
新規事業のアイデア出しでは、数多くの案の中から、実現可能性の高いものを選定することが大切です。しかし、アイデアの量を確保できても、それらを整理するのは容易ではありません。このような課題に対して役立つのはKJ法です。本記事では、KJ法の意味やメリット・デメリット、やり方をわかりやすく解説します。
KJ法とは
KJ法とは、複数の情報を論理的かつ効率的に整理するための手法です。簡単に言えば、カードにアイデアを一つずつ書き出し、それらを関連性に基づいてグループ分けしながら整理する手法を指します。汎用性が高く、様々な分野において有効であることから、新規事業のアイデア出しにも使われています。
ブレインストーミングとの関係性
ブレインストーミングとは、以下の4つのルールに従って自由に意見を出し合う手法です。
・他の意見やアイデアを批判しない
・質より量に集中する
・アイデアを自由に発言できるようにする
・アイデアをまとめる
この手法は、より多くの案を得たい時によく用いられます。
つまり、ブレインストーミングで多くのアイデアを生み出し、続いてKJ法でそれらを整理することで効果的に案をまとめることができます。
ブレインストーミングの詳細は、「ブレインストーミングとは?意味や4原則、やり方を徹底解説」の記事をご参照ください。
KJ法のメリット

KJ法を活用することで、多くのメリットを得られます。ここでは、主な4つのメリットについて解説します。
メリット① アイデアを効率的に整理できる
KJ法は、効率よく整理できるのがメリットです。書き出したカードを自由に移動させて、視覚からも検討できるためです。例えば、大量のアイデアを頭の中だけで整理するのは難しく、ノートに何度も書いたり消したりするのは手間がかかります。KJ法を使えばこのような手間を省き、スムーズに案をまとめることができます。
メリット② アイデアの関連性を可視化できる
KJ法では、関連性のあるアイデアをグループ化して整理します。これにより、単独では見えにくかったアイデア同士のつながりを把握できるのがメリットです。
メリット③ 発想が広がる
関連するアイデア同士を組み合わせることで、発想をさらに広げることができます。
例えば、「地域活性化」というテーマで、「観光」「特産品」「若者の雇用」といったアイデアが出たとします。一見別々の内容に見えても、「観光や特産品を活用して若者の雇用を生み出す」といった新たな視点を導き出すことが可能です。
このように、複数のアイデアを関連づけることで、これまでにない発想が生まれることがあります。
新規事業のアイデア出しでは、従来の枠にとらわれない柔軟な発想が求められます。その点、KJ法は新しい視点や革新的なアイデアを生み出すのに有効です。
メリット④ 少数意見も検討できる
通常の会議やディスカッションでは、多数派の意見が重視されやすく、少数意見は埋もれてしまうことが少なくありません。しかし、KJ法では一つひとつの意見を扱うため、少数意見も検討の対象です。
例えば、新しいサービスの企画を考える際に、多数のメンバーが「既存顧客向けの商品開発」を提案し、少数が「新しい顧客層へのアプローチ」を主張したとします。こうした少数意見も他のアイデアと組み合わせることで、「新規市場の開拓」や「潜在ニーズの発見」といった新たな方向性が見えてくることがあります。
このように、少数意見を排除せずに検討できる点はKJ法のメリットです。多様な視点を取り入れることで、柔軟で革新的なアイデアの創出につながります。
KJ法のデメリット・注意点
KJ法は使い方を誤ると効率が下がったり、期待した効果を得られなかったりする場合があります。ここでは、主な2つのデメリットと注意点について解説します。
デメリット① 作業に時間がかかる
KJ法のデメリットは、カードに書き出す作業だけでも多くの時間がかかることです。また、カードの量が多いとグループ分けの議論も増えるため、想定以上に時間がかかることがあります。
デメリット② 参加者の理解度に左右される
KJ法を円滑に進めるためには、参加者全員が手順を理解していることが不可欠です。理解度に差があると、分類の基準や整理の仕方にばらつきが生じ、作業が滞る恐れがあります。そのため、効果的に活用するには、実施前に基本的な手順を共有することが大切です。
KJ法のやり方・手順
実際にKJ法をどのように進めるのか、やり方を4つの手順に分けて解説します。チームでも個人でも、基本的な流れは同じです。
手順① アイデアをカードに書き出す

まず、議論するテーマに沿ってアイデアをカードに書き出します。アイデアの洗い出しにはブレインストーミングを使う方法や、あらかじめ募集する方法などがあります。この段階のポイントは以下のとおりです。
・1枚のカードに1つの案を書く
・できる限り多くのアイデアを書き出す
・この段階では評価や選別を行わない
・誰が見ても理解できるように簡潔な表現で書く
この段階では、質より量が重要で、より多くのカードを作れるかが大切です。
手順② カードのグループ分け

カードを机や壁に並べ、内容が似ているものや関連性のあるものをまとめてグループ化します。この段階では、アイデア同士の共通点やつながりを見つけながら分類していくことが重要です。
こうして作られたグループを「小グループ」と呼びます。10個以上の小グループができた場合は、関連のあるグループ同士をまとめて「大グループ」を作ります。
それぞれのグループには、内容を端的に表すタイトルを付けましょう。タイトルを付けることで、整理や分析がしやすくなるためです。
手順③ グループの関係性を図解化[崇青7]

グループ分けが完了したら、それぞれのグループがどのように関係しているのかを図で表します。例えば、以下のような関係性を線や矢印を用いて示します。
・因果関係(原因と結果のつながり)
・類似関係(似た特徴を持つもの)
・相互関係(互いに影響を与えるもの)
・対立関係(相反する考え方)
図解化を行う際は、大グループから整理すると全体像をつかみやすくなります。
手順④ 文章化
最後に、図解化した関係性を文章にまとめます。それぞれのグループのカードに書かれたキーワードを使い、グループごとに一つの文章を作成しましょう。ここでは、グループ同士のつながりを意識し、全体が自然につながるように文章化することがポイントです。この工程を行うことで、これまで気付かなかった新たな視点や発想が生まれることがあります。
新規事業のアイデア出しにKJ法を活用しよう
KJ法は、多くのアイデアを整理しながら新しい発想を生み出せることから、新規事業のアイデア出しにも有効な手法です。ブレインストーミングで幅広くアイデアを出した後、KJ法で関連性ごとに整理することで、見落としがちなつながりや新しい視点を見つけやすくなります。新規事業の立ち上げを検討している方は、ぜひこの手法を取り入れてみてはいかがでしょうか。
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