カテゴリーエントリーポイントとは?基礎知識と見つけ方

ビジネスパーソンであれば、自社の商品やサービスをより多くの消費者に選んでほしいと考えるのは当然のことです。その願いを実現するために重要なのは、「カテゴリーエントリーポイント」を増やすことです。しかし、「カテゴリーエントリーポイントって何?」「どうやって増やしたらいいの?」と疑問を持つ方もいらっしゃるでしょう。 

本記事では、カテゴリーエントリーポイントの基礎知識やメリット、見つけ方をわかりやすく解説します。売上アップや新規顧客の獲得に課題を感じているビジネスパーソンは、ぜひ参考にしてください。 

Contents

カテゴリーエントリーポイントとは? 

カテゴリーエントリーポイント(Category Entry Point)とは、消費者が商品を購入するのにカテゴリーや特定のブランドを想起するきっかけです。略してCEPと呼ばれることもあります。 

例えば、風呂上がりに「ビールが飲みたい」と感じる人は、「アサヒスーパードライ」や「一番搾り」などのように特定のブランドを思い浮かべるでしょう。他にも暑い日には、炭酸飲料の「コーラ」や「サイダー」を飲みたいと思うかもしれません。 

このように特定の状況(風呂上がり)がカテゴリー(ビール)を想起させ、その中の特定のブランド(アサヒスーパードライや一番搾り)の購買意欲を高めます。この特定の状況をカテゴリーエントリーポイントと呼びます。 

エボークトセットとの関係性 

カテゴリーエントリーポイントを語る上で、欠かせないキーワードはエボークトセット(Evoked Set)です。 

エボークトセットとは、日本語で「想起集合」の意味で、具体的には購入を検討しても良いとして頭の中で候補に上げるブランドの集合体です。先の例で言えば、風呂上がりに「ビールを飲みたい」と思うと、頭の中には「アサヒスーパードライ」「一番搾り」「生搾り」など複数のブランドがよぎるでしょう。この複数のブランドがエボークトセットです。 

ほとんどの人は、このエボークトセットの中から気分やシチュエーションに合わせて購入する商品を決定します。つまり、エボークトセットの中に自社ブランドが入っていなければ、消費者の選択肢に入っていないことになります。 

そして、エボークトセットには順位があり、上位ほど購入する傾向が強く、すぐに思い浮かびます。そのため、カテゴリーエントリーポイントを増やす際は、同時にエボークトセットの上位に位置できるかを検討することが大切です。 

カテゴリーエントリーポイントを増やすメリット 

カテゴリーエントリーポイントを増やすことは、企業やブランドにとって重要な戦略です。なぜなら、次のようなメリットがあるからです。 

顧客との接点が増えて売上アップにつながる 

カテゴリーエントリーポイントが増えると、消費者がブランドや商品を想起する場面が増加します。すると、顧客との接点が増えて以下の効果が期待できます。 

  • 消費者は日常生活や特定の課題で自社ブランドを利用する機会が増える。 
  • ブランドとの関係性が強化され、リピーターやファンの育成につながる。 

このような効果により売上アップが期待できます。 

幅広い顧客をターゲットにできる 

新たなカテゴリーエントリーポイントを開拓することで、これまでアプローチできなかった層にも訴えられるようになります。例えば、あるスキンケア商品が「女性向け」だけではなく、「男性向け」という新たなカテゴリーエントリーポイントを作ったとしましょう。すると、この商品は男性もターゲットにできるようになり、販売機会が増加することから売上アップが期待できます。 

新たなカテゴリーに挑戦できる 

カテゴリーによっては、すでに想起されるブランドが固定化され、エボークトセットの上位獲得が難しい場合も少なくありません。そのような場合、カテゴリーエントリーポイントを増やすことで、新たなカテゴリー進出のチャンスとなります。さらに、競合が手を付けていないカテゴリーであれば、エボークトセットの上位を獲得するのも難しくありません。 

具体的な事例は、アサヒ飲料の「ワンダモーニングショット」です。アサヒ飲料は2002年に朝専用の缶コーヒーとして同ブランドを発表しました。この商品は「朝専用の缶コーヒー」という新しいカテゴリーを作ることに成功しました。その結果、「朝専用の缶コーヒー」と言えば「ワンダモーニングショット」というブランドイメージが定着しています。 

このように、新たなカテゴリーを作れるのもカテゴリーエントリーポイントを増やすメリットです。 

競争優位性を確保につながる 

カテゴリーエントリーポイントを多く持つことは、競争優位性を確保するのにも役立ちます。なぜなら、ニッチなカテゴリーでエボークトセットの上位を獲得できる可能性が高いためです。つまり、カテゴリーエントリーポイントを増やすことは競合企業との差別化につながり、それが自社ブランドの競争優位性の確保に貢献します。 

カテゴリーエントリーポイントを増やす際の注意点 

カテゴリーエントリーポイントを増やすことは、企業やブランドにとって多くのメリットがあります。しかし、やり方によっては逆効果になることもあるので注意が必要です。ここでは、カテゴリーエントリーポイントを増やす際の注意点を紹介します。 

増やし過ぎると専門性を失う可能性がある 

カテゴリーエントリーポイントは増やし過ぎると逆効果です。ブランドのイメージが増え過ぎると、漠然としたイメージが出来上がり誰にも響かない可能性があるためです。加えて、専門性を失うとニッチなカテゴリーで、エボークトセットの上位を獲得するのも難しくなるでしょう。このことから、カテゴリーエントリーポイントを増やす際は、「ブランドの方向性と一致しているか」や「専門性が低くならないか」に注意が必要です。 

顧客のニーズを把握する 

カテゴリーエントリーポイントを増やす際は、顧客のニーズを把握することが重要です。なぜなら、ニーズのない商品を提供しても失敗に終わる可能性が高いためです。そのため、市場調査や顧客アンケートなどにより、ターゲット層が何を求めているかを十分に把握する必要があります。 

新たなカテゴリーエントリーポイントの見つけ方 

新たなカテゴリーエントリーポイントを見つけるには、5W1Hのフレームワークが有効です。5W1Hのフレームワークとは、以下の6つの視点で検討する考え方です。 

  • When:いつ 
  • Where:どこで 
  • Who:誰が 
  • What:何を 
  • Why:なぜ 
  • How:どのように 

例えば、以下のように5W1Hで検討することで、新たなカテゴリーエントリーポイントの気づきを得ることができます。 

  • When:商品・サービスがいつ利用されているのか? 
  • Where:どこのカテゴリーで利用されているのか? 
  • Who:誰が主に利用しているのか? 
  • What:何のために(どのようなシーン)で利用しているのか? 
  • Why:なぜ使うのか? 
  • How:どのような目的で使っているのか? 

このようにして5W1Hで既存の商品・サービスを見返すことで、顧客一人ひとりの背景が見えてきます。そこからアイデアを広げることで、ニーズのあるカテゴリーエントリーポイントを見つけることができるでしょう。 

カテゴリーエントリーポイントを増やそう 

カテゴリーエントリーポイントは、商品やブランドが消費者に選ばれるための重要な接点です。適切に増やすことで売上アップや新たなターゲット層へのアプローチ、競争優位性の確保が期待できます。売上アップや新規顧客の獲得に課題を感じている方は、この機会にカテゴリーエントリーポイントを増やしてみてはいかがでしょうか。