立地別価格を導入する企業が増加!背景やメリット・デメリットを解説 

本記事ではビジネスパーソンに向けて、立地別価格の概要やメリット・デメリット、事例を紹介します。 

2025年2月15日、スターバックスは全国の約3割の店舗で「立地別価格」を導入し話題になりました。立地別価格とは、店舗の立地場所の特性に応じて商品やサービスの価格を調整する手法です。近年は、マクドナルドやガストなど、この手法を採用するチェーン店が増えています。本記事では立地別価格に注目し、ビジネスパーソンに向けて導入が拡大している背景、企業が導入するメリット・デメリットをわかりやすく解説します。 

参考:スターバックス「- 2025年2月15日(土)からの商品価格の取り組みについて -」 

Contents

立地別価格とは 

立地別価格とは、店舗を立地場所で区分して、区分ごとに商品やサービスの価格を調整する手法です。例えば、都市部や観光地では価格を高く設定し、地方や郊外では価格を低く設定することが該当します。このように地域ごとに価格を調整することから、地域別価格とも呼ばれています。 

立地別価格を導入するチェーン店が増えている背景 

近年、立地別価格を導入した主なチェーン店は以下のとおりです。 

  • ガスト:2022年7月28日から都市部とその他の地域で立地別価格を導入。 
  • マクドナルド:2023年7月19日より都市部の184店舗の価格を見直し。 
  • スターバックス:2025年2月15日より空港内や東京23区にある約3割の店舗の価格を見直し。 

このように、チェーン店を中心に立地別価格を導入する動きが広がっています。政府もこの動きを注視しており、「地域課題分析レポート(2024年春号)」において、物価の地域差を生じさせる要因の一つとして紹介しています。 

そして、立地別価格を導入するチェーン店が増えている背景は、「人件費・原材料費・光熱費の高騰によるコスト増加」「値上げによる客離れのリスク」です。背景について解説します。 

背景① 人件費・原材料費・光熱費の高騰によるコスト増加 

人件費や原材料費、光熱費などのコストが高騰しており、従来の価格設定ではこうしたコスト増を吸収できず、多くの企業では価格の見直しを迫られています。 

実際に、株式会社商工リサーチの「全国企業倒産状況」によると、2024年の全国企業倒産件数は10,006件と、11年ぶりに1万件を超える高い水準となりました。株式会社商工リサーチは、人手不足や最低賃金の引き上げによる人件費の高騰、円安による物価上昇などのコスト増が要因と分析しています。 

このように、コスト増が多くの企業の経営を圧迫しているのが現状です。 

背景② 値上げによる客離れのリスク 

多くの企業ではコスト増が経営を圧迫しており、価格転嫁が必要な状況です。しかし、値上げによる売上増の効果よりも、客足が減少することで減収に陥る可能性も否定できません。 

このような背景から、値上げをしても客離れのリスクが比較的低い都心部や観光地を中心に、立地別価格を導入し値上げをする動きが広がっています。 

立地別価格を導入するメリット 

立地別価格を導入することで企業が複数のメリットを得られるのも、導入する動きが広がっている背景の一つです。ここでは導入する3つのメリットを紹介します。 

メリット① 収益の最大化を目指せる 

立地別価格を導入すると、企業は各地域の需要や購買力に応じた価格設定ができます。例えば、人口が多く需要が集中する都市部では値段を上げて収益力を強化し、地方では価格を抑えて競争力を高めるといった具合です。このように、場所に適した価格設定を行うことで、収益の最大化を目指せます。 

メリット② コストを反映した価格を設定できる 

地域ごとに人件費や物流費、賃料などのコストは異なります。コストの高い地域では立地別価格を導入することで、それらのコストを反映した価格設定が可能です。例えば、都心部では賃料の負担が大きく、山間部では輸送コストがかかるといった特徴があります。立地別価格の導入により、こうしたコストを吸収できる価格設定を行うことで、経営の安定化につながります。 

メリット③ 競争環境に応じた価格設定ができる 

同じ商品でも、競合の有無や地域の特性によって最適な価格は異なります。例えば、競合店舗が密集するエリアでは価格競争が激化しやすいため、価格を調整して競争力を維持することが大切です。一方、競合が少ない地域では、価格を高めに設定して売上を確保する必要があります。立地別価格を導入することで、こうした競争環境の違いにも柔軟に対応できます。 

立地別価格を導入するデメリット 

立地別価格には多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットもあります。ここでは、導入時に考慮すべき2つのデメリットについて解説します。 

デメリット① 顧客から不評を買う可能性がある 

同じ商品が地域によって価格が異なると、顧客が不公平に感じて不評を買う可能性があります。また、インターネットやSNSが普及した現代では、地域ごとの価格の違いを比較することも容易です。そのため、顧客に不信感を抱かせないように、価格の違いについて説明を行う必要があります。 

デメリット② 運用に手間やコストがかかる 

立地ごとに異なる価格設定を行うには、多くの手間やコストがかかります。例えば、システムの改修や価格変更の周知に費用が発生するでしょう。このような費用は、経営の負担となることがあるので注意が必要です。 

立地別価格を導入した企業の成功事例 

立地別価格の成功事例として、日本マクドナルド株式会社と株式会社すかいらーくホールディングスの取り組みを紹介します。 

事例① 日本マクドナルド株式会社 

日本マクドナルド株式会社は、日本におけるマクドナルドの経営及びそれに付帯する事業を担っており、立地別価格を活用して成功を収めた代表的な企業の一つです。 

同社は、これまでに立地別価格の導入と撤回を繰り返してきた過去があります。例えば、2007年には人件費の高騰を理由に立地別価格を導入して値上げを実施。当時、80円のハンバーガーが100円に値上げしたことで大きな話題となりました。 

2015年には立地別に9つの価格を設定していましたが、顧客から「価格がわかりにくい」という指摘を受けて、価格を統一しました。 

2023年になると、空港や駅、遊園地など一部の約40店舗で異なる価格を設定していましたが、人件費や店舗運営コストの増加により立地別価格を再度導入します。なお、2023年に導入した店舗は、賃料や人件費の負担が特に大きい一部の店舗(全体の約6%の184店舗)でした。 

その結果、マクドナルドの日本事業の運営に関する持株会社の日本マクドナルドホールディングスは、2024年度の売上高・営業利益ともに過去最高を更新しました。このように日本マクドナルド株式会社は、一部の店舗で値上げを実施したことで売上の最大化を達成した企業と言えます。 

事例② 株式会社すかいらーくホールディングス 

株式会社すかいらーくホールディングスは、「ガスト」や「バーミヤン」、「ジョナサン」など、複数のファミリーレストランチェーン店を運営する企業です。 

同社は2022年7月21日に「バーミヤン」、7月28日に「ガスト」で立地別価格を導入しました。当初は都市型とその他地域の2区分でしたが、同年の10月6日には、「ガスト」において地方都市・都市部・超都心の3区分に拡大しました。 

その結果、株式会社すかいらーくホールディングスは2023年度に黒字化を実現し、2024年度に増収増益を達成。2024年度の営業利益は前年比106.9%増の241億8,400万円に達し、値上げによる利益率の改善が見られました。この成功事例は、立地別価格の導入が企業の成長に貢献することを示しています。 

立地別価格を導入して企業の成長を実現しよう 

立地別価格の導入は、チェーン店を中心に多くの企業で広がっています。適切な価格設定を行うことで、売上の最大化を達成した企業も増えています。日本マクドナルド株式会社や株式会社すかいらーくホールディングスの成功事例は、その代表例と言えるでしょう。 

コスト増加による価格転嫁の方法に悩んでいるビジネスパーソンにとって、立地別価格の導入は有効な戦略の一つです。この機会に、自社のビジネスモデルに適した価格戦略を検討してみてはいかがでしょうか。