
安定した収益を生み出すビジネスモデルとして、「リカーリング」が注目されています。実際に、SaaSや通信販売、教育といった様々な分野で導入が進んでいます。しかし、「具体的にはどんなビジネスモデルなのか?」や「サブスクリプションとは何が違うのか?」と疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。そこで本記事では、リカーリングの意味やサブスクリプションとの違い、メリット・デメリット、事例をわかりやすく解説します。
※SaaS(Software as a Service)とは、インターネットを通じて利用できるクラウド型のソフトウェアサービスのことです。
リカーリングとは?意味やビジネスモデルの基本
リカーリング(Recurring)とは、英語で「繰り返し発生する」や「再発する」といった意味を持つ言葉です。そのため、ビジネス用語として使用される場合は、継続的に収益を得られるビジネスモデルを指します。リカーリングの代表例には、複合機・コピー機のリースや動画配信サイトなどが挙げられます。
このビジネスモデルの特長は、安定した収益を確保しやすいことです。なぜなら、一度の販売で終わる「フロー型」ではなく、定期的な収益を積み上げる「ストック型」のビジネスモデルのためです。
サブスクリプションとの違い
継続的な収益が見込めるビジネスモデルの代表例が「サブスクリプション」です。これは、新聞の定期購読やサプリメントの定期購入など、定期的に料金が発生するサービスを指します。一般的には「定額制サービス」として広く認知されています。
一方、リカーリングは定期的に収益が発生するビジネスモデルの総称であることから、サブスクリプションはその一つの手法と言えます。
そのため、サブスクリプションはリカーリングに含まれますが、全てのリカーリングのビジネスモデルがサブスクリプションではない点に注意が必要です。例えば、電気や水道といった従量課金型サービスはリカーリングに分類されますが、サブスクリプションではありません。
2つの違いをまとめると以下のとおりです。
リカーリング | サブスクリプション | |
定義 | 継続的に売上が期待できる ビジネスモデル | 定額制サービス |
課金方式 | 従量課金・定額課金 | 定額課金 |
具体例 | ・複合機 ・コピー機のリース ・電気・水道 | ・動画配信サイト ・新聞の定期購読 ・サプリメントの定期購入 |
リカーリングのメリット・デメリット
企業にとってリカーリングは、安定した収益が期待できる一方、導入や運用する際は注意すべき点もあります。ここでは、リカーリングのメリット・デメリットを解説します。
メリット
リカーリングのメリットは以下のとおりです。
- 継続的に売上が発生する
最大のメリットは、一度顧客を獲得すれば継続的な売上につながる点です。月額課金や定期購入といった仕組みによって売上が積み上がるため、顧客数を増やすほど事業が安定します。
- 収益予測が立てやすい
顧客の継続率や解約率を把握することで、将来の収益をある程度予測できるのもメリットです。これにより、事業計画の精度が高まり、投資判断もしやすくなります。
- 顧客との関係性を強化できる
継続的なサービスの提供を通じて、顧客との関係性を強化できるのもメリットです。これにより、顧客満足度の向上やブランドロイヤリティの強化も期待できます。
デメリット
リカーリングのデメリットは以下のとおりです。
- 初期の収益性が低い
リカーリングは売り切り型のビジネスモデルと比べると、1件あたりの売上が少ない傾向にあります。加えて、収益が積み上がるまでには時間がかかるため、導入当初は収益性の低さから資金繰りに注意が必要です。
- 顧客管理や運用にコストが発生する
顧客が継続して利用するには、サポート体制やシステムの運用が不可欠です。契約の更新、請求、解約などの手続きにも対応する必要があり、リカーリングを運営するにはこれらのコストが発生します。
- 価格競争に陥りやすい
リカーリングのビジネスモデルは他社に真似されやすいことから、新規参入により価格競争に陥りやすいのがデメリットです。事業を安定して継続するには、価格以外の差別化が重要です。
リカーリングで成功するための秘訣
リカーリングの仕組みを導入するだけで、事業が成功するわけではありません。リカーリングで成功するには次のポイントを押さえておくことが大切です。
- アップセル・クロスセルを展開する
リカーリングは1件あたりの売上が少ない傾向にあるため、アップセル(上位プランへの移行)やクロスセル(関連商品の提案)を組み合わせることで、顧客単価を引き上げることが大切です。例えば、定額制サービスであれば、基本プランからプレミアムプランへのアップグレードを促すといった具合です。顧客単価を高めることで、事業の安定化につながります。
- 分析・改善し継続率を高める
リカーリングで継続率が低いと、売上を積み重ねることができません。顧客データを分析し、解約につながる原因に対して改善を図る必要があります。
- ブランド体験を強化する
顧客が製品やサービスを「続けて利用したい」と思うには、品質だけではなく、企業やブランドの価値観に共感できるかも重要な要素です。そのため、商品パッケージやメッセージカードでブランドストーリーを伝えるなど、ブランドとしての一貫した体験を提供することが大切です。
ブランディング力を高めたい方は、「ブランディング力を高める情緒的価値と機能的価値とは?違いと事例を紹介!」も併せてご覧ください。
国内のリカーリングの事例
多くの企業がリカーリングの事業を展開し、成果を上げています。ここでは、その中から2つの事例を紹介します。
スタディサプリ:オンライン学習サービス

出典:スタディサプリ
スタディサプリは、株式会社リクルートが提供するオンライン学習サービスです。「世界の果てまで、最高のまなびを届けよ」をコンセプトに、小・中・高・大学生向けの4万本以上の講義動画を提供しています。このサービスのビジネスモデルの特徴は以下のとおりです。
- 月額制で安定した収益を確保
- 自動更新によるサブスクリプション型モデル
- オンラインによる個別指導サービスを提供
スタディサプリはユーザーが学習を継続する限り、毎月の課金が自動的に発生するため、収益が積み上がりやすい構造になっています。特に、小学生から大学生までの長期にわたる学習ニーズに対応できる点は、リカーリングのビジネスモデルとして非常に優れています。
BASE FOOD(ベースフード):完全栄養食の定期販売

出典:BASE FOOD
BASE FOODは、ベースフード株式会社が提供する完全栄養食の通販サイトです。完全栄養食とは、1食あたりに必要な栄養素の全てが含まれている食品を指します。同サイトでは1日に必要な栄養素の約3分の1を摂取できる主食を提供しており、単品購入に加えて、定期配送の継続コースも展開しています。継続コースのビジネスモデルの特徴は以下のとおりです。
- サブスクリプション型の定期購入モデル
- 完全栄養食による差別化
- 4週間ごとの定期配送による利便性の提供
定期的に商品が届く便利さに加え、「栄養バランスを整えたい」というユーザーの健康意識に応えることで、長期的な利用を促進しています。
リカーリングで収益の安定化を検討しよう
企業が安定した成長を目指す上で、リカーリングは重要な選択肢の一つです。継続的に売上を見込めるビジネスモデルを確立することで、収益構造の強化にもなります。新規事業のアイデアを探しているビジネスパーソンは、この機会にリカーリングを検討してみてはいかがでしょうか。