
新規事業を立ち上げる際は、斬新なアイデアを生み出すだけでなく、「どれだけ利益を確保できるか」という視点を持つことが重要です。たとえ市場規模が大きくても、価格競争が激しい業界では利益を十分に残せず、事業が伸び悩むケースも少なくありません。新規事業を成功へ導くためには、利益率を確保することが求められます。
そこで本記事では、新規事業を検討している方に向けて、利益率の高いビジネスや業界に共通する特徴をわかりやすく解説します。
新規事業で利益率が重要な理由
事業を成功へ導くためには、「どれだけ売れるか」だけでなく、「どれだけ利益を確保できるか」という視点を持つことが重要です。ここでは、特に新規事業において利益率が重要な理由を紹介します。
利益率が高い事業は成長を加速できる
利益率とは、売上高に対してどれだけ利益を残せているかを示す指標です。つまり、利益率が高い事業ほど、手元に資金を確保しやすいことを意味します。
新規事業では、この手元の資金が事業成長を左右します。十分な利益を確保できれば、広告出稿による顧客獲得の強化や人材採用、サービス改善などへ継続的に投資しやすいためです。こうした再投資を積み重ねることで、新規事業の成長を加速できます。
利益率は事業の健全性を示せる
利益率は、その事業が健全に運営できているかを判断する指標の一つです。たとえ売上規模が大きくても、十分な利益を確保できていなければ安定した事業運営は難しくなります。新規事業において高い利益率を維持することは、社内外からの信頼にも直結します。事業の健全性を客観的に示せれば、銀行からの融資や社内での追加予算が獲得しやすくなり、さらなる事業拡大への足がかりを築けます。持続的に成長可能なビジネスモデルを構築するためにも、利益率への意識は欠かせません。
利益率が低い事業は撤退リスクが高まる
利益率を意識すべきもう一つの理由は、低いままだと早期撤退のリスクが急激に高まるためです。 新規事業は立ち上げ初期のトラブルや市場環境の変化によって、売上が大きくブレやすいという側面があります。利益率が薄いビジネスモデルの場合、わずかな売上減少が致命傷となり、即座に赤字転落し、早期撤退に追い込まれるリスクがあります。 予期せぬリスクを抑え、事業を長命化させるためにも、あらかじめ高い利益率を設計しておくことが不可欠です。
利益率の高いビジネス・業界の具体例

利益率は、参入する市場や業界によっても大きく左右されます。中には、高い利益率を維持しやすい業界がある一方で、価格競争が激しく、利益を確保しづらい業界も存在するためです。そこでここでは、新規事業を検討する際の参考として、比較的高い利益率を実現しやすい代表的なビジネス・業界を紹介します。
IT・ソフトウェア業界
IT・ソフトウェア業界は、利益率の高い業界として知られています。その理由は、一度開発したシステムやサービスを複数の顧客へ提供できるため、売上が増えても追加コストが大きくなりにくい構造にあります。
また、SaaSをはじめとするサブスクリプション型の継続課金モデルとも相性が良く、安定した収益を確保しやすい点も強みです。継続利用によって収益を積み上げやすく、中長期的に高い利益率を維持しやすい業界です。
代表企業と営業利益率
- 株式会社キーエンス:51.9%(2025年3月期)
- 日本オラクル株式会社:33.0%(2025年5月期)
通信業界
通信業界は、インターネットやスマートフォンの普及を背景に、継続的な需要が見込まれる業界です。通信インフラの整備には大規模な投資が必要となる一方、一度顧客を獲得できれば、長期契約や月額課金によって安定した収益を確保しやすい特徴があります。
また近年は、通信サービスに加えて、金融・決済、ECプラットフォームなどの周辺領域へ事業を拡大する企業も増えています。既存顧客との接点を生かして多角的に収益化しやすい点も通信業界の強みです。
代表企業と営業利益率
- KDDI株式会社:18.1%(2026年3月期)
- NTT株式会社:11.8%(2025年3月期)
不動産業界
不動産業界は、保有する資産を活用して継続的な収益を得やすい点が特徴です。特に賃貸や不動産管理ビジネスは、毎月安定した収益を積み上げやすく、利益を継続的に確保しやすいビジネスモデルと言えます。
また不動産業界は、開発・売買仲介・賃貸・管理など複数の収益モデルを展開できる点も強みです。保有資産や顧客基盤を生かしながら多角的に収益化しやすく、利益を生み出しやすい業界です。
代表企業と営業利益率
- 住友不動産株式会社:26.8%(2025年3月期)
- 三井不動産株式会社:14.7%(2026年3月期)
バイオテクノロジー業界
バイオテクノロジー業界は、研究開発による高付加価値を生み出しやすい業界です。特許や独自技術が競争優位性につながるため、価格競争に巻き込まれにくいのが特徴です。特に医薬品分野では、一度ヒット商品を確立できると高い利益率を維持しやすく、中長期的に収益が安定しやすい傾向があります。
代表企業と営業利益率
- 中外製薬株式会社:47.6%(2025年12月期)
- 塩野義製薬株式会社:33.4%(2026年3月期)
化学工業
化学工業は、高機能材料や半導体関連素材など、高い技術力によって差別化しやすい業界です。特にBtoB領域では長期取引につながりやすく、安定的に収益を確保しやすい特徴があります。独自技術や製造ノウハウが参入障壁となるため、価格競争を回避しやすい点も利益率の高さにつながっています。
代表企業と営業利益率
- 信越化学工業株式会社:24.7%(2026年3月期)
- 東京応化工業株式会社:20.0%(2025年12月期)
利益率の高いビジネスモデルに共通する特徴

利益率の高い業界は数多く存在します。それらのビジネスには、共通する特徴が見られます。新規事業を検討する際は、こうした利益を生み出しやすい構造を押さえておくことが重要です。ここでは、利益率の高いビジネスに共通する3つの特徴を紹介します。
継続的に収益を得やすい
利益率の高いビジネスには、継続的に収益を得られる仕組みを持つケースが多く見られます。例えば、サブスクリプション型サービスやBtoBビジネスなどのように、一度顧客を獲得できれば、継続契約によって安定した売上を積み上げやすいビジネスモデルです。
このようなビジネスモデルの強みは、顧客獲得にかかったコストを中長期的に回収しやすい点にあります。継続利用によって収益を積み上げられるため、コスト回収後は利益を確保しやすく、高い利益率を実現しやすいビジネスモデルと言えます。
参入障壁が高い
利益率の高いビジネスには、参入障壁が高いケースも多く見られます。例えば、通信業界のように大規模な設備投資が必要な業界や、バイオテクノロジー業界・化学工業のように高度な技術力や研究開発力が求められる業界です。これらのビジネスモデルは、独自技術や専門ノウハウによって差別化しやすく、高付加価値を維持しやすい点が強みです。その結果、高い利益率につながっています。
売上増加に対してコストが増えにくい
利益率の高いビジネスに共通するのは、売上が増えてもコストが大きく増加しにくい点です。
例えば、IT・ソフトウェア業界では、一度開発したサービスを複数の顧客へ提供できるため、利用者が増えても追加コストがあまり発生しません。通信業界や化学工業も初期投資は大きい一方で、売上拡大に伴う追加コストを比較的抑えやすい特徴があります。
このように、売上増加に対してコストの増加を抑えられるビジネスは、利益を積み上げやすく、高い利益率を実現しやすくなります。
利益率を意識した市場選定が新規事業成功の鍵
利益率の高い業界の代表例としては、IT・ソフトウェア業界、通信業界、不動産業界、バイオテクノロジー業界、化学工業などが挙げられます。これらの業界には、「継続的に収益を得やすい」「参入障壁が高い」「売上増加に対してコストが増えにくい」といった共通する特徴があります。新規事業を検討する際は、市場の成長性だけでなく、「安定して利益を生み出せるか」という視点が大切です。
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