少子高齢化時代の今、シニア市場は大きなビジネスチャンスがあります。その市場規模は100兆円ともいわれているほどです。
しかし、「高齢者の購買行動がわからない」や「シニア向け商品を販売してもヒットしない」など、シニア層への物の売り方で悩んでいるビジネスパーソンも多いでしょう。
そこで、セルウェル株式会社は健康食品・栄養補助食品カテゴリーにおけるシニア層の購買行動を分析しました。少子高齢化時代の付加価値向上や新しい価値のある売り場づくり、確度の高い販促企画の参考にしてください。
Contents
なぜ健康食品・栄養補助食品カテゴリーなのか
少子高齢化時代の高齢者の購買行動を読み解くのに、適した製品カテゴリーは健康食品・栄養補助食品です。健康への関心の高まりからシニア世代で需要が高まっているだけではなく、利益率の高さから販売店(ドラッグストア)で販売に力を入れているためです。
弊社の調査によると、実際に大手ドラッグストアのウエルシアやマツモトキヨシでは、同カテゴリー製品の重要課題顧客にシニア世代を位置付けています。
※セルウェル株式会社によるヒアリング+分析より
ただし、健康食品・栄養補助食品カテゴリーは商品ラインナップが豊富にあることから、売り方が難しいと感じているドラッグストアもありました。
※セルウェル株式会社によるヒアリング+分析より
シニア層のドラッグストアにおける購買行動
健康食品・栄養補助食品に注目したところ、購入するシニア層は以下の4つのタイプに分類できました。シニア層の購買行動を理解するために、まずは4つのタイプについて押さえておきましょう。
- 分類①:現役シニア(有職シニア)タイプ
再雇用などにより仕事に就いているシニア層です。蓄えが潤沢、社会とのつながりを高めたい、高い健康意識から食生活に気を遣うなどの特徴があります。
- 分類②:何事もアクティブ・健康維持タイプ
まだまだ若い者には負けられない、負けたくない、いつまでも若々しくいたいと思っているシニア層です。このタイプは仲間と過ごすことや趣味を謳歌するため、外食が多くなる傾向にあります。また、健康意識が高いのも特徴といえます。
- 分類③:未病ケアタイプ
常にどこかに痛みや不調のある方で、落ち着いた生活を望んでいる方です。痛みや不調を本格化させずに未病で済ませたいという思いが強く、普段から食生活を気にしています。健康食品・栄養補助食品の摂取等により、未病ケアに努めているタイプです。
- 分類④:脱“医療薬”依存タイプ
過去の病気や持病、年齢による体力の衰えを感じ、のんびりとした生活を求めている方です。普段から医薬品を飲むものの、体力維持を目的に健康食品・栄養補助食品を取り入れています。医薬品を飲まずに済む生活の実現を期待しているのが特徴です。
シニア層のマインド別の特徴
次にタイプごとに分析した結果、シニア層は健康食品・栄養補助食品に対して、主に以下の2つを期待していることがわかりました。
- プラスな気持ちをよりプラスにしたい
- マイナスな気持ちをゼロまたはプラスにしたい
それぞれのマインドを持つシニア層が期待する内容や特徴を解説します。
マインド①:プラスからプラスヘ
「仕事ができるように健康を維持したい」や「仲間との交流を今後も続けたい」など、プラスの気持ちをよりプラスにしたいと考えているシニア層です。購買行動のタイプでは分類①と分類②が該当します。
このシニア層のドラッグストアにおける購買行動の特徴は以下のとおりです。
1. コロナ禍後に元気なシニアが増えている
元気なシニアはアクティブシニアとも呼ばれ、コロナウィルス5類移行後にドラッグストアの来店頻度が高くなっています。金銭的に余裕のある方も多く、買い物に対しても貪欲なのが特徴です。
2. 若者に触発された買い物行動
若者がエナジードリンクや栄養補助食品を購入するのをみて、自分もエナジードリンクを購入するといった購買行動です。「若い人には負けたくない」というライバル意識のためか、張り合うような買い方をする方もいました。
3. “変わった”併せ買いがみられる
エナジードリンクと塩気の多いお菓子を一緒に買うなど、一見すると不思議に思える併せ買いをしたケースがありました。伺ったところ、それらは家族用ではなく自分用に購入したとのことです。このことからシニア層も現役世代のように、自身のモチベーションを高めるための買い物をすることが確認できました。
マインド②:マイナスからプラスへ
2つ目のマインドは、「マイナスな気持ちをゼロまたはプラスにしたい」です。
「痛みをどうにかしたい」や「病気を治したい」、あるいは「再び健康を取り戻したい」など、現状の改善や維持を期待して健康食品・栄養補助食品を摂取されている方です。購買行動のタイプでは、分類③と分類④が該当します。この考え方のシニア層は比較的落ち着いた、のんびりした思考を持っています。
このマインドを持つ方の購買行動の特徴は以下の2つです。
1. パッシブな属性
このマインドにはパッシブ、つまり受け身な人が多くいるのが特徴です。特にコロナウィルス流行後は、パッシブ度合・慎重度合が増しています。
2. 店頭ツールをじっくりと観察
慎重な方が多いため、店頭ツールをじっくりと観察するのが特徴です。現役世代では長くても30秒程度なのに対して、このマインドのシニア層は5分近く観察をする方もいます。「買い物に失敗したくない」という意識の表れといえます。
シニア層の購買行動に関する特徴的な変化3選
ビジネスパーソンのなかには、「従来の方法ではシニア層へのアプローチがうまくいかなくなった」と感じている方もいるでしょう。その主な理由は、シニア層を取り巻く環境の変化にあるかもしれません。実際に今回のドラッグストアにおけるシニア層の購買行動の調査において、以下の3つの変化が確認できました。
1. ライフスタイルを重視する
従来のシニア層は、体の痛みの解消や生活に必要な要素等を軸に商品を選択していました。一方現在では、活動的なライフスタイルを維持するためにどのような栄養素を摂取するか、どのような生活を送るかを重視するシニア層が増えています。
2. 増加する現役シニア層
ひと昔前は60歳の定年が当たり前でした。しかし、現在では定年年齢を引き上げる企業や、生涯現役で仕事を続けたい方が増えています。現役シニア層は、引退したシニア層よりも現役世代に近い価値観や行動力を持っています。そのため、従来のシニア層の考え方と異なる部分がでてきているのです。
3. 店頭でのコミュニケーションの変化
10年ほど前であれば、ドラッグストアはシニアの方が集まって話をする場という側面もありました。実際に休憩スペースなどを設けているドラッグストアがあったほどです。そのため、販売員とのコミュニケーションをきっかけに商品を訴求する方法もできました。
しかし、現在は店舗でのコミュニケーションが取りにくくなっています。なぜなら、店舗は買い物をする場という意識が浸透したためです。また若い販売員スタッフとのコミュニケーションが難しくなったことや、現役シニア世代に時間の余裕がないことなども要因として挙げられます。
店頭でのコミュニケーションが変化したことで、買い物時間が短くなっています。
ドラッグストアのシニア層へのプロモーションの現状
ドラッグストアで行われているシニア層へのプロモーションは、基本的にメーカー主体で行われています。ドラッグストア側は棚づくりやコーナーづくりのみで、ドラッグストア全体でのプロモーションをほとんど行っていません。
販促展開としては、主に棚上部に設置する什器と商品パッケージによる訴求が中心となっています。具体的な事例は以下のとおりです。
※ヒアリングを基にセルウェルにて整理
シニア層へのプロモーションのアイデア3選
今回の調査を行ったうえで、セルウェル株式会社が考える健康食品・栄養補助食品とシニア層に向けたプロモーションのアイデアを紹介します。
棚中央から下段にかけてツール及びPOPを設置
一般的に商品が最も見やすく、手に取りやすい陳列棚の高さは、ゴールデンゾーンと呼ばれる床面から75cm~135cmです。しかし、シニア世代は商品検討時に、物理的な理由から視線が下がる傾向にあります。そのため、ゴールデンゾーンよりも陳列する位置を低く設定する対策が有効です。
パッケージにわかりやすい効果キーワードの記載
シニア層には店頭ツールをじっくりと観察する方がいることから、情報の視認性を高めることは重要です。具体的には、「文字級数を大きくする」や「摂取した際に期待される効果をわかりやすくする」などが挙げられます。特に健康食品・栄養補助食品は似たような成分が多くあるため、わかりやすく商品の特徴を伝えることが大切です。
マスメディアの紹介等による信頼性の向上
シニア世代はマスメディアの影響が大きく、特にテレビへの信頼性が高い世代です。そのため、マスメディアによる紹介は商品の信頼性を向上できるため、有効なプロモーション方法といえます。また、メディアに紹介されたという訴求の切り口も高い効果を期待できます。
購買行動に合わせたプロモーションが重要
今回は、ドラッグストアの健康食品・栄養補助食品カテゴリーにおけるシニア層の購買行動に注目してみました。このように注目してみることで、従来と現在のシニア層の違いが明確になったと思います。
他の業界においてもターゲット層の購買行動を把握することは、ビジネスを成功させるうえで不可欠です。
- ターゲット層の購買行動を分析してほしい
- プロモーションのアイデアを出してほしい
このような経営者やマーケティング担当者は、ぜひセルウェル株式会社までお気軽にお問い合わせください。