ビジネスモデルキャンバスとは?構成要素や書き方を解説

アビジネスモデルキャンバスは、以下のような場面で役立つフレームワークです。 

  • 新規事業の成功率を高めたい 
  • 既存事業のビジネスモデルを見直したい 
  • 競合企業の事業を分析したい 

本記事ではマーケティング初心者に向けて、ビジネスモデルキャンバスの構成要素や書き方、メリットをわかりやすく解説します。 

Contents

ビジネスモデルキャンバスとは? 

ビジネスモデルキャンバスとは、事業の構造を9つの要素で整理・可視化して、どの要素が重要かを分析するフレームワークです。 

アレックス・オスターワルダー氏とイヴ・ピニュール氏の著書「Business Model Generation」で提唱され、本書は世界で100万部以上の大ヒットを記録しました。その人気の高さから30言語に翻訳されています。 

ビジネスモデルキャンバスの特長は、自社や他社、既存事業、新規事業を問わず利用できる汎用性の高さです。例えば、以下のような用途で使用されています。 

  • 新規事業開発において、説得力のあるビジネスモデルを構築する 
  • 既存事業の顧客との関係性や収益の流れを把握する 
  • 競合他社のビジネスモデルで売上につながっている要素を可視化する 

このように様々な用途で活用できることから、世界中で利用されています。 

ビジネスモデルキャンバスの9つの要素と書き方 

ビジネスモデルキャンバスは、ワークシート上の9つの要素を全て記入して作成します。作り方はシンプルですが、効果的・効率的に活用するには順番が重要です。ここでは、9つの要素と書き方の例を記入する順番通りに紹介します。 

顧客セグメント 

顧客セグメントは、顧客が誰であるかを明確にする要素です。自社製品やサービスのターゲットのグループを具体的に書き出します。 

●書き方の例 

  • スキマ時間を活用して新たなことにチャレンジしたい専業主婦 
  • 人一倍、健康に気を使っている高齢者 
  • 製品の品質を高めたいメーカー 
  • スキルアップにより収入を増やしたい社会人 

価値提案 

価値提案は、顧客に対して「どのような製品・サービスを提供するのか」「顧客はどのような価値を得られるのか」を示す要素です。提供する製品やサービス内容に加えて、顧客が得られる価値を記載します。 

●書き方の例 

  • 自宅にいながら新たな資格を取得できる通信講座 
  • 高齢者が無理なく足腰を鍛えられる健康器具 
  • 品質が均一で扱いやすい原料 
  • 集中できるスペースを探している社会人向けのコワーキングスペース 

チャネル 

チャネルは、「顧客にどのようにアプローチするか」「どのようにして価値を届けるのか」を示す要素です。顧客に訴求する具体的な手段(タッチポイント)や販売チャネル、アフターフォローを記載します。 

●書き方の例 

  • ECサイト 
  • 実店舗 
  • Web広告への出稿 
  • サンプル提供 

顧客関係 

顧客関係は、顧客と関係を構築する方法を示す要素です。チャネルと混同しやすいですが、チャネルが手段で顧客関係が方法です。顧客関係の要素から、顧客との関係性の深度を推測できます。セルフサービスであれば浅く、会員制サービスであれば深いといった具合です。 

●書き方の例 

  • 販売員による対面での接客 
  • 電話での営業 
  • オンライン上の取引 
  • メールによるアフターサービス 
  • セルフサービス 

収益の流れ 

収益の流れは、顧客に製品やサービスを提供した対価として、「どのようにして顧客から収益を得るか」を示す要素です。顧客が料金を支払う名目や課金方法を記載します。 

●書き方の例 

  • 製品・サービスの代金 
  • 会費 
  • 月額使用料 
  • メンテナンス費用 
  • 現金 
  • クレジットカード 
  • キャッシュレス決済アプリ 

リソース 

リソースは、事業を展開するのに必要なリソースを示す要素です。人的資源や資金、設備、在庫、技術、ノウハウなどを記載します。 

●書き方の例 

  • 専門的な知識を持つ従業員 
  • 大量生産が可能な大規模な工場 
  • 知名度のある強力なブランド 
  • 迅速な配達が可能な物流インフラ 

主要活動 

主要活動は、自社の製品やサービスの価値を生み出すために不可欠な活動を示す要素です。リソースをどのように確保するのかを考慮するのもポイントです。 

●書き方の例 

  • モバイルアプリの開発 
  • トラックドライバーを募集して、配送インフラを構築 
  • マーケティングによる新規顧客獲得 
  • ECサイトの立ち上げ 

パートナーは、事業活動に関係する外部リソースを示す要素です。価値の提供までに関わるパートナー企業やサプライヤー、バイヤー、生産者などを記載します。 

パートナー 

●書き方の例 

  • グループ企業 
  • 運送業者 
  • 販売代理店 
  • 提携している大学の研究室 

コスト構造 

コスト構造は、事業を展開するのに必要なコストを示す要素です。主要活動やリソースの確保に必要な費用、パートナーへの支払いを記載します。固定費と変動費に分けて検討することで、全てのコストを洗い出しやすくなります。 

●書き方の例 

  • 人件費:(〇万円/年) 
  • 研究開発費:(〇万円/年) 
  • マーケティング費用:(〇万円/年) 

ビジネスモデルキャンバスのメリット 

ビジネスモデルキャンバスは、汎用性の高さから多種多様の事業の分析が可能です。ここでは、具体的に5つのメリットを紹介します。 

メリット① ビジネスモデルの全体像を把握できる 

ビジネスモデルキャンバスは、効率的にビジネスモデルの全体像を把握できるのがメリットです。収益に貢献している要素、あるいは要素間の関係性を把握するのに役立ちます。 

メリット② 関係者とビジネスモデルを共有できる 

ビジネスモデルキャンバスは、関係者間で情報を共有しやすいのがメリットです。事業の構造を1枚のワークシートに可視化できるためです。関係者で情報を共有することで、方向性を揃えるのに役立ちます。 

メリット③ 事業の改善点や可能性を検討できる 

ビジネスモデルキャンバスは、既存事業の改善点や可能性を検討できるのがメリットです。なぜなら、9つの要素を分析することで自社の強みや弱み、可能性やリスクを把握できるからです。そのため、「事業を改善したい」「収益性を高めたい」「競合他社との差別化を図りたい」といった場合に役立ちます。 

メリット④ ニーズに沿った事業を構築できる 

ビジネスモデルキャンバスは、顧客セグメントや価値提案の要素を最適化することで、顧客のニーズに沿った事業を構築できるのがメリットです。顧客のニーズを満たすことで、新規顧客獲得やサービスの継続的な利用といった効果が期待できるため、事業の収益性や成功率の向上につながります。 

メリット⑤ 競合他社の分析に応用できる 

ビジネスモデルキャンバスは、業種や企業の規模に関係なく使用できます。そのため、競合他社の分析にも応用できるのがメリットです。競合他社と自社のビジネスモデルを比較して、自社の競争力を高めるといった使い方もできます。 

ビジネスモデルキャンバスの3つのコツ 

ビジネスモデルキャンバスを使用して成功するには、コツを押さえておくことが大切です。ここでは、3つのコツを紹介します。 

作成後は社内で共有する 

ビジネスモデルキャンバスは、1枚のワークシートで事業を可視化できる便利なツールです。その特長を生かして、作成後は社内で事業の全体像を共有するのに使用しましょう。全社的にビジネスモデルの理解を深めることで、組織が一丸となり事業の成功を目指せます。 

各要素をシンプルにまとめる 

作成時のコツは、各要素をシンプルにまとめることです。なぜなら、各要素をあまりに細かく記入すると、視認性が悪くなるからです。社内で共有しやすいように、「理解しやすさ」かつ「見やすさ」を意識して各要素をまとめましょう。 

必要に応じて各要素を見直す 

ビジネスモデルキャンバスを活用する際のコツは、必要に応じて各要素を見直すことです。顧客のニーズや市場の変化などによって、各要素の内容が変わる可能性があるためです。競合品の発売や新商品の開発、収益の変化などがあれば、見直すタイミングと言えるでしょう。 

ビジネスモデルキャンバスを活用しよう 

ビジネスモデルキャンバスは2010年に発表された、比較的新しいフレームワークです。「事業の全体の構造を可視化できる」や「汎用性に優れている」などの利点から、世界中で活用されています。新規事業の開発や既存事業の改善、競合他社の事業分析を検討しているビジネスパーソンは、この機会にビジネスモデルキャンバスを活用してみてはいかがでしょうか。