2024年2月、Appleがゴーグル型XRヘッドセットの「Apple Vision Pro」をアメリカで発売し、50万円を超える価格や高い機能性などが日本においても話題になりました。
近年このように、ビジネスにおいてXR(クロスリアリティ)が注目される機会が増えています。しかし、ビジネスパーソンのなかには「今さら意味を聞けない」という方もいるでしょう。
そこで本記事では、XRの意味や事例をわかりやすく解説します。
Contents
XR(クロスリアリティ)とは?
XRとは、Cross Reality(クロスリアリティ)やExtended Reality(エクステンデッドリアリティ)の略で、現実世界と仮想世界を融合する技術の総称です。
VRゴーグルを装着してまるで仮想現実にいるかのような体験ができたり、スマホを利用して現実世界に仮想世界の情報を加えて表示したりできます。
XRの種類
XRの技術は、主に以下の4種類に分類できます。
- VR(仮想現実)
- AR(拡張現実)
- MR(複合現実)
- SR(代替現実)
XRがわかりにくい原因として、これらの技術が区別しにくいと感じている方もいるでしょう。そこで、この章では各種類についてわかりやすく紹介します。
VR(仮想現実)
VRとは、Virtual Reality(仮想現実)の略で、仮想世界の視覚情報を見ることができる技術です。
具体的にVRゴーグルや専用ゴーグルを装着し、CGや3Dカメラなどで生成した仮想世界の視覚情報をユーザーの動きに合わせて表示することで、まるで仮想世界にいるかのような体験ができます。
AR(拡張現実)
ARとは、Augmented Reality(拡張現実)の略で、メガネ型デバイスやスマホを活用し、現実世界の視覚情報に仮想世界の情報を加える技術です。
代表的なARサービスは「ポケモンGO」です。街のなかでポケモンを探せる楽しさから世界的なブームを巻き起こしました。
MR(複合現実)
MRとは、Mixed Reality(複合現実)のことで、ARのように仮想世界の情報を表示し、ユーザーが干渉できる技術です。具体的に、MRでは仮想世界のCG情報を操作したり、回転させたりできます。つまり、ARより高度な体験ができるXRがMRです。
SR(代替現実)
SRとは、Substitutional Reality(代替現実)の略で、現実世界の情報に過去の情報を組み込むことで、過去のできごとを再体験できる技術です。教育分野や医療分野での活用が期待されています。
XRの市場規模
株式会社グローバルインフォメーションの市場調査によると、XRの市場規模は2024年の1,055億ドルから2029年の4,723億ドルに急成長する見込みです。今後5年間で、約4.4倍に拡大することから、ビジネスチャンスの多い分野といえます。
XRが注目される背景
今後、市場規模が急速に拡大すると予測されるなか、XR事業への参入を検討している企業もいるでしょう。この章では、そのような企業の担当者に向けて、XRが注目される3つの背景を紹介します。
デバイスの進化
XRが注目される背景には、VRゴーグルやARデバイスの進化が挙げられます。
VRが本格的に注目されるきっかけとなったのは、2012年に世界初の家庭用向けVRゴーグルの「Oculus Rift」が登場したことです。そこから10年以上経った現在では、広視野・高画質・軽量化などで、さらなる没入体験が得られるようになっています。
またARデバイスにおいては、小型化や軽量化により使いやすく進化しています。このようなデバイスの進化により、得られる体験が向上したことで多くの企業が活用しているのです。
大容量の高速通信の実現
XRが注目される背景は、大容量の高速通信の実現です。
XRの技術は情報のやり取りが多いため、通信に負荷がかかりやすいというデメリットがありました。そのようななか、5Gの登場により、大容量の高速通信を実現することで、XRの活用シーンが増えたためです。
現在、5Gを超える6Gの開発が進められており、さらなる大容量・高速通信が実現できると期待されています。このことから、将来はXRの活用シーンがさらに増加すると予想できます。
※5Gとは、第5世代移動通信システムのことで、高速・大容量・低遅延・多数接続が特徴です。
リモートのコミュニケーションの普及
XRが注目される背景は、新型コロナウイルスの拡大により、リモートコミュニケーションが普及したことです。
自粛期間中はリモートワークやオンラインミーティングなどが推奨され、リモートコミュニケーションが活発に行われました。新型コロナウイルス感染の規制が緩和された現在も、遠隔地のコミュニケーションとして定着しています。
そのリモートコミュニケーションはXR技術を使えば、バーチャルオフィスなどに発展できるため、XRと相性が良いといえます。
つまり、XRの活用シーンが増えたことが注目される背景です。
※バーチャルオフィスとは、仮想世界のオフィスのことで、現実世界のオフィスのように他の社員と会話や会議ができるサービスのこと。
ビジネスにおけるXRの活用事例3選
XRをどのように事業のサービスに取り入れればよいか悩んでいる方もいるでしょう。そこでアイデアの参考として、国内企業の活用事例3選を紹介します。
NTT都市開発株式会社:パノラマオフィスツアー
出典:NTT都市開発株式会社
NTT都市開発株式会社はオフィスビルや商業施設、ホテルなどを運営する企業です。顧客への施設情報の提供を目的に、パノラマオフィスツアーを展開しています。
パノラマオフィスツアーとは、オフィスビルの内部の様子をVRで公開するサービスです。内部の様子をVRで公開することで、遠く離れた方にも施設の魅力を伝えられます。
またオフィスを利用している企業が求人の際に、パノラマオフィスツアーで応募者に内部の様子を公開するといった使い方もできます。
オフィスビルの価値をVRにて高めている事例といえるでしょう。
ニトリ:NITORI AR
出典:ニトリ
家具やインテリア用品を販売するニトリの事例は、自宅に家具を試し置きできる「NITORI AR」です。
「NITORI AR」は実際の自分のお部屋に、ニトリの家具をアプリ上で置いて、部屋の雰囲気や相性をチェックできます。
ニトリの店舗で気になった商品をアプリで確かめてから購入できるので、家具選びの悩みを解消するのに役立つサービスです。
株式会社Root:Agri-AR
出典:株式会社Root
株式会社Rootは農業のDX(デジタルトランスフォーメーション)開発事業を行う企業で、2024年4月にAR農作業補助アプリ「Agri-AR」の提供を開始しました。
Agri-ARは、農林水産省の支援を受けて開発が進められ、「平行直線ガイド」や「畝・苗シミュレーション」などのARを活用した11の機能が搭載されています。
これらの機能により、農地に平行直線を引く作業時間を4分の1に短縮するなど、農作業の効率化を実現しています。
将来性が期待されるXRを事業に取り入れよう
XRの市場規模は、今後5年間で急速な拡大が予測されています。そのため、XRを用いたサービスはさまざまな分野において将来性や可能性があるでしょう。
新規事業のアイデアを探している方は、この機会にXRを活用したサービスを検討してみてはいかがでしょうか。