顧客や市場のニーズの変化が早くなり、製品ライフサイクルが短くなっている現代では、新規事業開発や製品開発の重要性が高まっています。そこで、今回はビジネスパーソンに向けて、新規事業開発に役立つフレームワークのステージゲート法について詳しく解説します。
Contents
ステージゲート法とは
ステージゲート法とは、新規事業開発のプロセスの各段階(ステージ)で評価を行い、プロジェクトの進退を決定する手法です。ステージ後の評価をゲートと呼び、各ゲートでは事業の成功に必要な要件を満たすかをチェックして、事業を継続するか中止するかを判断します。
歴史
ステージゲート法は1986年に、カナダのロバート・G・クーパー教授が開発しました。そして、1987年にアメリカのモトローラ社が採用して、開発期間を半分に短縮したことで広く普及しました。また、同氏は2012年に、著書「ステージゲート法 製造業のためのイノベーション・マネジメント」を発表しています。
参考:金子 浩明・久保 裕史 「化学系ブティック型(領域特定型)日本企業へのステージゲート法適用の課題と提案」
ステージゲート法の6つのステージ
ステージゲート法では、新規事業開発のプロセスを6つのステージに分けます。そして、0~4、もしくは1~4のステージに対して、それぞれゲートを設けるのが一般的な使用方法です。ここでは、各ステージの内容について簡単に紹介します。
ステージ0:アイデア創出
アイデア創出は、その名のとおりプロジェクトのアイデアを出すステージです。アイデアの創出・検討にはブレインストーミングがよく利用されます。ブレインストーミングとは、複数人で意見を出し合い、新たなアイデアを創出する手法です。
ステージ1:スコーピング(初期調査)
スコーピングは、市場調査により顧客ニーズや市場動向を把握するステージです。競合他社の類似商品や自社の強みを分析し、収益性や実現可能性を評価します。
ステージ2:事業戦略の策定
事業戦略の策定は、事業や製品のコンセプトを設定し、事業計画を策定するステージです。より詳細な市場調査や競合分析を行い、ターゲットを明確にします。そして、開発プロセス全体の日程や必要なリソースなどを事業計画にまとめます。
ステージ3:開発
開発は、実際に製品やサービスのプロトタイプを開発するステージです。プロトタイプを開発することで、製造プロセスを確立します。
ステージ4:テストと検証
テストと検証は、プロトタイプを用いて製品やサービスを評価するステージです。消費者からフィードバックをもらう方法や、社内メンバーによる品質・性能のチェックなどがあります。このステージでは製品だけではなく、製造プロセスの評価も行います。
ステージ5:市場投入
市場投入は、製品やサービスを正式にリリースするステージです。リリース後は、マーケティングの実施や販売網の構築などを行います。
ゲートの評価項目
ステージ後の各ゲートでは、以下の項目を評価します。
- 戦略との適合性
- 市場規模の成長性や将来性
- 競争優位性
- 技術的実現性
- 目標達成度
- リスクとリターン
ゲートを通過した場合は次のステージに進みます。一方で、通過しなかった場合は、ステージを差し戻すか、プロジェクトを中止するかの判断が必要です。
ステージゲート法のメリット
ステージゲート法は、以下の3つのメリットがあります。
- 新規事業の成功率の向上
- 意思決定のプロセスの明確化
- リスクの低減
各メリットについて詳しく紹介します。
メリット① 新規事業の成功率の向上
1つ目のメリットは、新規事業の成功率を向上できることです。各ゲートで事業性を評価し、問題があると判断した場合は事業を中止するためです。また、各ゲートでしっかりと精査することで、品質や性能を高められるのも成功率の向上に役立ちます。
メリット② 意思決定のプロセスの明確化
2つ目のメリットは、プロジェクトの意思決定プロセスを明確化できることです。各ゲートの評価項目や基準を明確に設定することで、プロジェクトの進退の判断が迅速にできます。メンバーにとっても、基準が明確化されることで、次にすべきことがわかりやすくなります。また、プロジェクトを中止する際、理由を明確に伝えられるのもメリットと言えるでしょう。
メリット③ リスクの低減
3つ目のメリットは、リスクを低減できることです。早期の段階からプロジェクトの進退を判断することで、リソースを過剰に投入することを防げるためです。例えば、全てのアイデアに対してプロトタイプを開発すると、膨大なリソースが必要になるのはイメージしやすいでしょう。膨大なリソースを投入してしまうと、中止や失敗したときのリスクが大きくなります。このようなリスクを低減できるのがステージゲート法のメリットです。
ステージゲート法のデメリット
ステージゲート法を活用する際は、デメリットもあるので注意が必要です。この章では、2つのデメリットを紹介します。
デメリット① ゲートを通過させることに注力しやすくなる
ステージゲート法のデメリットは、プロジェクトを進めようとして、ゲートを通過させることに注力しやすくなることです。例えば、ゲートを通過させるための抜け道を探すなどです。このようにしてしまうと、事業性の低いアイデアがゲートを通過する可能性があります。
デメリット② ゲートを意識したアイデアばかり出やすくなる
ステージゲート法では、ゲートを通過しなければ事業化できません。そのため、メンバーが「どうせ通過できないからアイデアを出すのは無駄」と考えてしまうと、ゲートを意識したアイデアばかり出やすくなります。
ステージゲート法を活用する際のポイント
ステージゲート法にはデメリットもあるため、効果を高めるにはポイントを押さえた上で活用することが大切です。ここでは、活用する際の4つのポイントを紹介します。
ポイント① とにかくアイデアを量産する
ステージゲート法は、数多くのアイデアを開発プロセスに移行し、確度の高い事業を選定する手法です。そのため、より多くのアイデアを出せるかが重要なポイントです。ゲートを通過できないかもしれないとアイデアを絞るのではなく、とにかくアイデアを量産しましょう。
ポイント② ステージごとに段階的に投資する
最初のステージから多くのリソースを費やすとリスクが増大します。そこで、初期のステージでは投資するリソースを抑え、ステージが進むごとに投資を増やすようにするのがポイントです。
ポイント③ 各ゲートの評価軸を明確にする
ステージゲート法を活用するポイントは、各ゲートで行う評価内容や評価基準を明確化することです。反対に、アイデアごとに基準が曖昧になると、ゲートの役割が形骸化する恐れがあります。
ポイント④ ステージを前後することも検討する
1度ゲートを通過しても、問題や新たな検討事項が発生した場合は前のステージに戻ることも大切です。また、場合によっては、先のステージから進める方法も検討しましょう。
ステージゲート法で新規事業の確度を高めよう
ステージゲート法は、新規事業開発の確度を高められるフレームワークです。数多くのアイデアから事業性の高いものにリソースを配分できるのも特長です。先行きの不透明な時代だからこそ、ステージゲート法を活用して新規事業開発に取り組んでみてはいかがでしょうか。