ジェンダーレスは、多様性を認め合う社会の実現に向けて重要なキーワードです。そのため、SDGs(持続可能な開発目標)では、目標5に「ジェンダー平等を実現しよう」を掲げています。
このような社会背景の中、若者を中心に広がっている新たな消費行動がジェンダーレス消費です。
本記事では新規事業のアイデアを探している方に向けて、ジェンダーレス消費の意味や市場動向、成功事例3選を紹介します。
Contents
ジェンダーレス消費とは?
ジェンダーレス消費とは、男性らしさ・女性らしさにとらわれない消費行動のことです。特に、Z世代と呼ばれる1990年代半ばから2000年代後半に生まれた若者の間で広がっています。
Z世代に広がっている背景の1つは、学校で「ジェンダー」に関する授業を受けていることです。株式会社SHIBUYA109エンタテイメントの「Z世代のジェンダー・多様性に関する意識調査」によると、Z世代の57.8%が学校でジェンダーに関する授業を受けていたとのことです。制服においても、50.5%の学校が女子生徒にスラックスを選択肢として認めているとのことでした。
このような環境で育ったZ世代は、ジェンダーや多様性に対しての意識が高い傾向にあります。同調査においても、「性別にとらわれずにおしゃれを楽しみたい」と回答したのは71.7%、「ジェンダーレスにおしゃれを楽しむのはその人の自由だと思う」と回答したのは78.9%でした。
つまり、若者向けのマーケティングにおいて、「ジェンダーレス消費」は重要なキーワードになっています。
ジェンダーレス商品を探す人が増えている?
ジェンダー消費が注目される要因は、ジェンダーレス商品の需要の増加です。
その証拠に、2022年に朝日大学マーケティング研究所が実施した「ジェンダーレス消費に関する調査データ」では、自分用にアパレル製品を購入する際、全体の33.2%が異性の売り場も確認しているとのことです。異性の売り場を見て回る理由として、以下の項目が挙げられていました。
- 好みのデザインの製品を見つけたい
- 体形に合ったサイズの製品を見つけたい
- 好みの素材や品質の製品を見つけたい
- 自分のイメージ・考え・気持ちに合う製品を見つけたい
また、同調査では女性の45.0%、男性の20.8%が異性の売り場を確認しているとのことです。つまり、ジェンダーレス商品を探している人が一定数いることを示しています。
男性化粧品の市場規模の推移
ジェンダーレス商品の需要が高まっていることを示すために、ここでは1つの例として男性化粧品の市場規模の推移を紹介します。
男性化粧品はジェンダーレス商品の代表例です。ひと昔前であれば、化粧品は女性が使う製品という考え方が一般的でした。しかし、現在では男性でも化粧品を利用する方が増えています。
実際に、株式会社インテージが実施した「ポストコロナでも成長を続ける男性化粧品市場」において、男性化粧品の市場規模は年々拡大傾向であることが報告されています。
出典:株式会社インテージ「ポストコロナでも成長を続ける男性化粧品市場」
同調査によると、2022年の市場規模は376億円で、2017年と比較すると約1.51倍に拡大しました。2023年上半期も前年同期比で15%増を達成していることから、今後も男性化粧品の市場規模は拡大すると予想できます。
企業におけるジェンダーレス消費のメリット
多くの企業では、ジェンダーレスを意識した商品開発やマーケティングをしています。ジェンダーレス消費への対応は、企業にもメリットがあるためです。この章では、企業がジェンダーレス消費への対応に取り組む2つのメリットを紹介します。
メリット① ビジネスチャンスの拡大
企業にとってジェンダーレス消費は、新たなビジネスチャンスと言えます。男性・女性のどちらかをターゲットにした商品を、性別にこだわらないデザインや機能にすることでターゲットを増やせるためです。また、ジェンダーレスを意識することで、男性化粧品のように新たな市場が生まれることもあります。
メリット② ブランドイメージの向上
企業がジェンダーレス消費に取り組むメリットは、ブランドイメージの向上です。なぜなら、多様性の実現に積極的に取り組んでいる企業として消費者に認識されるからです。
ジェンダーレス消費の成功事例3選
ジェンダーレス消費をイメージしやすいように、この章では3つのカテゴリにおける成功事例を紹介します。
4.1 ジェンダーレスコスメ:TOWI(トーイ)
出典:TOWI
TOWI(トーイ)は、株式会社maipple(マイプル)が「ジェンダーレス」「多様性」をキーワードに立ち上げたジェンダーレスコスメのブランドです。男性・女性のどちらの性別でも使用できるように製品を開発しているのが特徴です。
同ブランドでは4色のリップティントを展開しています。台湾のインフルエンサーがSNSで取り上げたことで、台湾の在庫が2カ月で完売して人気に火が付いています。※リップティントとは、唇を染料により染めることで色落ちしにくいメイクアイテムです。
また、公式オンラインショップにおいて、商品を購入される男女比の割合は3:7とのことです。つまり、男性と女性のどちらからも支持を得ており、TOWIはジェンダーレス消費の取り組みの成功事例と言えます。
参考:日本ネット経済新聞「maipple、ジェンダーレスコスメ「TOWI」が台湾で人気 SNSで話題、在庫分が2ヵ月で完売」
参考:サステナブル・ブランド・ジャーニー「ジェンダーレスコスメで性別に縛られず自分らしいメイクを楽しもう」
ジェンダーレスファッション:MUJI Labo(ムジラボ)
出典:無印良品「MUJI Labo 2024」
MUJI Labo(ムジラボ)は、無印良品が2006年に立ち上げた実験的なブランドで、2019年から「性別や年齢、体形に関係なく誰もが着られる服」を目指して様々なアイテムを発表してきました。
そのため、同ブランドの魅力は、シンプルなデザインで性別に関係なくファッションを楽しめることです。アパレルに特化した新宿靖国通り店では、MUJI Laboの商品の売上が伸びており、客単価を押し上げています。
つまり、MUJI Laboはジェンダーレスファッションによって男女の垣根をなくすことで、売上アップを達成している成功事例です。
参考:DIAMOND Chain Store「アパレル特化の無印良品「新宿靖国通り店」、紳士服の売上がとくに伸びた理由とは」
ジェンダーレスランドセル:RECO(レコ)
出典:RECO(レコ)シリーズ
ひと昔前はランドセルと言えば男の子は黒、女の子は赤というのが当たり前でした。しかし、現在ではそのようなランドセルの色の固定概念がなくなりつつあり、子どもが好きな色を選択するケースが増えています。
そこで株式会社土屋鞄製造所は、ジェンダーレスランドセルのシリーズとして、「RECO(レコ)」を2021年に発表しました。RECOは、性別にとらわれないデザインに加えて、複数の色から自由に選択できるのが特徴です。
発売を開始した2022年は同社の売上トップ5に、RECOシリーズの4製品がランクインするほど大ヒットしました。そして、2024年も人気シリーズとして10色を展開しています。
この事例は子ども向けの製品においても、ジェンダーレスの意識が高まっていることを示していると言えます。
参考:ELEMINIST「土屋鞄製造所がジェンダーレスを意識した「ランドセル」を発売 修理サービスも開始」
ジェンダーレス消費が成功のカギ
ジェンダーレス消費は、男らしさ・女らしさにとらわれない消費行動のことで、Z世代を中心に広まっています。多くの企業がジェンダーレス商品の開発・販売により成功しています。
多様化が重視される現代において、ジェンダーレス消費は成功のカギと言えるでしょう。新規事業のアイデアに悩んでいるご担当者様は、ジェンダーレスを意識した事業を検討してみてはいかがでしょうか。