既存顧客のLTV(顧客生涯価値)の向上を目指していても、予算や人的リソースなどの経営資源が足りずに困っているご担当者様はいらっしゃいませんか。
そのような場合はデシル分析がおすすめです。マーケティング施策を実施すべき顧客を絞ることで、消費する経営資源を抑えられるためです。
本記事ではデシル分析の意味や目的、やり方、メリット・デメリットをわかりやすく紹介します。
Contents
デシル分析は顧客を10段階でランク付けする分析手法
デシル分析とは、売上データから全顧客の累計売上高を算出し、高い順に10等分してランク付けする分析手法です。例えば、100人の顧客がいたとすると、累計売上高の多い順に10等分して、上位10人ずつランク1からランク10まで割り振ります。各ランクの購入比率や売上高の構成割合を比較することで、顧客分析ができます。
わかること
デシル分析でわかることは、売上に貢献している上位顧客です。さらに購入比率や売上構成比から、上位顧客がどの程度、売上に貢献しているかを明確にできます。
目的
デシル分析は上位顧客を割り出すことで、以下のような目的があります。
- マーケティングの最適化
- 経営資源の効率的な配分
- 顧客満足度の向上
それぞれの目的について解説します。
マーケティングの最適化
1つ目の目的は、マーケティングの最適化です。デシル分析をすることで、各ランクで実施すべきマーケティングが明確になるためです。例えば、ランク10ですべきなのはリピーターに育成するための対策で、ランク1であればファン離れを防ぐための優遇が考えられます。このようなマーケティングの最適化は、費用対効果の向上も期待できます。
経営資源の効率的な配分
デシル分析によりマーケティングを上位顧客に絞ることで、経営資源の効率的な配分が可能です。売上貢献度の低いランクに対するマーケティングを見送り、上位顧客に経営資源を集中できるためです。重要度の高い顧客にアプローチすることで売上拡大が期待できます。
顧客満足度の向上
各ランクに適したマーケティングは、顧客満足度の向上につながります。
例えば、ランク10であれば、商品購入後に困ったことがないかを聞くことで顧客満足度が高まるでしょう。ランク1であれば、優待価格での販売やクーポンの配布などにより特別感を演出することで、顧客は大切にされていると感じるはずです。
このように、デシル分析は顧客満足度の向上に役立ちます。
マーケティングを上位顧客に絞る理由
なぜマーケティングを上位顧客に絞るのかと言えば、効率的に売上を拡大できるためです。その理由は、先ほど紹介した経営資源を効率的に配分できることと、好意の返報性を活用できるためです。
好意の返報性とは、人から好意や何かをもらったときに「自分もお返しをしたい」と感じる心理を指します。つまり、売上の大半を占める上位顧客に対して優遇などにより好意を示すことで、お返しで注文量が増える効果が期待できます。
デシル分析のやり方
デシル分析はルールがわかりやすいため、比較的容易にできる分析手法です。ここでは、エクセルなどの表計算ソフトを使って誰でもできるように、具体的なやり方を4つの手順で紹介します。
手順① 必要なデータを収集する
まずは過去の売上データなど、分析に必要なデータを収集します。
エクセルにデータを入力するときは、最低限以下の項目が必要です。
- 注文番号
- 顧客名
- 購入日
- 購入金額(売上高)
また、収集するデータの期間は1年・5年・10年など任意で設定してください。
手順② 顧客ごとに累計売上高を算出する
次に、売上データから顧客ごとの累計売上高を算出します。
エクセルの場合は、「ピボットテーブル」の機能を使うことで、累計売上高の自動集計が可能です。
具体的には、「挿入」タブのピボットグラフを選択し、入力したデータを範囲指定します。そして、行ラベルに顧客名、値ラベルに購入金額(売上高)を選択すると顧客ごとの累計売上高が表示されます。
手順③ 顧客を10グループにわける
3番目の手順は、顧客を累計売上高の高い順に並べ、10等分して1から10までランクを付けることです。
エクセルの場合、ピボットテーブルで作成した表の累計売上高を降順に並べ替えます。そして、顧客を10等分して10グループにわけます。
手順④ 上位顧客への効果的なマーケティングを検討する
最後は、上位顧客にすべきマーケティングの検討です。具体的には、ランクごとの購入比率や売上構成比を算出します。そして、分析結果のデータからどのランクまでを上位顧客と判断するのかを決定し、効果的なマーケティングを検討します。
デシル分析のメリット・デメリット
デシル分析は比較的容易に利用できるのが魅力です。しかし、メリットだけではなく、デメリットもあるため、活用するにはそれらを押さえておく必要があります。デシル分析のメリット・デメリットは以下のとおりです。
メリット | ・ランク付けの基準が明確でわかりやすい ・事業の現状に適した上位顧客を割り出せる |
デメリット | ・売上データが必要になる ・商品単価に左右される ・分析の精度に限界がある |
メリット① ランク付けの基準が明確でわかりやすい
デシル分析のランク付けの基準は以下の2つです。
- 累計売上高の高い順に並べる
- 顧客を10等分して上位からランク付けする
このように基準が明確でわかりやすいことから、誰でも実践しやすいのがメリットです。
メリット② 事業の現状に適した上位顧客を割り出せる
デシル分析をするメリットは、事業の現状に適した上位顧客を割り出せることです。
例えば、売上構成比の8割を占めるグループまで上位顧客にするとします。すると、ランク5まで入る場合やランク3までの場合など、事業により変動します。
つまり、事業ごとで優先すべき顧客を割り出せるのがデシル分析のメリットです。
デメリット① 売上データが必要になる
デシル分析をするには、ある程度の数の売上データが必要です。
すでに売上データをデータ化している場合はそれほど問題になりませんが、データ入力を必要とする場合は作業に手間と時間がかかります。
また数が膨大な場合は、データを収集するのにも大変な労力を必要とします。
デメリット② 商品単価に左右される
デシル分析のデメリットは、商品単価に左右されやすいことです。
累計売上高を高い順で並べ替えるため、1度でも高額商品を購入した顧客は上位にランク付けされやすいためです。反対に、低額商品を何度も購入していても、下位にランク付けされることもあります。
このように、デシル分析では購入頻度よりも商品単価の影響力が大きくなります。
デメリット③ 分析の精度に限界がある
デシル分析は精度を高めようにも限界があります。
なぜなら、設定した期間により誤差が生じるためです。
例えば、期間を5年や10年などのように長く設定した場合は、直近の数年間利用していなくても上位顧客にランク付けされる可能性があります。反対に数カ月などのように短すぎるとデータ数の不足や、定期的に購入している顧客が漏れてしまう可能性もあります。
また、期間を1年と設定しても、高額商品を購入した顧客が上位顧客となるため、必ずしもリピーターやファンを割り出せるわけではありません。
このように、デシル分析にはデメリットもあることを把握した上で、活用することが大切です。
顧客への優遇策を検討しているならデシル分析
デシル分析は、手軽に上位顧客を割り出せる分析手法です。基準も明確であることから、手早く分析を完了できるため、スピード感があるのも魅力です。顧客への優遇策による売上アップを目指しているのであれば、デシル分析を活用してみましょう。