静かな退職とは?従業員・企業への影響と対策方法を紹介

近年、若者世代を中心に必要最低限の仕事のみをする「静かな退職」と呼ばれる働き方が注目されています。本当に退職するわけではないものの、このような働き方をされると、企業側にとって生産性の低下や他の従業員の負担増といったデメリットがあります。

そのため、企業の成長を阻害しないようにするには対策が必要です。

本記事では静かな退職について知りたい方や対策方法を悩んでいる方に向けて、意味や注目される背景などを徹底解説します。

Contents

静かな退職とは

静かな退職(Quiet Quitting)とは、退職せずに仕事を続けているものの、必要最低限の仕事だけをする働き方です。例えば、指示のあった仕事だけをこなす、ミーティングで発言しない、残業を拒絶するなどが該当します。

この働き方を選択する方の大きな特徴は、「もっと給料を上げよう」「もっと大きな仕事がしたい」「昇進したい」といった上昇志向がないことです。加えて、ワークライフバランスを重視しており、自分の生活ができる程度の収入があればいいと考えています。

静かな退職は、2022年のアメリカで若者を中心に注目されました。そして、日本においてもこの働き方を選択する若者が増えています。Great Place to Work® Institute Japanの「アンケート調査」によると、日本で静かな退職を実践している若者は全体の3割程度でした。

出典:Great Place to Work® Institute Japan「2024年版「働きがいのある会社」ランキングベスト100から見る「働きがい」の傾向/若手の働き方トレンド「静かな退職」に対して企業はどう向き合うべきか

つまり、静かな退職の実践者は若者だけではなく、30代・40代・50代でも増えています。

静かな退職の実践者が増える背景

日本において静かな退職の実践者が増えているのは、4つの背景が要因です。ここでは実践者が増える背景について詳しく解説します。

ハッスルカルチャーへの反発

ハッスルカルチャーとは、常に全力で仕事に向き合い、人生の中で仕事を最も重要とする考え方や文化のことです。このような考え方に対して、「毎日、死に物狂いで働いて報われるのか」という反発が静かな退職を選択させる背景です。

また、「燃え尽き症候群」を発症するリスクや、日本全体で長時間労働を是正する動きが活発になっているのも、ハッスルカルチャーへの反発を生んでいます。燃え尽き症候群とは、熱意をもって働いていた方が突然やる気を失ってしまう症状のことです。そして、長時間労働を是正する動きの例として、2024年に施行されたトラックドライバーや医師の時間外労働の制限などがあります。

働き方の多様化

近年、日本において働き方が多様化しています。具体的には週休3日制やリモートワーク、副業、ダブルワークなどです。このように多様化する働き方の1つとして、静かな退職を選択する方が増えています。

コロナ禍による価値観の変化

2020年に流行した新型コロナウイルスは、自粛生活やリモートワークなど、それまでの生活様式を一変させました。加えて、訪日外国人観光客のストップやサプライチェーンの寸断など、経済も混乱したことから、多くの方は仕事への情熱や価値観が変化しました。そして、仕事へのモチベーションが下がり、転職する意欲もない方が静かな退職を選択したことで実践者が増えています。

ワークライフバランスを重要視する傾向

若者から静かな退職が支持される背景は、ワークライフバランスを充実させやすいためです。なぜなら、静かな退職は残業を極力しないなど、労働時間を自主的に削減する働き方のためです。

近年はライフスタイルが多様化したことから、趣味や好きなことに時間を割く方が増えています。好きなアイドルを応援する推し活は、代表例と言えるでしょう。他にも育児・介護・学業などを理由に、ワークライフバランスを重要視する方もいます。

このように、ワークライフバランスを重要視する傾向が強まったことが、静かな退職を選択する人が増えている背景です。

静かな退職は何が悪いのか

従業員は静かな退職を選択すると、ワークライフバランスの充実や燃え尽き症候群のリスクの軽減といったメリットがあります。

そして、指示された仕事をこなしていることから、従業員側からすると「何が悪いの?」と思う方もいるかもしれません。

そこで、この章では静かな退職を選択することによる従業員側・企業側のデメリットについて紹介します。

従業員のデメリット① 同僚や上司との関係悪化

従業員が静かな退職を選択すると、メリットばかりではなくデメリットもあるので注意が必要です。

具体的には、同僚や上司との関係性の悪化です。例えば、残業を断れば、その業務は他の同僚が引き受けているかもしれません。継続すれば、同僚の負担が増えるため、良好な関係を維持するのは難しくなるでしょう。また、上司からもやる気がないと判断されてしまうリスクがあります。

このように同僚や上司との関係性が悪化すると、職場の居心地が悪くなるため、結局は仕事を長く続けられない可能性があります。

企業側のデメリット① 生産性の低下

企業にとって静かな退職のデメリットは、生産性を低下させることです。あえて必要最小限の仕事しかしない従業員が増えてしまうと、会社全体でこなせる仕事量が減少してしまうためです。

企業側のデメリット② チームのモチベーションの低下

静かな退職を選択している従業員がいると、ミーティングで発言をしなかったり、必要最小限の仕事だけをしたりするため、他の従業員のモチベーションを下げる要因となります。チームのモチベーションが低下してしまうと、チーム全体の成長が難しくなります。

企業ができる静かな退職の対策方法

静かな退職を選択する従業員が増えると、生産性の低下など経済活動に大きく影響するため、企業は早急な対策が必要です。この章では、企業ができる3つの対策方法を紹介します。

従業員エンゲージメントを調査する

まずは従業員の現状を把握することが重要です。そこで、従業員エンゲージメント(愛社精神)を調査して、従業員の不満や望む職場環境などを確認します。

調査方法は、直接意見を聞けることから面談やインタビューなどがおすすめです。もし調査の結果、エンゲージメントが低い場合は、従業員の声を基に高める対策をする必要があります。

業務範囲の明確化と人事評価制度の見直し

従業員が静かな退職を選択する理由は、業務範囲が明確化されていないことや、仕事に対する適切な評価が得られないなどです。このような場合、従業員は何を頑張ればいいのか分からず、「言われたことだけをしよう」というマインドに陥りやすくなります。そこで、業務範囲を明確化し、適切に評価できるように人事評価制度を見直します。

ワークライフバランスを考慮する

ワークライフバランスを考慮して見直すことは、静かな退職の対策につながります。例えば、テレワークやフレックスタイム制、週休3日制の導入です。また、介護や育児などでライフステージに変化があった場合でも働きやすい環境を整えておくことで、従業員のモチベーションやエンゲージメントを高められます。

静かな退職の影響が出る前に早急に対策しよう

静かな退職は、実際に退職するわけではなく、必要最低限の仕事しかしない働き方を指します。2022年にアメリカで注目されて以降、日本においても選択する方が増えています。

従業員にはメリットもありますが、企業には生産性を低下させるリスクがあるので早めの対策がおすすめです。すでに静かな退職を選択している従業員がいる場合は、本記事で紹介した対策方法を実践してみましょう。