に新規参入しても、多くの人に利用してもらうのは困難だと言えます。
そして、インストール数が増えない要因の1つは、ネイティブアプリをダウンロードする度に、アカウントIDの作成やパスワードの設定などが煩わしいと感じるためです。
そこで、そのような手間を省けるとしてスーパーアプリが注目されています。また、ミニアプリを活用することにより、低コストでアプリケーションを開発できるのも注目されている背景です。
スーパーアプリを事業展開に活用するメリット
スーパーアプリが企業から注目されているのは、多くのメリットを得られるためです。ここでは、ビジネスで活用する場合のスーパーアプリのメリットを紹介します。
メリット① ユーザーを獲得しやすい
企業にとってスーパーアプリを展開するメリットは、ネイティブアプリと比較してユーザーを獲得しやすいことです。サービスごとにアカウントIDやパスワードの設定の必要がなく、1つのアプリケーションで複数の機能・サービスを利用できて利便性が高いためです。
アプリケーションはコストをかけて開発しても、ユーザーに利用してもらえなければ意味がありません。そのため、利用される可能性を高められるのは企業にとって大きなメリットです。
メリット② 定着しやすい
企業がスーパーアプリを事業展開に活用するメリットは、定着しやすいことです。ネイティブアプリの場合、機能やサービスが1つであるために、使用頻度が減るとユーザーがアプリを不要と判断して削除されてしまう可能性があります。
一方、スーパーアプリは複数の機能・サービスを利用できるため、ネイティブアプリと比較して使用頻度が下がりにくく、削除される可能性も低くなります。そのため、ユーザーにサービスを長期間利用してもらえる可能性が高まります。
メリット③ 低コストで事業展開できる
スーパーアプリで事業を展開する方法は、スーパーアプリ自体を開発・運用する方法と、ミニアプリでサービスを展開する方法の2つです。
スーパーアプリ自体を開発・運用する方法は、膨大な費用が発生します。規模が大きくなるほど高額になり、数千万円以上かかることも珍しくありません。同様にネイティブアプリを開発する際も、場合によってはゼロの状態から作成するため、費用が高額になることもあります。
一方、ミニアプリでサービスを展開する方法はすでにプラットフォームがあり、ゼロから開発する必要がありません。そのため、ネイティブアプリよりも開発コストを抑えることが可能です。
つまり、スーパーアプリ内のミニアプリを活用することで、他の方法よりも低コストで事業を展開できます。
メリット④ 多数のサービスを提供できる
企業がスーパーアプリを展開するメリットは、多数のサービスを提供できることです。ミニアプリを追加することで、サービス数を増やせるためです。そして、機能やサービスを集約することにより、集客を一本化できるのもメリットと言えます。
スーパーアプリを事業展開に活用するデメリット
スーパーアプリはメリットが多い反面、デメリットもあります。スーパーアプリの活用を検討している方は、デメリットについても押さえておきましょう。
デメリット① 参入障壁が高い
スーパーアプリは、参入障壁が高いことがデメリットです。利用頻度の高い機能やサービスは、すでに市場シェアを獲得しているアプリケーションがあり、スーパーアプリのユーザーを増やすにはシェアを奪う必要があるためです。そのためには開発力・企画力・マーケティング力などに加えて、多額の費用も発生します。
デメリット② 機能が多すぎると利便性が下がる
スーパーアプリのデメリットは、機能が多すぎると利便性が下がることです。スーパーアプリは機能やサービスを統合することで、利便性を高めています。しかし、さらに競争力を高めようとして機能を増やしすぎると、ユーザーにとって使いづらくなります。例えば、「利用したい機能が見つからない」や「操作方法がわかりにくくなった」といった具合です。このような状態になると、ユーザー離れが発生する恐れがあります。
スーパーアプリの代表例
スーパーアプリを活用した事業展開をイメージしやすいように、代表例を紹介します。
代表例① LINE
出典:LINEミニアプリ
日本でよく利用されているスーパーアプリはLINEです。
LINEは、9,700万人が利用しているコミュニケーションアプリです。SNSの利用率1位で、幅広い年代層が利用しています。そのLINEの機能は、メッセージを送信できるだけではありません。決済やニュース、音楽、マンガ配信、ライブ配信、広告配信など、多岐にわたります。
また、LINE上でアプリケーションを提供できる「LINEミニアプリ」を他の企業が活用できるのも特長です。企業は「LINEミニアプリ」を活用することで、デジタル会員証の発行やモバイルオーダー、店舗予約などのサービスを提供できます。
このように、LINEは多数のサービスを実装したスーパーアプリの成功事例です。
代表例② Alipay(アリペイ)
スーパーアプリは、中国や東南アジアでよくみられるビジネスモデルです。そこで、特にデジタル化が進む中国で成功している「Alipay(アリペイ)」を紹介します。
Alipayは、中国アリババグループが提供する中国シェアNo.1の決済サービスです。決済・各種金融サービス・タクシー配車などの機能があり、特に決済・金融関連のサービスが充実しています。その利便性の高さから、8,000万以上の企業と10億人以上のユーザーが利用しています。つまり、Alipayは決済や金融サービスに特化することで成功したスーパーアプリの事例です。
スーパーアプリの活用を検討しよう
スーパーアプリを活用する方法は、直接運営する方法とミニアプリで事業を展開する方法があります。スーパーアプリを運営するのは技術力・企画力・マーケティング力に加えて、多額の資金が必要です。一方、ミニアプリで事業を展開するのであれば、費用を抑えつつアプリケーションの開発・提供ができます。ネイティブアプリでユーザーの獲得が難しくなっている今、スーパーアプリの活用を検討してみてはいかがでしょうか。