アシックスは、神戸発のスポーツ用品メーカーで、いまはパフォーマンスランニングを柱に世界で売っています。社名の由来はラテン語の「健全な精神は健全な肉体に宿る」です。オニツカ時代から続く歴史のあと、長く続く低迷を経て、直近は高付加価値のランニングと、スポーツスタイル・オニツカタイガーの伸びで数字が変わりました。2025年12月期の連結売上高は8,109億円(前期比+19.5%)、営業利益1,425億円(+42.4%)です。本記事では、会社の概要、再建までの転換点、地域別とECの一次数字、中国での利益率改善までをわかりやすく解説します。
当コラムで注目する用語
- パフォーマンスランニング(P.RUN):競技・トレーニング向けランニング。売上の最大カテゴリー。
- スポーツスタイル(SPS):街履き寄りのライフスタイル靴。急伸カテゴリー。
- オニツカタイガー(OT):ヘリテージブランド。利益率が高い。
- 中華圏:中国本土などを含む報告セグメント。
- DTC/EC:直販・自社EC。粗利と会員基盤に効く。
- OneASICS:会員プログラム。日米欧豪に加え中華圏・インド等でも拡大。
アシックスとは何か——概要と主要数字
アシックスは、スポーツシューズ・アパレルを売る上場メーカーです。本社は神戸。報告はカテゴリー別と地域別の二軸で見ます。
「ランニングの会社」だけではありません。2025年はスポーツスタイルとオニツカタイガーがそれぞれ売上1,000億円超に達し、利益率も高い水準です。一方で、数量とブランドの芯は依然としてパフォーマンスランニングにあります。提案書では、相手がP.RUNの卸なのか、OTの店頭なのかを先に書いてください。
ご担当者様が最初に押さえる数字は、次の表です。歴史の話は、そのあとに置きます。表のあとに沿革を読むと、いまの数字がどの転換の結果かが見えやすいです。
| 区分(2025年12月期) | 一次数字 |
|---|---|
| 連結売上高 | 8,109億円(+19.5%/為替除く+19.4%) |
| 営業利益/利益率 | 1,425億円(+42.4%)/17.6%(+2.8pt) |
| P.RUN | 売上3,635億円(+11.2%)/カテゴリー利益率23.7% |
| スポーツスタイル/OT | 1,413億円(+43.6%)/1,365億円(+43.0%) |
| 欧州/日本/中華圏/北米 | 2,258億/2,042億/1,205億/1,411億円 |
| EC売上 | 1,484億円(+8.3%。北米除くと+26.3%) |
オニツカからアシックスへ——名前が変わった意味
前身は1949年、鬼塚喜八郎氏が神戸で始めたオニツカです。虎のマークはいまもオニツカタイガーに残ります。1977年、社名をアシックスへ改めました。ラテン語 Anima Sana In Corpore Sano の頭文字です。
例えば、社名変更は「靴屋から総合スポーツメーカーへ」という宣言でもありました。その後、海外展開と多カテゴリー化が進みます。日本企業がスポーツ用品で世界ブランドを持つ数少ない例の一つです。
ただし、名前の由来だけでは再生理由になりません。再生は、どの商品を・どの地域で・どのチャネルで厚くしたか、という直近の数字で説明できます。
① 創業は神戸の履物
神戸港の物流と職人文化の近くで始まった履物メーカー、というのが出発点です。後のグローバル展開でも、「走るための機能」が商品の中心に残り続けます。
長く続いた苦境——何が痛かったか
2000年代後半から2010年代にかけて、アシックスはブランドと採算の両面で苦しい時期を経験しました。量販向けの拡販、価格競争、地域ごとの在庫、低採算店舗などが重なると、売上はあっても利益が残りにくくなります。
この局面を一言で言うなら、「売ること」と「残すこと」がずれていた、です。ランニングの技術資産はあっても、チャネルと価格帯の設計がブランドを薄めた、という読み方ができます。
再建の入口は、全部を伸ばすことではなく、高付加価値のランニングへ寄せ、不採算の売り方を削ることでした。北米では、その後も不採算店舗の閉鎖やECの品揃え絞り込みが続きます。痛みを先に取る設計です。
② 転換点は「伸ばす」より「削る」
例えば北米は、2025年も売上の伸びは+4.6%と控えめです。それでもセグメント利益は+42.1%です。関税の影響があっても、スポーツスタイルの伸びと、リテール・ECの収益性改善で営業利益率は11.3%(+3.0pt)まで戻しています。伸び率だけを見ると「弱い北米」に見えますが、利益の設計は別物です。
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再生の芯——パフォーマンスランニング
2025年のP.RUN売上は3,635億円(+11.2%)、カテゴリー利益は860億円、利益率23.7%(+2.1pt)です。会社は高付加価値商品へのフォーカスを強調しています。
特に伸びたのはアシックスジャパンと東南・南アジア、と説明資料にあります。北米ではランニング専門店向けが+23.8%と開示され、専門店チャネルでブランドを厚くする方針が数字に出ています。量販の棚だけを見ると見えにくい変化です。
「ランニングシューズで再生した」と言える理由は、ここです。売上の最大塊が高利益率で伸び、他カテゴリーの急伸を支えられる土台になった、という順序です。スポーツスタイルやOTの急伸だけを切り取ると、一過性のファッションに見えます。P.RUNの利益率が先に上がっている点が、再生の本体です。粗利益率全体も56.8%(+1.0pt)へ改善しており、仕入為替の逆風を高付加価値で打ち返した、と会社が説明します。
地域別——欧州・日本・中華圏・北米の分かれ方
地域別売上(報告セグメント)は、欧州2,258億円(+25.9%)、日本2,042億円(+22.7%)、中華圏1,205億円(+19.9%)、北米1,411億円(+4.6%)、東南・南アジア497億円(+33.4%)です。全リージョン増収増益、と短信はまとめています。
日本はインバウンドが大きく効きました。インバウンド売上は474億円(前期257億円からほぼ倍)。オニツカタイガー(+64.7%)とP.RUN(+44.7%)が牽引し、アシックスジャパン全体で約+34.7%です。営業利益率は30.0%(+6.5pt)まで上がっています。
欧州は全カテゴリー好調で、スポーツスタイルの伸びも大きいです。営業利益率16.3%(+2.2pt)。中華圏は経済の弱含みが懸念される中でも+19.9%。営業利益率は20.8%(+1.6pt)で、販売価格の適正化とDTC比率の向上が粗利改善に寄与した、と会社が説明します。
東南・南アジアは+33.4%。2025年10月にはインド・ニューデリーで初の直営店を開いています。2026年は「Year of ASIA」を掲げ、各国で売上1億米ドルの早期達成を目指す、とも述べています。
ECと店舗——比率が上がる一方で、北米は絞る
EC売上は1,484億円(+8.3%)です。営業利益率は18.9%(+5.3pt)。ただし北米で戦略的に品揃えを絞っているため、北米を除くとECは+26.3%成長です。「EC比率が上がればよい」ではなく、どの国のECかを分けないと誤読します。
リテールは+29.8%。アシックスジャパン+65.1%、中華圏+21.1%などが牽引し、リテール営業利益率は24.0%(+5.1pt)まで改善しています。ホールセールも北米・欧州・東南アジアなどで+19.5%です。
店舗戦略の変化は、閉店と大型旗艦の同時進行です。北米は不採算店を閉じ、欧州のオニツカタイガーはバルセロナ・ロンドン・パリなどに大規模直営を開きました。同じ「店舗」でも、コスト削減の店と、ブランド投資の店が混在します。
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中国——高価格帯シフトが利益率に効いたか
中華圏の売上1,205億円(+19.9%)に対し、セグメント利益は251億円(+29.8%)です。利益の伸びが売上より大きい。会社は、価格適正化とDTC比率向上による粗利改善を理由に挙げます。ローカル需要を捉える商品も継続して好調、と説明しています。
必須で見るべきは、「中国で売上が伸びた」だけでなく「利益率が20.8%まで上がった」点です。高価格帯・高粗利へ寄せると、数量が伸びにくくても利益が残ります。逆にディスカウントで広げると、売上は増えても再生になりません。2025年の中華圏は、前者の数字に寄っています。
なお、現地ではグローバルブランドに加え地場大手とも競合します。会社自身、中華圏は「まだまだ拡大の余地があり、ブランドのフットプリントを伸張していく」と決算資料で説明しています。伸びしろの話と、いまの利益率改善は別レイヤーです。
これから——2026年計画と確認ポイント
2026年12月期の会社計画は、売上9,500億円、営業利益1,710億円、営業利益率18.0%です。P.RUNは4,150億円想定、スポーツスタイルは2,050億円想定と、カテゴリー別にも伸ばす絵を示しています。
最初に確認することは三つです。(1) 連結の8,109億円と営業利益率17.6%を一次で開く。(2) P.RUNの利益率と、SPS/OTの急伸を分けて読む。(3) ECは北米除き+26.3%と、中華圏の利益率20.8%をセットで見る。これで「ランニングで再生した理由」が、感覚ではなく数字になります。企業様の社内共有では、カテゴリー表と地域表を一枚に並べるだけでも議論が速くなります。
読み解きのポイント ①本体はP.RUNの高付加価値 ②欧州・日本・中華が伸ばし、北米は利益設計 ③ECは地域で中身が違う ④中華圏は価格とDTCで利益率改善 ⑤OT/SPSの急伸は再生の加速材
よくある質問
Q. アシックスとは何の会社ですか?
神戸発のスポーツ用品メーカーです。パフォーマンスランニングを最大カテゴリーに、スポーツスタイルやオニツカタイガーも伸ばしています。2025年12月期の連結売上は8,109億円です。
Q. ランニングシューズで再生したとは、どういう意味ですか?
P.RUNが売上3,635億円・カテゴリー利益率23.7%と、高付加価値で伸びたことが土台です。その上でSPSやOTが急伸し、連結の営業利益率が17.6%まで上がりました。
Q. 中国市場はどう見ればよいですか?
中華圏売上は1,205億円(+19.9%)、営業利益率20.8%です。価格適正化とDTC比率の向上が粗利を押し上げた、と会社が説明しています。
Q. EC比率は上がっていますか?
EC売上は1,484億円(+8.3%)です。北米で戦略的に絞っているため、北米を除くと+26.3%です。地域を分けて読んでください。
主な出典
株式会社アシックス「2025年12月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」/同「2025年12月期 決算説明資料・スクリプト」(2026年2月)/同IRニュース(2025年度決算)/Sellwell DataLakeの国内企業シード(アパレル・ライフスタイル)/調査時点:2026年8月12日。
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