リバースロジスティクスとは?企業が取り組むメリットと課題を解説

 オークファングループの試算によると、国内で不良在庫となり廃棄される製品は年間22兆円に上るとのことです。これらの廃棄される製品を減らし、持続可能な社会の実現やコストの削減につながるとして、注目されているのがリバースロジスティクスの取り組みです。

本記事ではリバースロジスティクスの概要や企業が取り組むメリット、課題について詳しく解説します。

参考:オークファングループ「ビジネス利用アカウント数 2023年9月 月次データに関するお知らせ

Contents

リバースロジスティクスとは

リバースロジスティクスとは、一般的な物流の流れとは反対に、消費者から生産者に向かって製品や資材が逆流する物流のことです。以下のようなケースが該当します。

  • 製品の返品
  • 製品の故障や不良による回収
  • 製品や製品のパーツ、原材料の再利用
  • 廃棄物の回収や再利用
  • 製品の修理 等

近年では、持続可能な社会の実現に向けて、環境に配慮した取り組みが広く行われています。そのような時代背景の中、廃棄される製品を減らすためにリバースロジスティクスの重要性が高まっています。

動脈物流と静脈物流の違い

リバースロジスティクスの別名は静脈物流です。物流を血流に例えた言い方で、生産者から消費者に流れる物流は動脈物流と呼びます。下の図は、動脈物流と静脈物流の違いのイメージ図です。この図からも、リバースロジスティクスをイメージできるでしょう。

企業がリバースロジスティクスに取り組むメリット

企業ができるリバースロジスティクスの取り組みは、リサイクル品や廃棄物の回収、返品された製品の再販体制の構築などです。この章では、企業がリバースロジスティクスに取り組むメリットについて紹介します。

メリット① 顧客満足度を高められる

リバースロジスティクスに取り組むメリットは、顧客満足度の向上が期待できることです。例えば、ECサイトでアパレルを販売しているケースを考えてみます。消費者は、ECサイトではどうしても服のサイズ感や肌触りなどを確認することができず、商品が届いたときに「思っていたのと違う」と感じることがあります。そこで、返品された製品を再販する体制を構築することで、消費者からの返品が受けやすくなり、顧客満足度の向上につながるでしょう。さらに、顧客満足度が高まることで、ファンやリピーターの獲得も期待できます。

メリット② 機会損失を削減できる

企業がリバースロジスティクスに取り組む2つ目のメリットは、販売の機会損失を削減できることです。例えば、消費者が商品を購入しようと思っていても、返品できないと不安があるため「購入をやめておこう」と思うかもしれません。そこで、リバースロジスティクスにより返品のしやすい体制を構築することで、消費者は安心して購入しやすくなります。

メリット③ 利益率を改善できる

企業がリバースロジスティクスに取り組む3つ目のメリットは、利益率の改善につながることです。返品された製品に対して、「どこがダメだったのか」「ニーズを満たすにはどうすれば良いのか」などと分析することで、より良い製品の開発に役立つためです。改良を繰り返すことで、消費者から選ばれる製品となり、利益率の改善が期待できます。

メリット④ ブランドイメージが向上する

企業がリバースロジスティクスに取り組む4つ目のメリットは、ブランドイメージの向上につながることです。廃棄物の削減することで、社会課題の解決に積極的であるとしてブランドイメージが向上するためです。これにより、ステークホルダーとも良好な関係を維持しやすくなるでしょう。

リバースロジスティクスの課題

企業がリバースロジスティクスに取り組む際にありがちな課題は、「発生する量の予測が難しい」と「返品コストや手間がかかる」の2つです。この章では、理解を深めるために2つの課題について詳しく解説します。

課題① 発生する量の予想が難しい

リバースロジスティクスの取り組みにおける課題の1つ目は、発生する量の予測が難しいことです。一般的な動脈物流であれば、販売データなどを参考にすることで、ある程度の予想ができます。しかし、「返品がいつ発生するのか」や「どれくらいの量が発生するのか」を予測するのは非常に困難です。予測が困難なため、リバースロジスティクスの計画を立案して実行するのは容易ではありません。

課題② 返品コストや手間がかかる

リバースロジスティクスの取り組みにおける課題の2つ目は、返品コストや手間がかかることです。返品が増えるほど、送料・従業員の人件費など、金銭的費用の増大を招く恐れがあります。さらに、返品されると検品などの手間もかかるため、人的リソースが不足する原因にもなりかねません。そのため、リバースロジスティクスに取り組む際には、返品コストや手間を抑える必要があります。

リバースロジスティクスの事例

リバースロジスティクスが重要視されていると言っても、どのような取り組みなのかイメージしにくい方もいるでしょう。そこで、この章では2つの事例を紹介します。

事例① Amazon

Amazonのリバースロジスティクスの事例は、返品手続きを簡単にできるようにしたことです。Amazonでは、商品到着から30日以内であれば原則として返品・交換が可能です。以前は、消費者都合の返品や交換はできませんでした。しかし、2024年2月10日以降は消費者都合による返品や交換が可能です。

このように返品の条件を緩和することで、消費者の安心につなげています。さらに、Amazonでは返品した商品が届く前に、返金を行う「即時返金」というサービスも展開しています。これらの取り組みにより顧客満足度を高めているのが、Amazonのリバースロジスティクスの特徴です。

事例② 株式会社セブン&アイ・ホールディングス

出典:株式会社セブン&アイ・ホールディングス「食品ロス・食品リサイクル対策

株式会社セブン&アイ・ホールディングスは、イトーヨーカドーやセブン-イレブンを運営する企業です。同社のグループ全体では、食料が売上の約6割を占めています。そして、食料を取り扱う上で切り離せないのは食品廃棄の問題です。同社においても食品廃棄物の削減を目的に、以下の目標を掲げています。

  • 食品リサイクル率を2030年に70%、2050年に100%にすること。
  • 食品廃棄物量を2030年に2013年比で50%削減、2050年に75%削減すること。

同社では廃棄されそうな賞味期限前の商品を回収し、フードバンク団体へ寄付したり、たい肥化したりしています。たい肥は同社が運営するセブンファームの農場で使用され、さらに、農場で栽培・収穫した農作物を店舗で販売しています。

つまり、リバースロジスティクスをうまく取り入れながら、環境循環型リサイクルを構築している事例です。この取り組みにより、2022年度の食品リサイクル率は52.4%でした。

※フードバンクとは、賞味期限が近い食品や規格外品を引き取り、必要としている方に配給する団体のことです。

リバースロジスティクスに注目しよう

日本では、不良在庫として廃棄される製品が年間22兆円に上っています。このような製品の廃棄を軽減するのに役立つのが、リバースロジスティクスの取り組みです。企業のメリットも多いため、この機会に取り組んでみましょう。また、注目されている分野のため、新規事業でビジネスチャンスを広げることも検討してみてはいかがでしょうか。