新規事業を立ち上げるにあたって、実に多くの補助金や助成金制度が用意されています。
ただし、補助金や助成金を受けるには、補助金の申請資料の作成などで多くの労力が必要になります。
既存の業務で忙しく、申請業務まではなかなか手が回らない方も多いのではないでしょうか。
申請し要件さえクリアすれば、補助金・助成金が交付され、基本的には返却する必要はありません。
新規事業には、設備投資を始めとした多額の資金が必要になるケースが多く、初期投資の経済的な負担を軽減できるように、新規事業に活用できる補助金・助成金を紹介します。
Contents
新規事業立ち上げに補助金・助成金がオススメな理由
返済する必要のない資金が手に入る
補助金や助成金は、国・地方公共団体などから支出され、原則として返済は不要です。新規事業立ち上げの際に、金融機関からの借り入れでは、利子の支払いなどもあり、負担が大きくなります。
新規事業立ち上げ時は、固定費や人件費などが増加するのに対し、売上はまだ発生しづらい状況です。従業員への毎月の給料支払もあるため、新規事業へ投下する予算規模はできる限り抑えたいところです。
時代の流れが把握できる
政府や地方公共団体は、政策実現のために税金から補助金や助成金を特定の分野に支出します。時代の流れとして、ポストコロナ・ウィズコロナ時代の経済社会の変化に対応するための新規事業立ち上げに対して、積極的に支援している状況です(2022年11月現在)。
国が、企業の思い切った事業再構築等を支援している時代の流れに乗ることも大切な視点と言えます。
新規事業の計画を明確にできる
補助金申請は面倒な作業も多く、経営計画書や事業計画書等の提出が必要となります。計画書を作成するために、正確な市場分析、顧客ニーズ分析、自社の強みやターゲット設定など、基本的な事業計画やマーケティング計画が必要になります。
その作業を行っていく上で、論点が整理されて新規事業の計画を改めて明確にすることへとつながります。
新規事業に活用できる補助金・助成金とその特徴

中小企業庁を始めとして、各省庁・地方自治体のホームページを見ると、実に様々な補助金が用意されていて、どれに該当するのかわからないほどです。
新規事業に活用できる、主な6つの補助金・助成金の内容や金額を簡潔にまとめましたので、紹介します。
キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金は、非正規雇用の労働者の企業内でのキャリアアップ促進のために『正社員化、処遇改善の取組を実施した事業主に対して助成』する制度です。
一例をあげると、中小企業が実施した場合には、正社員化コースでは有期から正規雇用労働者に転換又は直接雇用すると、1人当たり57万円(生産性の向上が認められる場合は72万円)が助成されます。
以下の2つの支援と7つのコースに分かれています。
- 正社員化支援
正社員化コース | 有期雇用労働者等を正規雇用労働者に転換又は直接雇用 |
障害者正社員化コース | 障害のある有期雇用労働者等を正規雇用労働者等に転換 |
- 処遇改善支援
賃金規定等改定コース | 有期雇用労働者等の基本給の賃金規定等を改定し2%以上増額 |
賃金規定等共通化コース | 有期雇用労働者等と正規雇用労働者との共通の賃金規定等を新たに規定・適用 |
賞与・退職金制度導入コース | 有期雇用労働者等を対象に賞与・退職金制度を導入し支給又は積立てを実施 |
選択的適用拡大導入時処遇改善コース | 選択的適用拡大の導入に伴い、短時間労働者の意向を大切に把握し、被用者保険の適用と働き方の見直しに反映させるための取組の実施 |
短時間労働者労働時間延長コース | 有期雇用労働者等の週所定労働時間を3時間以上延長し、社会保険を適用 |

小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は『小規模事業者が自社の経営を見直し、自らが持続的な経営に向けた経営計画を作成した上で行う販路開拓や生産性向上の取組を支援する』制度です。
通常枠では、最大50万円が上限となっています。
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
『中小企業等による生産性工場に資する革新的サービス開発・試作品開発・生産性プロセス改善を行うための設備投資を支援する』補助金です。
補助額の上限は、750万円から1億円と様々な取組に対応しています。
創業助成金(東京都)
東京都が行う創業助成金は『都内創業予定者』又は『創業して5年未満の中小企業者等のうちで申請要件を満たす個人又は代表者の法人』が助成対象です。
東京都内で新規事業を立ち上げる人等に向け、最大300万円までの助成をしています。
事業承継補助金
中小企業者・個人事業主に対し、事業承継・引継ぎに係る取組を最大600万円補助しています。
事業承継・引継ぎ補助金は大きく分けると『経営革新』と『専門家活用』の2つです。
- 経営革新
創業支援型、経営者支援型、M&A型の3つの類型に分かれ、それぞれの事業承継の要件は異なります。
- 専門家活用
買い手支援型と売り手支援型の2つの類型に分かれ、類型ごとに補助対象者が異なります。
事業再構築助成金
ポストコロナ・ウィズコロナ時代の経済社会の変化に対応するため、企業の思い切った事業再構築を支援すべく『新分野展開』『業態転換』『事業・業種転換』『事業再編』など、思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業等の挑戦を支援する補助金です。
通常枠の補助額は、100万円から8,000万円までと幅広い助成金です。
新規事業に補助金・助成金を導入するデメリット・メリット
ここまで、新規事業に補助金・助成金を導入することについて見てきました。
最後に、デメリットを7つとメリットを3つまとめておきます。
デメリット
(1)数多くある、各省庁・自治体からの情報をつぶさに見なければなりません。
(2)省庁ごとに補助金があり、比較が難しく、時間がかかってしまいます。
(3)申請に際しては、申請先が官公庁であるため、申請事務が煩雑になってしまいます。
(4)申請時には、事業計画書・申請書類などの添付書類が膨大にあります。
(5)申請後も、事業結果報告、実績報告、補助金請求書などの報告書類を提出する必要があります。
(6)申請したからといって、必ず採用されるとは限りません。要件に該当しなかった場合や、予算上限に達して補助が終了する場合もあります。
(7)補助金・助成金という性質上、使途は限られてしまいます。
メリット
(1)原則返済不要という点は、非常に大きく、多くのデメリットに勝ります。
(2)基本的に、応募は複数可能であるため、申請要件さえ満たせば多くの金額の補助・助成を受けることができます。
(3)官公庁へ何度も足を運ぶため、担当者とも面識ができます。しっかりとコミュニケーションを取ることで、より有益な補助金等の情報を得る可能性もあります。
また、官公庁では数年ごとに人事異動が繰り返されるため、会社の事業範囲の分野での仕事上のパートナーになることもあり得ます。
まとめ
新規事業を立ち上げるにあたっては、必要な資金は金融機関からの借り入れを出来る限り少なくするためにも、補助金・助成金を活用することが大切です。
補助金・助成金の申請業務は煩わしいものの、原則返済不要なので、使わない手はないのではと言えます。
逆に、スモールビジネスの経営者や個人事業主の方が活用しやすい『小規模事業者持続化補助金』を使って、新規事業のための新商品開発費用や新しい顧客層を開拓することを目的として、積極的に使うことも考えられます。
新規事業立ち上げにあたっては、補助金・助成金の活用を十分に検討されることをおすすめします。