MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)とは?必要性と作り方を解説

MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)は企業の方向性を示す重要な指針で、多くの企業が策定しています。しかし、「MVVはなぜ必要?」や「作り方を知りたい」といった疑問を持つ経営者様もいらっしゃるでしょう。そこで、本記事ではMVVの意味や策定する必要性、作り方、事例をわかりやすく紹介します。

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MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)とは

MVVは「Mission(ミッション)」「Vision(ビジョン)」「Value(バリュー)」の頭文字を取った言葉です。この概念は企業の方向性を明文化したもので、アメリカの経済学者のピーター・F・ドラッカー氏によって提唱されました。同氏は、「マネジメント」や「経営経済学」を開発した人物で、マネジメントの父とも呼ばれています。MVVは3つの要素で構成され、各要素の内容は次のとおりです。

Mission(ミッション)

Missionとは、企業が社会に対して果たすべき使命や存在意義です。企業の在り方や社会に対してどのような価値を提供するのかなどを明文化したもので、企業理念や経営理念が該当します。Missionを決めることで、企業の存在理由や社会的な価値を社内外に示すことができます。

Vision(ビジョン)

Visionは企業の理想像のことで、Missionを実現するためにどのような組織や状況になるべきか、どのような未来を創造すべきかを明文化したものです。

Value(バリュー)

Valueは、MissionやVisionを実現するための行動指針や行動基準です。具体的にどのような行動をすればいいか、社員それぞれに何を求めているかなどを明文化したものです。従業員が日々の行動や判断する際の基準になります。

MVVを策定する必要性

MVVは「なぜ必要なのか?」という疑問を持つ方もいるかもしれません。そこで、MVVを策定する必要性について解説します。

ブレない経営判断に役立つ

MVVを策定することで、ブレない経営判断に役立ちます。これは、MVVが判断基準となり、企業が目指す方向に合致しているかどうかで判断できるためです。言い換えると、会社の本来の目的や価値から外れた経営判断をするのを防ぐことができます。

一体感のある企業経営がしやすくなる

MVVにより従業員が会社の価値観を共有することで、一体感のある企業経営がしやすくなります。すると、生産性の向上や業務の円滑化などが期待できるでしょう。

従業員のエンゲージメント向上に役立つ

MVVは従業員のエンゲージメント向上にも貢献します。これは従業員が同じ目標に向かって協力することで、チームワークの強化やコミュニケーションの増加が期待できるからです。エンゲージメントが向上することで、離職率の低下も期待できます。なお、エンゲージメントとは、会社への愛着や思い入れを指す言葉です。

企業文化にマッチした人材を採用できる

MVVは採用活動においても重要な役割を果たします。会社の方向性を明確に示すことで、それに共感する人材を集めやすくなるからです。採用担当者にとっても人材の採用基準となるため、企業文化にマッチした人材を採用しやすくなります。

MVVの作り方

MVVを策定する際は、次の5つのステップを踏むことが大切です。それぞれのステップについて解説します。

ステップ① 現状を把握する

最初のステップは、自社の現状を把握することです。市場環境や強みや弱みを分析し、置かれている立ち位置を明確にします。このステップは、会社の存在理由やどのような価値を提供するのかを検討するのに役立ちます。

ステップ② ステークホルダーの意見を収集する

次に、従業員や投資家、地域住民といったステークホルダーの意見を収集します。どのような価値を求められているのかを理解するためです。ステークホルダーの意見を参考にすることで、企業に期待されている価値をMVVに反映させることができます。

ステップ③ Missionを策定する

3つ目のステップは、Missionの策定です。ステップ①とステップ②の情報をもとに、企業が存在する理由や目的を明文化します。Missionを策定する際は、簡潔でわかりやすい表現を心がけることが大切です。

ステップ④ Visionを策定する

Missionが定まったら、それを実現するためのVisionを検討します。Visionは中長期の目標であり、企業が目指す理想的な未来像です。例えば「DXにより業務効率を10%改善する」や「3年以内にシェア1位を獲得する」など、具体的な内容を設定します。Visionを策定する際は、数年で達成できる内容にすることが大切です。あまりに実現可能性が低いと従業員のモチベーションが下がるだけではなく、達成できなければステークホルダーからの信頼を失うためです。

ステップ⑤ Valueを策定する

最後に、具体的な行動指針としてValueを策定します。例えば、「地域社会への貢献」や「従業員の安全第一」などです。企業の特徴や理念を反映した内容に設定することで、企業全体の行動が統一され、一体感が生まれます。

MVVを浸透させるための方法

MVVは策定するだけでは十分な効果を発揮しません。一体感のある行動につなげるためには、組織全体でその意義を共有し、従業員やステークホルダーに浸透させることが不可欠です。しかし、MVVの浸透が進まずに悩む企業も少なくありません。ここでは、策定したMVVを効果的に浸透させるための方法を紹介します。

わかりやすい内容にする

MVVを浸透させる第一歩は、その内容が従業員やステークホルダーにとって明確で理解しやすいものになっているかを確認することです。例えば、以下のような課題がある場合は浸透が進まない可能性があります。

  • 文言が抽象的すぎて、具体的な行動に結びつかない。
  • 多くの内容を詰め込みすぎて、何が最も重要なのかわからない。

このような場合は、MVVの表現を見直し、シンプルでわかりやすい内容に修正することが必要です。

社員研修を活用する

MVVを浸透させる効果的な手段として、社員研修を活用する方法があります。例えば、次のとおりです。

新人研修:MVVの策定した背景や目的を伝える。

管理職研修:MVVに基づいた具体的な役割を管理職に求める。

このように社員研修を通して、MVVの重要性を一人ひとりに伝えることで、直接浸透させることができます。

MVVに沿った評価制度にする

MVVの浸透には、評価制度と連動させることが有効です。MVVを体現した従業員を評価する基準を設けることで、従業員がMVVを意識するようになるためです。また、評価基準を明確にすることで、モチベーションの向上や一体感ある企業文化の醸成といった効果も期待できます。

積極的に情報を発信する

MVVを浸透させるには、従業員やステークホルダーに対して積極的な情報発信が必要です。例えば、社内報やメール配信、朝礼、会議で周知するなどです。社内外で繰り返し発言することで、MVVが浸透していきます。ここで大切なポイントは、記憶が薄れないように定期的に繰り返し発信することです。

MVVの事例

MVVを策定する際の参考として、日本国内の事例を紹介します。

トヨタ自動車株式会社

トヨタ自動車株式会社のMVV「トヨタフィロソフィー」は以下のとおりです。

  • Mission:わたしたちは、幸せを量産する。
  • Vision:可動性を社会の可能性に変える。
  • Value:トヨタウェイ

ソフトとハードを融合し、パートナーとともにトヨタウェイという唯一無二の価値を生み出す。

引用:トヨタ自動車株式会社「トヨタフィロソフィー

トヨタ自動車株式会社では、創業者の考えをまとめた「豊田綱領」を企業理念の頂点に置き、その実現に向けてMVVを策定しているのが特徴です。

株式会社 日立製作所

株式会社 日立製作所のMVV「日立グループ・アイデンティティ」は以下のとおりです。

  • Mission:優れた自主技術・製品の開発を通じて社会に貢献する
  • Vision:日立は、社会が直面する課題にイノベーションで応えます。優れたチームワークとグローバル市場での豊富な経験によって、活気あふれる世界をめざします
  • Value:和・誠・開拓者精神

引用:株式会社 日立製作所「日立グループ・アイデンティティ

日立グループ・アイデンティティは創業者の小平浪平氏の企業理念を踏まえ、日立グループの次なる成長に向けて策定されました。

経済産業省

MVVを策定しているのは企業だけとは限りません。組織運営においても有効なため、行政機関でも活用している事例があります。ここでは、経済産業省のMVVを紹介します。

  • Mission:未来に誇れる日本をつくる。
  • Vision:つながりを力に、進化し続ける。
  • Value

本質的な課題に挑戦する。

自由に個の力を発揮する。

多様な力をかけ合わせる。

引用:経済産業省「経済産業省のMVV (ミッション・ビジョン・バリューズ )

MVVで一体感のある企業経営をしよう

MVVは組織全体に浸透させることで、従業員のモチベーションやエンゲージメントの向上、離職率の低下など多くのメリットがあります。日本の多くの大手企業も取り入れており、持続的な成長に役立てています。もし、まだ策定していないのであれば、この機会にMVVの策定を検討してみてはいかがでしょうか。