コロナ禍以降、世界ではダークストアを活用したビジネスモデルが注目されています。しかし、「ダークストアって何?」と、疑問に思う方もいるでしょう。
本記事ではそのような方に向けて、ダークストアの意味やメリット・デメリット、活用事例をわかりやすく紹介します。
Contents
ダークストアとは
ダークストアとは、消費者に開かれていない商品を陳列した店舗のことです。EコマースやQコマース(クイックコマース)の配送拠点として利用されています。消費者から注文があると、ダークストアから直接顧客に商品を配送するため、ラストワンマイルの配送拠点と言えます。※Eコマースはインターネット上における取引のことで、Qコマースは注文してから1時間程度で商品が届くEコマースのことです。※ラストワンマイルは、消費者に商品が届くまでの最後の配送区間のことです。
ネットスーパーとの違い
ダークストアと混同しやすい言葉にネットスーパーがあります。
ネットスーパーは、インターネットから注文すると既存のスーパーマーケットから配達されるビジネスモデルです。ラストワンマイルの配送拠点となる点は同じですが、消費者に開かれている点がダークストアと違います。
ダークストアが注目される背景
ダークストアは2020年以降、欧州・アメリカなどで急激に拡大しました。ここではダークストアが注目される背景について紹介します。
コロナ禍による実店舗の相次ぐ閉店
ダークストアに注目が集まったのは、コロナ禍に実店舗の閉店が相次いだことです。
株式会社東京商工リサーチの「全国企業倒産状況」によると、2023年の小売業において負債総額1,000万円以上で倒産した件数は939件で、前年の718件から大幅に増加しました。飲食業においても893件で、前年の522件から急増しています。
このように、小売店や飲食店の多くの店舗が閉店したことで、空き店舗の活用方法として注目されたのがダークストアです。
Qコマース(クイックコマース)の需要の増加
コロナ禍以降、Eコマースの需要が急増しました。経済産業省の調査によると、2022年の国内電子商取引市場規模は22兆7,449億円で前年より2兆円以上増加しています。
出典:経済産業省「電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました」
同調査によると、2022年の食料・飲料・酒類のEコマース市場規模は2兆7,505億円で、前年の2兆5,199億円から9.15%増となりました。
つまり、自粛生活などの生活様式の変化により、食料品もEコマースの注文が増えていることを表しています。しかし、野菜などの一部の食料品は配達に時間がかかると鮮度が落ちてしまいます。
そこで需要が高まっているのはQコマースです。
Qコマースは消費者の近くに配送拠点を配置することで、迅速な配達を実現しています。ダークストアが注目される背景は、そのQコマースと相性が良いためです。
ダークストアのメリット・デメリット
ダークストアを活用したビジネスモデルを把握するために、ここではメリット・デメリットについて紹介します。
●メリット・デメリット一覧
メリット | デメリット |
・既存店舗を有効活用できる ・注文から配達までの時間を短縮できる | ・品揃えや在庫数が物流倉庫より劣る ・適した空き店舗の確保が難しい ・人手の確保が難しい ・実店舗で販売しないため機会損失がある |
メリット① 既存店舗を有効活用できる
ダークストアのメリットは、閉鎖した既存店舗を有効活用できる点です。加えて、スーパーマーケットのように商品棚やバックヤードを備えている場合があります。このような設備を再利用できるのも、閉鎖した既存店舗を利用するメリットと言えます。
メリット② 注文から配達までの時間を短縮できる
ダークストアのメリットは、消費者の近くに配送拠点を配置することで、注文から配達までの時間を短縮できることです。とくにQコマースのように1時間程度で届けるためには、小規模の配送拠点が多数必要です。このような配送拠点を実現するには、ダークストアが適しており、大型の物流拠点では実現できないメリットと言えます。
デメリット① 品揃えや在庫数が物流倉庫より劣る
もともと小売業や飲食業などの店舗をダークストアに利用しているため、商品を保管できる量に限界があります。物流倉庫を利用したサービスと比較すると、品揃えや在庫数で劣ってしまうのがデメリットです。
デメリット② 適した空き店舗の確保が難しい
どの既存店舗でもダークストアに転用可能かと言えばそうではありません。配達拠点として利用するには、最低限以下の条件を満たす必要があります。
- 消費者が多く暮らすエリアにある
- 商品の出し入れがしやすいように1階にある
- 配達のための車やバイクなどの駐車スペースがある
上記の条件に加えて、車やバイクの出入りが激しくなるため、騒音などの近所への配慮も必要です。
ダークストアのデメリットは、これらの条件を満たす物件を探すのが簡単ではないことです。
デメリット③ 人手の確保が難しい
ダークストアを運営するには、配達ドライバーの確保が不可欠です。しかし、物流業界の人手不足は深刻です。実際に、トラック運転者の有効求人倍率は全職業平均よりも高い状態が長期間続いています。
出典:厚生労働省「統計からみるトラック運転者の仕事」
このような時代背景の中、人手の確保で問題となりやすいのがデメリットです。
デメリット④ 実店舗で販売しないため機会損失がある
ダークストアは消費者に開かれていないため、実店舗として商品を手に取って購入してもらうことができません。消費者が暮らすエリアにありながら、実店舗の強みを生かした販売方法ができないのは機会損失につながります。
ダークストアの活用事例
国内でダークストアを活用したサービスには、「OniGO(オニゴー)」と「SocToc(ソックトック)」があります。ここでは、活用事例として2つのサービス内容を紹介します。
活用事例①:OniGO(オニゴー)
出典:OniGO
OniGOは、一部の店舗にダークストアを活用した宅配スーパーです。一都三県を中心に63店舗を展開しています。2021年度は4店舗であったことから、近年急速に拡大しているサービスです。人気の秘密は、注文から最短20分という配達時間の短さです。
- OniGOが早く配送できる秘密
ダークストアにピッキング作業員が常駐しており、注文が入るとピッキングを開始します。同時にライダーが待機し、商品の梱包が完了するとすぐに配送される仕組みです。※ピッキングとは、出荷のするために商品をピックアップすること。
参考:PR TIMES「宅配スーパーOniGOがカバーエリアを大幅拡大、拠点数クイックコマースNo. 1へ」
活用事例②:SocToc(ソックトック)
SocTocは、コストコ専門のダークストア型ネットスーパーです。コストコで人気の食料品や日用品などを取り扱っています。
SocTocはコストコの商品をダークストアで保管し、コストコよりも2~3割程度高い値段設定で再販することで利益を上げています。特徴は、大容量のコストコの商品を小分けにして販売している点です。現在は、東京都の一部のエリアでサービスを展開しています。
参考:Business Insider Japan「コストコ専門のネット宅配ベンチャー起業した32歳、「少しずつ欲しい」叶えて年商100億円目指す」
ダークストアが定着するかに注目しよう
ダークストアは、コロナ禍以降に人々のライフスタイルが変化したことで注目を集めているビジネスモデルです。国内においてもダークストアを活用したサービスは展開されていますが、デメリットもあるため、アフターコロナで定着するかに注目してみましょう。