アドバンテージマトリクスとは?事業戦略に役立つフレームワーク 

新規事業を立ち上げる際、多くのビジネスパーソンが直面するのは、「どの市場に参入すべきか」や「自社の強みをどのように生かすか」という課題でしょう。そのような際に役立つフレームワークが「アドバンテージマトリクス」です。本記事では、アドバンテージマトリクスの基本概念やメリット・デメリット、使い方をわかりやすく解説します。 

Contents

アドバンテージマトリクスとは? 

アドバンテージマトリクスとは、「競争要因の数が多いか少ないか」、「優位性構築の可能性が高いか低いか」によって事業を4つに分類するフレームワークです。このフレームワークを活用することで、事業の経済性を評価できます。また、既存事業だけではなく、新規事業の経済性を評価するのにも役立ちます。 

  • 競争要因とは 

競争要因とは、競合他社との優劣が決まる要素のことです。例えば、実店舗で考えると、「店舗の立地」「商品の品質」「サービス内容」などが該当します。競争要因の数が多いと競争が激しくなり、反対に数が少ないとサービスの優劣がつきやすくなります。 

  • 優位性構築の可能性とは 

優位性構築の可能性とは、競争市場において他社よりも有利な立場を築きやすいかです。具体的には、他社が真似しやすいかどうかで判断できます。真似しやすい事業は、他社よりも有利な立場を築きにくいので「低い」、反対に真似しにくい事業は、他社よりも有利な立場を築きやすいので「高い」と言えます。 

アドバンテージマトリクスにおける4つの事業タイプ 

アドバンテージマトリクスを用いた事業評価では、「競争要因の数」と「優位性構築の可能性」に基づき、事業を4つのタイプに分類します。その上で、とるべき戦略を検討します。そして、効果的な戦略の立案には、それぞれのタイプの特徴と有効な戦略を押さえておくことが不可欠です。ここでは、4つの事業タイプの特徴と有効な戦略を紹介します。 

特化型事業:専門性の高いニッチな事業 

特化型事業は、競争要因の数が多く、優位性構築の可能性が高い事業です。このタイプは、専門性が高くてニッチな産業によく見られます。代表例は、医薬品産業や航空宇宙産業です。このタイプに該当する事業は新規参入が難しい反面、成功すれば高い収益性が期待できます。 

●有効な戦略 

  • 継続した研究開発への投資を行い、優位性を維持する 
  • 高度な専門スキルを有する人材を確保する 
  • 事業拡大を推進する 
  • 特定の分野でシェア拡大を目指す 

規模型事業:規模を拡大すると収益性が上がる事業 

規模型事業は、競争要因の数が少なく、優位性構築の可能性が高い事業です。代表例は、日用品や製造業です。つまり、大量生産によりコストを下げることで収益性を高める事業が該当します。 

●有効な戦略 

  • 事業拡大を推進する 
  • 生産性を高めるために設備投資をする 
  • 資材の一括仕入れでコストを下げる 
  • 事業拡大できるように、認知度を高めてユーザーを増やす 
  • サプライチェーンを効率化する 

分散型事業:規模を拡大すると収益性が下がる事業 

分散型事業は、競争要因の数が多く、優位性構築の可能性が低い事業です。代表例として、地域密着型の美容室や喫茶店などが挙げられます。これらのビジネスモデルでは、事業規模を拡大するほど人件費や家賃などのコストが増えたり、供給過多になったりすることで収益を圧迫しやすいためです。 

●有効な戦略 

  • 無理な事業拡大を避け、適正な規模を維持する 
  • 独自の価値を打ち出し、競合との差別化を図る 

手詰まり型事業:縮小が見込まれる事業 

手詰まり型事業は、競争要因の数が少なく、優位性構築の可能性も低い事業です。代表例は、鉄鋼業です。このタイプの事業は市場の成長が期待できず、収益性も低いため場合によって撤退や縮小を検討する必要があります。また、収益化が困難なことから新規参入はおすすめできません。 

●有効な戦略 

  • 明確な撤退基準を設ける 
  • 特定の領域に特化させて特化型事業を目指す 

アドバンテージマトリクスのメリット・デメリット 

アドバンテージマトリクスは、事業の評価や戦略立案に役立つ一方で、課題も存在します。ここではアドバンテージマトリクスのメリット・デメリットについて解説します。 

メリット① 事業の競争力と経済性を評価できる 

アドバンテージマトリクスのメリットは、事業の競争力と経済性を客観的に評価できる点です。事業戦略の見直しや改善、リソース配分の最適化、事業の撤退の判断などに役立ちます。 

メリット② 効果的な事業戦略を立案できる 

アドバンテージマトリクスを活用して事業を分類することで、最適な事業戦略を立案できます。例えば、優位性構築の可能性が低い「分散型事業」では、専門性を高めることで収益性や安定性を高められるでしょう。このように、各タイプに応じた適切な戦略を選ぶことで、事業の成長が期待できます。 

メリット③ 競合他社との差別化 

アドバンテージマトリクスのメリットは、競合他社との差別化に役立つことです。自社の強みや弱みを把握することで、次のような対策が立案できるためです。 

  • 他社にはない価値を創造する 
  • 自社ブランドの競争力を強化する 

このような対策を実施することで、市場での優位性構築の可能性を高められるでしょう。 

デメリット① 必要なデータの取得が困難 

アドバンテージマトリクスには課題もあります。それは分析に必要なデータを取得するのが困難なことです。具体的には以下の3点が問題になります。 

  • 分析に必要な指標を特定するのが難しい 
  • 市場データや競合他社の情報が十分に揃わない 
  • 情報収集するための人的リソースが不足している 

このような問題がある場合は、調査会社への委託も一つの方法と言えます。 

アドバンテージマトリクスの使い方 

アドバンテージマトリクスは主に3つの使い方ができます。それぞれの方法について解説します。 

事業の分析と改善 

4つの事業タイプに分類して分析することで、効果的な改善方法を見つけることができます。例えば、競争が激しい市場では積極的な投資による競争力の強化が必要でしょう。反対に、成熟市場ではコスト削減が優先課題となります。このように、事業タイプに基づいた適切な改善方法を検討できます。 

自社事業の市場内における立ち位置の確認 

アドバンテージマトリクスは、自社事業の市場内における立ち位置を確認するのに使用できます。この使い方は、競合他社との差別化を図る上で重要です。競合企業の立ち位置と比較することで、効果的な事業の差別化を行えるためです。 

事業タイプの転換 

アドバンテージマトリクスで分類する4つの事業タイプは、別の事業タイプに転換を図ることも可能です。例えば、特化型事業を規模型事業に転換できれば、事業規模を拡大することでより大きな収益を上げられるでしょう。他にも分散型事業や手詰まり型事業では、特化型事業への転換を目指すのも一つの戦略です。 

アドバンテージマトリクスを基に事業戦略を立案しよう 

アドバンテージマトリクスは、事業の経済性を明確にし、最適な事業戦略を検討するのに役立つフレームワークです。自社の事業タイプを把握することで、適切なアプローチを選択しやすくなるため、収益性の向上や競合他社との差別化が期待できます。事業戦略に課題を感じている経営者様は、この機会にアドバンテージマトリクスの活用を検討してみてはいかがでしょうか。