
従来のマーケティングでは年齢や性別、年収などの属性でターゲットを絞って、訴求方法を検討するのが一般的でした。しかし、SNSの発達やライフスタイルの多様化などにより、属性だけではターゲットを適切に絞ることができなくなっています。
そこで、注目されているのがトライブマーケティングです。ここで、「トライブって何?」と思うビジネスパーソンもいらっしゃるでしょう。本記事ではそのような方に向けて、トライブマーケティングの意味や注目される背景、事例を紹介します。
Contents
トライブマーケティングとは
トライブ(Tribe)とは、英語で「種族・部族」を意味する言葉で、ビジネス用語では共通の趣味や嗜好を持つ集団のことです。そのため、トライブマーケティングとは、消費者の趣味や嗜好に焦点を当てたマーケティング手法を指します。
トライブマーケティングの具体例
トライブマーケティングに馴染みのない方にとっては、トライブがどのような集団なのかイメージしにくいでしょう。そこで、この章ではトライブの具体例を紹介します。
- サウナー
サウナーとは、サウナの愛好家を指す言葉です。「ととのう(心身が快調と感じる一種のトランス状態)」ために、サウナ・水風呂・休憩を繰り返すサウナ活動が流行しており、年齢・性別を問わずに愛好家がいます。そのため、サウナーはサウナという共通の趣味を持つトライブであると言えます。
- ソロキャンパー
ソロキャンパーは、一人でキャンプ(ソロキャンプ)を楽しむ人のことです。自然の中で自由な時間を過ごせるとして、多くの愛好家がいます。一般的なキャンプと異なる楽しみを求めているため、ソロキャンパーは1つのトライブと言えます。
- ミニマリスト
ミニマリストは、必要最低限の物で暮らすライフスタイルをする人のことです。無駄な買い物を減らせる、あるいは物が少ないため掃除がしやすいなどの理由から人気があります。このようにミニマリストは、同じ考え方・ライフスタイルを目指すトライブと言えます。
ペルソナマーケティングとの違い
マーケティングにおいて、よく使われる言葉は「ペルソナ」です。ペルソナとは、ターゲット像をイメージしやすいように、年齢や性別、地域などの属性を細かく設定した人物像です。
例えば、以下のようにターゲット像の属性を決定します。
年齢:35歳
性別:女性
地域:東京都練馬区
趣味:音楽鑑賞
休日の楽しみ:友人と音楽イベントへ出かけること
このように、ペルソナを具体的に設定し、顧客心理や顧客行動を推察して最適な施策を検討する手法がペルソナマーケティングです。
トライブマーケティングとペルソナマーケティングの違いは、ターゲットです。トライブマーケティングは実在する集団に対して、ペルソナマーケティングは架空のターゲット像をターゲットにしているという点が異なります。
トライブマーケティングが注目される背景

トライブマーケティングは特定のトライブに訴求し、トライブ内のコミュニケーションを促すことで、企業メッセージを拡散するのが主な手法です。そのため、トライブマーケティングが注目されるようになった背景は以下の2つが挙げられます。
- SNSの普及により、特定のトライブに訴求できるようになった
- ターゲットに企業メッセージを効果的に拡散できる
2つの背景について詳しく解説します。
SNSの普及により、特定のトライブに訴求できるようになった
1つ目の背景は、これまで難しかった特定の趣味や嗜好を持つトライブをグループ分けし、訴求できるようになったことです。具体的には、SNSのハッシュタグを使うことで、特定のトライブに訴求しやすくなります。先ほどの「サウナー」や「ソロキャンパー」などをハッシュタグに含めることで、それらに興味を持っている人が目にする可能性が高まるためです。
ハッシュタグとは、「#サウナー」「#ソロキャンパー」などのように、SNSの投稿を分類するために使われるキーワードやトピックのことです。他にも「#サウナーとつながりたい」のように、キーワードに意味を加えることもできます。
このようにSNSの普及により、特定のトライブに訴求できるようになったことで、トライブマーケティングが注目されています。
ターゲットに企業メッセージを効果的に拡散できる
2つ目の背景は、ターゲットに企業メッセージを効果的に拡散できることです。トライブマーケティングの特徴は、特定のグループに向けて情報を発信すると、そのメンバーが他のメンバーにも共有してくれることです。特に、SNSの普及によって誰もが簡単に情報を発信できる時代になった今、役立つ情報はトライブ内で広がりやすくなっています。この特性を生かすことで、ターゲットに効率良く情報を届けられるとして、トライブマーケティングが注目されています。
トライブマーケティングの手順
トライブマーケティングを実践するには、以下の3つの手順があります。
1. ターゲットとなるトライブを選定する
まずは、自社商品やサービスのターゲットとなるトライブの検討・選定です。
2. トライブに企業メッセージを発信する
次に、選定したトライブに向けて、SNSなどを介して企業メッセージやコンテンツを配信します。
3. 情報の拡散を促す
企業メッセージを受け取ったメンバーに、トライブ内の別のメンバーに情報を伝えることを促して拡散を図ります。
トライブマーケティングを実践する際のポイント

トライブマーケティングを実践する際、押さえておくべきポイントは以下の2つです。
- トライブの選び方
- 情報拡散の促し方
2つのポイントについて詳しく解説します。
トライブの選び方
重要なポイントの1つがトライブの選び方です。自社商品やサービスがどのようなトライブにアプローチすべきなのか、そのトライブはどのような体験を求めているかなどを検討しましょう。また、トライブの活動に熱心なほど、情報を拡散してくれる可能性が高まります。そのため、精力的に活動しているトライブかどうかも選定の際のポイントとなります。
情報拡散の促し方
2つ目のポイントは、情報拡散の促し方です。どのような情報なら拡散されやすいかを工夫することが重要です。例えば、メッセージを広めることでトライブ全体にプラスの影響があれば、自然と拡散されやすいでしょう。
トライブマーケティングの事例

出典:大塚製薬株式会社「サウナといえばイオンウォーター」
トライブマーケティングの事例として、大塚製薬株式会社のイオンウォーターが挙げられます。イオンウォーターは、汗をかくことで失われる水分やイオンを補給できる飲料水です。サウナとの相性が良く、公式サイトでも「サウナといえばイオンウォーター」とアピールしています。
また、2023年3月7日(サウナの日)には、「日々のヤなことをサウナでいい汗かいてスッキリさようならする」をコンセプトとした「サよウナらプロジェクト」で、3つの動画を配信しました。SNSで話題のアーティストを起用することで、2024年9月24日時点で合計再生数は30万回を突破しています。
このようなトライブマーケティングの結果、サウナの水分補給の定番ドリンクとしてイオンウォーターは認知されています。
トライブマーケティングを検討しよう
トライブマーケティングは、特定のトライブの共感を得ることで、企業メッセージを拡散する手法です。ターゲットとなるトライブの特徴やニーズを見極め、価値ある情報を提供することで、効果を高めることができます。
SNSの発展により、トライブマーケティングはこれからの時代に欠かせない戦略となるでしょう。この機会に、自社に合ったトライブマーケティングを検討してみてはいかがでしょうか。