アルムナイ採用とは?似た言葉との違いやメリット・デメリットを解説

アルムナイ採用は、一度退職した従業員を再雇用する採用方法です。少子高齢化を背景に人材確保が難しくなっていることから、注目を集めています。本記事は人材確保に悩んでいるビジネスパーソンに向けて、似た言葉との違いやメリット・デメリット、事例を紹介します。

Contents

アルムナイ採用とは

アルムナイ(alumni)は、英語で「卒業生」や「同級生」を意味する言葉で、アルムナイ採用は元従業員を再雇用することです。人材確保の1つの方法として注目されており、多くの企業でアルムナイネットワークの構築やアルムナイ制度の導入といった動きが広がっています。また、役職経験者は好待遇で採用されるケースがあるため、元従業員にもメリットがあります。

※アルムナイネットワークは、元従業員・従業員・企業が関係を持続するためのコミュニティのことです。

※アルムナイ制度は、元従業員を再び雇用するための制度のことです。

似た言葉

アルムナイ採用と似た言葉が複数あるため、「区別しにくい」と感じる方もいるでしょう。そこで、3つの言葉との違いを解説します。

カムバック採用との違い

カムバック採用は、一度退職した従業員を再び雇用(カムバック)することです。つまり、アルムナイ採用と同じ意味で使われています。

再雇用との違い

再雇用は、定年退職した従業員を再雇用することです。対象が定年退職者に限られるものの、従業員を再雇用するため、アルムナイ採用の1つと言えます。

リファラル採用との違い

リファラル採用は、自社の従業員から友人や知人を紹介してもらい採用する手法です。アルムナイ採用との違いは、対象の人材が自社の業務をした経験がないことです。

アルムナイ採用のメリット

アルムナイ採用は、企業側に4つのメリットがあります。各メリットについて詳しく解説します。

メリット① 即戦力を採用できる

アルムナイ採用のメリットは、即戦力を確保できることです。元従業員は企業風土や業務内容を理解しているため、スムーズに業務を開始できる可能性が高いためです。一方、一般的な方法で採用した場合は、人材育成にリソースが必要になったり、業務内容を把握するまでに時間がかかったりします。そのため、アルムナイ採用は、人手不足の際に効果的な採用方法と言えます。

メリット② 採用のミスマッチを防げる

企業側・元従業員のどちらも双方に理解があるため、採用のミスマッチが起こりにくいのがメリットです。元従業員であれば、入社してから「こんなはずではなかった」と思うことが少ないでしょう。反対に、企業側も「どのような人材かわからない」といった不安がないため、安心して採用できます。

メリット③ 新たな知識や価値観を取り入れられる

アルムナイ採用は、別の職場や職種を経験した元従業員を再雇用することで、新たな知識や価値観を社内に取り入れられるのがメリットです。これまでにはなかったアイデアが生まれるなど、イノベーションを促進する効果も期待できます。

メリット④ 教育費用を削減できる

元従業員はすでに教育を終えていることが多いため、新人の採用と比較して、研修などでかかる教育費用を削減できます。先輩職員がマンツーマンで指導するOJTも必要ない可能性があるため、教育担当者のリソースを業務に集中できるのもメリットです。

アルムナイ採用のデメリット

アルムナイ採用は、メリットばかりではなくデメリットもあります。導入する前にデメリットについても押さえておきましょう。

デメリット① 既存の従業員が不満に感じる可能性がある

アルムナイ採用をすると問題となるのは、既存の従業員が不満に感じる可能性があることです。例えば、元従業員が昇進して戻ってきたり、好待遇で迎えられたりすると既存の従業員のモチベーションが低下するかもしれません。社内の雰囲気が悪化しないように、元従業員の待遇は慎重に検討しましょう。

デメリット② 退職のハードルを下げるリスクがある

アルムナイ採用を導入すると、退職のハードルが下がり退職率が高まるリスクがあります。既存の従業員が、「一度やめてもすぐに戻れる」や「一度退職して戻ってきたほうが好待遇になるかもしれない」と思う可能性があるためです。この点からも元従業員を好待遇で迎える際は、慎重に検討する必要があります。

デメリット③ 制度設計の必要がある

アルムナイ採用を導入する際、採用基準や待遇などの制度設計が必要です。制度設計や受け入れ体制を構築するのに手間がかかるのが、アルムナイ採用のデメリットと言えます。

アルムナイ採用のやり方

人材確保のためにアルムナイ採用を検討している方で、「やり方を知りたい」と思っている方もいるでしょう。そこで、ここではアルムナイ採用のやり方を解説します。

手順① 制度設計をする

始めに、どのような人材を採用するのかの選考基準を明確にします。例えば、年齢やポジション、退職前の評価、年収などです。また、採用後の待遇などの制度設計もします。既存の従業員と比較して不公平にならないような配慮が必要です。

手順② アルムナイネットワークを構築する

次に、元従業員とのつながりを作るために、アルムナイネットワークを構築します。例えば、SNSグループの活用や自社プラットフォームの開発などです。

手順③ 元従業員向けに情報を発信する

アルムナイネットワークを活用して、元従業員向けに自社の現状について情報を発信します。特に、アルムナイ採用をしていると周知することが大切です。

手順④ アルムナイ採用をする

元従業員からの応募があり、選考基準に合致すればアルムナイ採用をします。この際、労働条件や待遇などについて、細かく確認することが大切です。

手順⑤ フォローアップをする

戻ってきた元従業員が不安を抱えていたり、退職後から事業内容や仕事の進め方が変わっていたりする場合があります。そのため、安心して働けるようになるまで、フォローアップが必要です。

アルムナイ採用を導入した企業事例

大手日本企業の中にもアルムナイ採用を導入した企業が多くあります。その中から、2社の取組事例を紹介します。

トヨタ自動車株式会社

トヨタ自動車株式会社では、自己都合退職した元従業員を対象に、アルムナイ採用に取り組んでいます。具体的には、専用のアルムナイネットワーク(アルムナイコミュニティ)を構築し、元従業員・従業員が自由につながる場所を提供しています。元従業員・従業員が安心して利用できるように、トヨタ自動車株式会社が公式にアルムナイネットワークを運営しているのが特徴です。

参考:トヨタ自動車株式会社「アルムナイ採用

パナソニックグループ

パナソニックグループは、結婚や出産などのやむをえない理由や転職・留学などのキャリアアップを理由に退職された方を対象に、再就職制度を拡大しています。具体的には、社員再就職制度やアルムナイ採用の受け入れ、アルムナイネットワーク「パナソニックグループ・アルムナイコミュニティ」の構築があげられます。

参考:パナソニックグループ「A Better Career

アルムナイ採用で即戦力を確保しよう

アルムナイ採用は、一度退職した元従業員を再雇用する採用方法です。導入する大手企業も増えており、注目を集めています。「人手不足で即戦力を確保したい」という経営者様は、この機会にアルムナイ採用を検討してみてはいかがでしょうか。