シックスシグマとは?品質管理のフレームワークをわかりやすく解説

品質管理は不良品の発生や品質の低下、それに伴うクレームやトラブルを防ぐための重要な取り組みです。しかし、「具体的にどのように品質を改善すればいいのか?」と悩まれているご担当者様もいるでしょう。そこで本記事では、品質管理の基礎知識として、シックスシグマの概念と手法をわかりやすく解説します。

シックスシグマとは

シックスシグマは、品質管理を効率的に行うためのフレームワークです。1980年代にアメリカのモトローラ社の技術者ビル・スミス氏によって開発されました。その後、General Electric Company(以降は、「GE」と言います。)がこの手法を導入し、大成功を収めたことで世界中に広まりました。

シックスシグマの名前は、統計学における「σ(シグマ)」に由来します。これは「ばらつき」を示す標準偏差の記号です。シグマレベルが大きくなるほど、ばらつきが小さくなり、品質が安定していることを示します。シグマレベルごとの欠陥・不良の発生率は以下のとおりです。

シグマレベル100万回当たりの欠陥・不良の発生回数
690,000回
308,537回
66,807回
6,210回
233回
3.4回

シグマレベルが示すように、シックスシグマは「100万回当たりの欠陥・不良の発生を3.4回以下に抑える」という、非常に高い品質目標を達成するために開発された手法です。

ただし、すべての企業が必ずしも6σを目指す必要性はありません。シックスシグマを導入する際には、自社の業種や製品の特性、求められる品質などを考慮して適切な目標を設定することが大切です。

シックスシグマの目的

シックスシグマは、「業務品質の安定」と「顧客満足度の向上」が主な目的です。そのため、業務改善による品質の向上に加えて、顧客の声を取り入れることが大きな特徴です。また、これらの目的を達成することで、競争力や企業価値の向上、コスト削減といったメリットもあります。

シックスシグマの原則

シックスシグマはその目的から、次の4つの原則を基に実践することが大切です。

・顧客の声を重要視する

・プロセスに焦点を当てる

・データに基づく決定を行う

・組織全体で行う

各原則について解説します。

顧客の声を重要視する

シックスシグマで顧客満足度を高めるには、顧客の不満やニーズを正確に把握することが重要です。そのため、実際の顧客の声を積極的に収集する必要があります。具体的には、アンケートやメール、SNSなどを通じて、不満や要望といった意見を集めます。これらの情報を基に、優先的に取り組むべき課題を明確にすることで、効率的な改善活動が可能です。

プロセスに焦点を当てる

シックスシグマでは品質のばらつきを低減するために、プロセスに焦点を当てることが大切です。プロセスを詳細に分析し、継続的に改善を図ることで大きな結果につながります。

データに基づく決定を行う

業務改善の意思決定を行う際は、感覚や経験を重要視するのではなく、データを分析して判断することが大切です。客観的なデータを分析することで、プロセスの現状を正確に把握し、問題点を捉えることができるためです。

組織全体で行う

シックスシグマで効果を上げるには、組織全体で行うことが大切です。複数の部門が参加することで、多角的な視点からプロセスに問題がないかを検討できるためです。ただし、参加人数が多いと、かえって課題を増やすリスクもあります。そのため、参加者にはシックスシグマの手法をあらかじめ教育しておくことも重要なポイントです。

シックスシグマの手法(DMAIC)

シックスシグマの手法は、「DMAIC(ディーマイク)」と呼ばれる手順で行います。「DMAIC」とは、定義・測定・分析・改善・管理の5つのステップのことです。ここでは、各ステップについて解説します。

ステップ① D:定義(Define)

最初のステップは課題を明確にし、達成すべき目標を定義することです。そのためには顧客の声に耳を傾け、不満や要望といった意見を基に、プロジェクトの方向性を決めます。例えば、「不良品の発生率を0.1%以内に抑える」や「5日以内に配達する割合を99%以上にする」といった目標が考えられます。このステップでは、具体的で測定可能な目標を設定することがポイントです。

ステップ② M:測定(Measure)

現状のプロセスを正確に分析するために、客観的なデータを収集します。例えば、欠陥・不良品の発生率やクレームの件数などです。

また、この際に先入観を持ってデータを集めると、偏った結果になる恐れがあります。そのため、中立的な視点でデータを収集することが大切です。また、誤差の影響を最小限に抑えるためには、一定量のデータを集めることが求められます。

ステップ③ A:分析(Analyze)

分析のステップでは、収集したデータを基にプロセスの問題点を明確にします。この際、データを表やグラフに可視化することで、問題点を見つけやすくなります。重要なのは、プロセスに焦点を当て、根本的な問題点を特定することです。

ステップ④ I:改善(Improve)

改善のステップでは、問題のあるプロセスに対して改善を行います。複数の改善策がある場合は、コストパフォーマンスを考慮して実施する施策を検討します。また、改善策を実施すると、別の問題が発生することもあるので注意が必要です。

ステップ⑤ C:管理(Control)

最後に、改善したプロセスが継続されるように管理を行います。具体的には従業員への教育や業務プロセスの標準化です。また、この手順では改善した結果を継続的にモニタリングして、正しく機能しているかを確認するのも重要なポイントです。

シックスシグマの成功事例

シックスシグマは1980年代に開発されて以来、多くの企業に採用され、品質管理の向上に大きく貢献してきました。今回は、その中から成功事例として、GEと株式会社東芝の取り組みを紹介します。

GE

    出典:GE

GEは、アメリカに本社を置く航空エンジンメーカーで、シックスシグマを世界に広めた先駆的な企業としても知られています。1990年代に、シックスシグマを活用した経営改善に取り組んだ同社は、導入から3年目で3億ドル以上、1999年には1年間で15億ドル以上の経費削減を実現しました。当時のCEO(最高経営責任者)はジャック・ウェルチ氏で、GEを大きく成長させた功績から、「伝説の経営者」とも称されています。

株式会社東芝

    出典:株式会社東芝

株式会社東芝は、電子機器やデジタルソリューションなどを展開する日本を代表する電機メーカーです。同社は1999年に、シックスシグマを取り入れたMI(マネジメント・イノベーション)と呼ばれる経営改革を開始しました。最初の3年間で50,000プロジェクト以上を開始し、2001年度だけでも約2,600億円の成果を生み出すことに成功しました。このように大きな成果を上げたシックスシグマの手法は、現在でも同社の品質管理の基盤となっています。

参考:本脇喜博「東芝のMI(Management Innovation)運動

品質管理や顧客満足度の向上ならシックスシグマ

品質管理は、品質のばらつきをなくすことで、顧客満足度や生産性の向上につながります。その品質管理を効率的にできるフレームワークとして、シックスシグマは世界中の多くの企業に導入されています。品質管理や顧客満足度にお悩みのご担当者様は、この機会にシックスシグマの導入を検討してみてはいかがでしょうか。