今さら聞けない「IPビジネス」とは?収益化モデルと成功事例

映画の関連産業や人気漫画のグッズ展開など、私たちの身の回りには、IPビジネスが溢れています。しかし、改めてIPビジネスの意味を問われると、具体的な内容がわからないという方もいるでしょう。そこで本記事では、今さら意味を聞けないという方に向けて、IPビジネスの基本知識やメリット・デメリット、成功事例を紹介します。 

Contents

IPビジネスとは 

IPとは、「Intellectual Property」の略で、日本語で知的財産という意味です。そのため、IPビジネスとは、知的財産を活用したビジネスモデルを指します。知的財産とは、創造的な活動によって生み出された財産のことで、具体的に以下の権利を指します。 

  • 著作権:作品を制作した者が持つ権利 
  • 特許権:発明を独占的に実施できる権利 
  • 意匠権:物の形状や色といったデザインを独占的に使用する権利 
  • 商標権:ロゴや名前といった商標を独占的に使用する権利 

IPビジネスでは、これらの知的財産を活用して、ライセンス販売やグッズ販売などの形で収益を上げます。特に、アニメやゲーム業界で多くみられるビジネスモデルで、様々な形で展開されています。 

IPビジネスの市場規模 

ライセンシングインターナショナルジャパンの調査によると、IPビジネスの世界市場は拡大を続けています。具体的に、2021年が3,155億ドル、2022年が3,408億ドル、2023年が3,565億ドルでした。2年間で市場規模が410億ドル拡大したことになります。このような世界的な市場規模の拡大を受け、日本のアニメの海外展開もさらに加速することが期待されています。  

IPビジネスの収益化モデル 

IPビジネスは販売するものによって、大きく3つの収益化モデルに分類できます。ここでは、コンテンツ販売・ライセンス販売・ノウハウ販売について解説します。 

コンテンツ販売 

IPビジネスの最も一般的な収益化モデルはコンテンツ販売です。自社が保有するIPを活用したコンテンツを制作し、販売することで収益を得るビジネスモデルです。アニメやゲーム、漫画などの制作物を販売することをイメージするとわかりやすいでしょう。 

ライセンス販売 

2つ目のIPビジネスの収益化モデルはライセンス販売です。これは、自社が保有するIPのライセンスを他社に供与することで、ロイヤリティ収入を得るビジネスモデルです。例えば、A社のキャラクターをB社がキャンペーンに使用すると、B社はA社に使用料を支払います。この使用料によって収益を得るので、人気のIPを持っている企業は、低リスクで安定した売り上げを確保できる可能性があります。 

ノウハウ販売 

3つ目のIPビジネスの収益化モデルはノウハウ販売です。制作あるいは製造に関する技術や知識といったノウハウを教えることで、収益を得るビジネスモデルです。具体的には、特許技術の再現に必要なノウハウを販売する手法が該当します。 

IPビジネスを展開するメリット 

IPビジネスが注目される理由はそのメリットにあります。ここでは、3つのメリットについて解説します。 

メリット① 多様な収益源を確保できる 

1つ目のメリットは、多様な収益源を確保できる点です。コンテンツ販売・ライセンス販売・ノウハウ販売といったように、同じIPで複数の収益化モデルを展開できるからです。様々な事業に展開できることから、人気のIPは企業にとって大きな資産となります。 

メリット② 長期的なビジネスにつながりやすい 

2つ目のメリットは、長期的なビジネスにつながりやすい点です。人気のIPは多くのファンが付いているため、長期間にわたって利益を生み出す可能性が高いからです。例えば、「ミッキーマウス」は1928年に初めて登場しましたが、95年以上経った今でも多くのファンに愛されています。 

メリット③ 自社のブランディングに貢献する 

3つ目のメリットは、自社のブランディングに貢献する点です。例えば、「株式会社不二家のペコちゃん、ポコちゃん」や「ヤンマーホールディングス株式会社のヤン坊、マー坊」といったキャラクターは、それぞれの企業の顔として広く認知されています。消費者がこれらのキャラクターに親しみを感じることで、「○○と言えば△△社」のように、ブランドイメージの定着に役立ちます。 

IPビジネスを展開するデメリット 

IPビジネスは多くのチャンスがある一方、デメリットもあるので事業を始める際は検討が必要です。ここでは、デメリットについて解説します。 

デメリット① 収益化までに時間がかかる 

IPビジネスは、短期的に利益を上げるのが難しいビジネスモデルです。人気が出るまでIPを育てる必要があるからです。そして、IPの知名度を上げて人気を得るには、コンテンツの制作だけでなく、ファンとのコミュニケーションの強化など様々な施策が求められます。そのため、IPビジネスで成功するには、長期的な視点で事業に取り組む必要があります。 

デメリット② IPの管理に手間がかかる 

IPビジネスを展開すると、IPの管理に手間がかかります。ライセンスを供与する場合は契約書の管理や権利の調整、コンテンツを販売する場合は他社の権利を侵害していないかの精査などです。このようなIPの管理の対応には、弁護士といった専門的な知識を有する人材が必要な場合があります。 

IPビジネスの成功事例 

日本においても多くの企業がIPビジネスで成功を収めています。ここでは、その成功事例として株式会社サンリオとソニー株式会社を紹介します。 

株式会社サンリオ 

株式会社サンリオは、「ハローキティ」や「シナモロール」、「クロミ」などキャラクターのIPを保有する企業です。同社はこれらのキャラクターを活用したIPビジネスを展開しています。具体的には、グッズの販売のほか、他社や行政へのライセンス供与、イベントやライブショーの実施、キャラクターをモチーフにしたテーマパーク「サンリオピューロランド」の運営など多岐にわたります。 

内閣府が2024年に公表した「基礎資料」によると、2018年までにキャラクター累積収入の世界ランキングで、同社の「ハローキティ」が2位を獲得しました。その累積収入は921億ドルで、大成功を収めています。 

ソニー株式会社 

ソニー株式会社は、ゲーム機「プレイステーション」の開発企業であり、同シリーズのソフトウェアとハードウェアの両方に関するIPを保有しています。その最新機種の「プレイステーション5」は、全世界で累計5,600万台を販売しました。 

また、ソニー株式会はゲーム分野だけでなく、映画や音楽、キャラクターなどの多岐にわたる分野でIPを保有しているのが特徴です。 2024年度の経営方針説明会では、特にアニメ分野へのIP投資を強化する方針を発表しました。このように、同社ではIP分野の強みを生かし、IPビジネスで更なる成長を目指しています。 

IPビジネスの参入を検討しよう 

IPビジネスは、知的財産を活用して収益を生み出すビジネスモデルです。世界の市場規模は拡大を続けており、これから先も多くのビジネスチャンスが期待できます。さらに、人気のIPを生み出すことで、長期的な収益に貢献するといったメリットもあります。新規事業のアイデア出しに悩んでいる経営者様は、この機会にIPビジネスを検討してみてはいかがでしょうか。