警察庁「令和7年における警備業の概況」によると、令和7年12月末の4条業者は1万949社、警備員は59万6,985人です。全国警備業協会の調査では回答5,210業者の売上合計が約3兆5,056億円。拡大の数字の内側に、小規模事業者の比率と年齢構成があります。本記事では公的統計の要点を分解し、営業・採用・発注の現場で先に見る指標をわかりやすく解説します。
| 指標 | 令和7年12月末(警察庁概況) | 読み方 |
|---|---|---|
| 4条業者数 | 1万949社(前年比+1.3%) | 認定業者の母数は増えている |
| 警備員数 | 59万6,985人(+1.5%) | 総数増と採用難は別問題 |
| 売上(協会調査) | 約3兆5,056億円(回答5,210社) | 調査対象が年で異なる注意書きあり |
| 100人未満の業者 | 9,885社(90.3%) | 業界の大半は小規模 |
| 営業所1か所のみ | 9,219社(84.2%) | 単拠点が標準に近い |
| 60歳以上の警備員 | 約47.3%(70歳以上21.6%) | 年齢のピークは70歳以上 |
まず押さえる全体像:業者・人数・売上
警察庁の概況は、警備業法第4条に基づく認定業者(4条業者)を対象にしています。令和7年12月末で1万949社。前年より138社、率にして1.3%の増加です。警備員は59万6,985人で、9,137人(1.5%)増えています。常用は54万5,879人、臨時は5万1,106人で、全体に占める臨時の割合は8.6%です。臨時の比率は年によって少し動くので、採用計画では直近3年の表も見ます。
売上は、全国警備業協会が警備業者を対象に実施した調査の数字です。回答のあった5,210業者の合計が3兆5,056億6,206万7千円。資料には「各年末ごとの調査方法、調査対象数は異なる」と注記があります。前年比をそのまま成長率と読まない方が安全です。
女性警備員は4万5,304人で全体の7.6%です。臨時に占める女性の比率は、常用より高い、という内訳もあります。採用計画を立てるときは、総数だけでなく、常用・臨時の別も一緒に見ます。採用計画を総数だけで立てると、現場の欠員理由が残ったままになります。
ここまでの3つの指標(業者・人数・売上)は、いずれも「業界が大きい」ことを示します。ただし、次の節の規模のばらつきを見ると、大きい業界の中身は小さな会社の集まりであることがわかります。集まり方を見ずに大手のIRだけを読むと、現場の発注単位を誤ります。
小規模が9割:100人未満と単拠点
警備員数100人未満の業者は9,885社で全体の90.3%です。5人以下だけでも2,912社(26.6%)あります。一方、1,000人以上は57社(0.5%)、500〜999人は79社(0.7%)です。人数の分布は、裾野が極端に広い形です。
営業所は全国で1万6,728か所。主たる営業所のみ(1営業所)の業者は9,219社で84.2%です。営業所が5以下の業者は全体の97.4%に達します。全国網を持つ大手と、単拠点の地場業者が、同じ「警備業」のラベルに入っています。
発注側が「警備会社を1社にまとめる」と言うとき、単拠点の地場と全国機械警備では、品質管理の単位が違います。見積を比べる前に、拠点数と対応エリアを表の1行目に置きます。1行目が空の比較表は、価格だけの比較になりやすいです。
受注側も同じです。自社が単拠点なら、遠い現場への移動コストと監督者の配置を先に書き出します。後から足すと、利益が残らない見積になりやすいです。書き出す単位は「移動時間」「宿泊の有無」「監督の兼務可否」の3行で足ります。
年齢構成:70歳以上が最多層
年齢別では、70歳以上が12万9,012人(21.6%)で最多です。60〜64歳が12.6%、65〜69歳が13.1%。60歳以上を足すと約47.3%になります。30歳未満は10.9%です。
在職年数では、3〜10年未満が31.2%、10年以上が29.1%です。1年未満も18.3%あります。長く残る人と、短期間で入れ替わる人が、同じ職場に並ぶ構造です。並ぶこと自体が悪いわけではないが、教育の負荷と配置の柔軟性は別管理が必要です。
総員が増えても、現場のシフトが安定するとは限りません。警察庁の省力化投資促進プランでは、2025年9月の警備業の有効求人倍率が6.70倍、全職業が1.10倍、と対比されています(概況本文の外にある関連資料の要約)。総数の増加と、求人倍率の高さは両立します。
採用の打ち手は、「人数を増やす」だけでなく、「どの年齢帯の欠員がシフトを止めているか」を先に特定することです。欠員の時間帯が夜勤なら、昼間の募集チラシだけでは埋まりにくいです。夜間の欠員が続く現場は、単価の見直しと機械警備の併用を同じ会議で議論します。
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業務区分:交通誘導が業者の中心
業務区分ごとの業者数を見ると、2号業務(交通誘導・雑踏など)を行う業者が8,768社。全体の80.1%に達します。うち交通誘導は8,241社(全体の75.3%)、雑踏は5,164社(47.2%)です。1号(施設警備など)は6,975社で、63.7%を占めます。
3号(貴重品運搬など)は638社(5.8%)、4号は699社(6.4%)にとどまります。同じ警備業でも、交通誘導中心の地場と、現金輸送・機械警備の専業では、顧客層と適用される規制が違います。
営業の話を「警備全般」にすると、相手の発注区分とずれます。先に相手の現場が1号か2号かを確認し、対応できる区分を見積に明記します。
建設現場の交通誘導が主戦場の会社が、いきなり機械警備の全国提案に乗るのは距離があります。逆も同じです。まずは今の区分で取れる仕事の単価と稼働率を固める方が早いです。
見積書の品目名も、区分に合わせて書きます。「警備一式」より「交通誘導(2号)」「施設常駐(1号)」の方が、後の条件交渉が短くなります。短い交渉は、単価の説明に時間を回せます。単価の説明が先に立つ見積は、後からの値引き要求にも答えやすいです。
機械警備:対象施設は増え、業者数は減る
機械警備業者は512社。前年より30社、率にして5.9%減っています。一方、対象施設は352万5,422箇所で、前年より10万1,952箇所(2.9%)増えています。うち住宅は195万261箇所です。
1業者当たりの対象施設は6,886施設。前年より570施設、率にして9.0%増です。待機所当たり、専従警備員1人当たり、巡回車1台当たりの対象施設も、前年より増えています。対象が増え、拠点・車の負担の密度も上がっています。
基地局は617、待機所は7,275、専用巡回車は1万1,047台です。対象施設の伸びと、基地局・巡回車の指数推移は、同じ方向とは限りません。機械警備の提案では、「監視の厚み」を施設数だけでなく、待機・巡回の指標でも説明します。
顧客への説明文に施設数だけを書くと、「増えた=安心」と読まれやすいです。待機所や巡回車の負荷が上がっている年は、その一文をセットで添えます。
即応の指標(1待機所当たり施設数など)が前年より上がっている年は、契約更新のタイミングで巡回体制の説明資料を1枚足します。足さないと、値上げ交渉の根拠が価格だけの話になります。価格だけの話は、競合比較に弱いです。
検定・指導教育:資格の層
令和7年中の検定合格証明書の交付は、1級が1,760件、2級が1万4,013件です。保有者は1級が延べ3万4,903人、2級が延べ19万4,244人。何らかの検定を持つ警備員は16万1,019人です。
指導教育責任者資格の交付は、令和7年中に1万4,224件です。何らかの指導教育責任者資格を持つ人は7万3,091人。機械警備業務管理者の保有は8,076人です。
入札や大規模施設では、配置計画に検定・指導教育の人数が条件になることがあります。見積の段階で「配置できる有資格者の人数」を社内で先に数えておくと、後からの条件変更が減ります。
有資格者が足りない案件は、早めに「受けない」か「協力会社と組む」かを決める。決めるのが遅いと、現場開始の直前に人が足りない、という形になる。
社内の資格台帳は、氏名・級・有効期限・配置できるエリアの4列で足りる。台帳が無いと、毎回現場責任者への聞き取りが必要だ。聞き取りだけの運用は、担当が休む週に止まる。
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行政処分と協力表彰:品質の周辺指標
令和7年中の行政処分は、指示116件、営業停止12件、認定取消1件の計129件です。違反件数は警備業者1,702件など、年次の表が概況に載っています。
警察活動への協力表彰は、業者89件、警備員139件です。警備員表彰のうち109件(78.4%)が勤務中の功労です。特殊詐欺の未然防止も24件含まれます。
発注側の与信では、価格だけでなく、処分履歴の確認窓口を決めておくと早いです。受注側は、表彰事例を営業資料に載せるなら、件数の出典(概況の年)を脚注に残します。脚注が無い表彰リストは、翌年の資料で使い回せません。
表彰は「良い会社」の証明にはなり切れません。ただ、現場の緊張感や通報の習慣があることは示せます。価格交渉の材料にするなら、件数より「どんな場面か」を1例添える方が伝わります。例は、特殊詐欺の未然防止でも、保護でも構いません。出典の年だけは必ず残します。
営業・採用・発注が今週見る1点
今週の1点は、自社または取引先を「100人未満/単拠点/交通誘導の比率/60歳以上の比率」の4マスで置くことです。警察庁概況の全国値を横に置き、自社がどのマスに近いかを1行で書きます。
4マスを埋めるのに必要な時間は、社内データが揃っていれば30分程度です。揃っていない週は、まず全国値の4マスだけを貼り、自社欄は「未確認」と書いて定例に出します。
売上の協会調査値は、調査対象の注意書き付きで引用します。注意書きを外した成長率は、社内資料に載せない運用にします。載せたい場合は、「回答業者ベース」と明記したうえで、比較年の調査方法の差も1行添えます。
セコムなど大手の連結売上(例:2026年3月期連結約1兆2,569億円)は、協会調査の合計とは定義が違います。並べるときは「連結全体」と「警備業協会調査」を分けます。分けないと、シェアの計算が壊れます。壊れたシェアは、営業資料に載せない方が安全です。
よくある質問
Q. 売上約3.5兆円は業界全体の確定値ですか?A. 全国警備業協会調査に回答した5,210業者の合計です。未回答分は含まれません。年により調査方法も異なります。
Q. 警備員が増えているのに人手不足と言われるのはなぜですか?A. 総数増と、現場が必要とする時間帯・資格・地域の充足は別です。求人倍率が高い、という整理が関連資料にあります。
Q. 中小の警備会社が多い根拠は?A. 警備員100人未満が90.3%、営業所1か所のみが84.2%です(令和7年末)。
Q. 出典は何ですか?A. 警察庁「令和7年における警備業の概況」。売上は同資料内の全国警備業協会調査。大手連結は各社IR(定義分離)。調査時点は2026年9月です。
主な出典
セルウェルは市場調査・マーケティング支援の会社として、国内市場のデータ整備から商品戦略の実装まで一貫して支援しています。検討中のテーマがどこまで固まっているかを短時間で確かめたい方は事業化スコア診断(無料)を、個別のご相談はお問い合わせからお気軽にどうぞ。
※2026年8月時点の情報をもとに作成しています。監修:森英朗。
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