マーチャンダイジング(MD)とは?マーケティングとの違い、五つの適正について解説 

小売・流通業界では「マーチャンダイジング(MD)」という言葉を使うことがあります。 あまり聞きなれない言葉だけに理解が難しいですが、会議やミーティングで使われることもあるので覚えておくと便利です。 

今回は、マーチャンダイジングの詳細や歴史、マーケティングの違い、適正について詳しく解説します。 記事後半ではマーチャンダイジングの種類や実際の導入事例についても説明します。 マーチャンダイジングがどういった目的で使われるのかを理解できるので、ぜひ最後までご覧ください。 

マーチャンダイジングとは 

マーチャンダイジングとは、商品計画・商品化計画という意味です。 

お客様に商品を購入してもらうために商品の企画から調達、構成、販売方法などを戦略的に行う活動を指します。 商品を適切にお客様へ届けるためにはどうすべきかを考えることがマーチャンダイジングです。 

主に小売・流通業界で使われている言葉となっており、戦略を考え実行する人のことを「マーチャンダイザー(MD)」と呼びます。 

マーチャンダイジングの歴史 

明治時代から複数の商品を陳列して販売する百貨店が生まれ、新しい買い物のやり方が定着していくと購買意欲がないお客様も来店するようになっていきました。 

それから購買意欲を引き出す工夫がされるようになり、徐々にマーケティング戦略へと発展していきました。 

そして販売戦略を発達させた要因の1つとして「POSシステム」があります。 

POSシステムとは、商品にバーコードを追加して管理するシステムのことです。 商品をバーコードで管理したことによって情報を可視化して数量や価格などを簡単に把握できるようになりました。 

POSシステムから出た数字をもとに販売戦略を立てられるようになり、マーチャンダイジングとして定着するようになりました。 

マーチャンダイジングとマーケティングの違い 

マーチャンダイジングと類似した言葉にマーケティングがありますが、使い方や意味は少し異なります。 

マーチャンダイジングは商品を適切にお客様へ届ける戦略であるのに対し、マーケティングは商品が売れるにはどういった仕組み作りをすればいいのかに重点を置いています。 

例えば、商品のターゲットやベネフィット、差別化をはかるのがマーケティングの範囲です。 

一方販売する商品や店舗が適正なのかどうかを考えることがマーチャンダイジングの範囲となります。 

結論として、マーチャンダイジングはマーケティングに含まれた1つの戦略であるということです。 

マーチャンダイジングの5つの適正 

マーチャンダイジングには、以下の5つの適正をおさえることで売上向上へとつながります。 

小売・流通業界にいる方はぜひチェックしておいてください。 

  • 適正な商品:消費者が求めている商品やサービスを提供できているか。商品制作に関する品揃え。 
  • 適正な時期:時期にふさわしい商品の仕入れ・販売。商品計画や商品化計画。 
  • 適正な場所:商品やサービスをどこから入手・販売するのか。消費者を考えた陳列方法。 
  • 適正な数量:商品やサービスをどれくらい販売するのか。販売数量や在庫管理。 
  • 適正な価格:商品やサービスの仕入れ値や販売価格。最適な価格設定や販売戦略。 

マーチャンダイジングの重要性 

マーチャンダイジングは前述で紹介した5つの適正を整理することが何よりも重要です。 

5つの適正が整理されていることで販売力を最大化できるので、繁盛する店作りには欠かせません。 

小売店の販売場所では商品の強みを出し、商品力の向上と価格競争力を強化・実現のためにマーチャンダイジングが必要となります。 

マーチャンダイジングの種類 

マーチャンダイジングには、以下の5つの種類があります。 

  1. ビジュアルマーチャンダイジング 
  1. クロスマーチャンダイジング 
  1. ライフスタイルマーチャンダイジング 
  1. インストアマーチャンダイジング 
  1. ウェザーマーチャンダイジング 

それぞれの手法や特徴について説明するので、ぜひ参考にご覧ください。 

ビジュアルマーチャンダイジング 

ビジュアルマーチャンダイジングとは、視覚的に訴求するマーチャンダイジングの1つです。 

消費者にディスプレイから購買意欲を駆り立てる取り組みを行い、購入へと繋げることを目的としています。 

例えば、アパレルショップにあるマネキンにおすすめの服を着せたり季節に合ったデコレーションをしたりする取り組みが当てはまります。 

もともとアメリカのディスプレイ会社が使っていたマーケティング手法となっており、市場競争が激しくなった1970年代から注目されるようになりました。 

クロスマーチャンダイジング 

クロスマーチャンダイジングは、異なるカテゴリの商品同士を組み合わせて陳列して相乗効果から購入を促すマーケティング手法です。 

例えば、酒類の近くにおつまみを陳列することでお酒と楽しめるようにする施策が当てはまります。 こちらは購入しようと思っていなかった商品に興味を持たせ、一緒に購入させようとする手法となっています。 

適切なクロスマーチャンダイジングを行うには、消費者がどのような行動をとっているかを調査して最適な提案をすることが重要です。 

ライフスタイルマーチャンダイジング 

ライフスタイルマーチャンダイジングは、消費者のライフスタイルを想定してお客様が興味を持っている商品を見つけるマーチャンダイジング手法の1つです。 

例えば、美意識の高い女性をコンセプトにしているなら化粧品やエステグッズなどをまとめて販売することで客単価アップを期待できます。 消費者のライフスタイルを含めたさまざまな角度から商品をタイムリーに提案することも可能です。 

インストアマーチャンダイジング 

インストアマーチャンダイジングは、データをもとにした施策から消費者の購買意欲を高めて収益向上をはかるマーチャンダイジング手法の1つです。 

例えばレンタルショップでは、お客様の視点の高さにある商品はパッケージが見えやすく陳列されています。 この陳列方法の理由としては、売りたい商品を目線の高さにおくことで自然と目に入りやすくなるからです。 

消費者の視点になって単価の高い商品を陳列し、多くの商品を購入してもらうように意識することが重要となります。 

ウェザーマーチャンダイジング 

ウェザーマーチャンダイジングは、天気や気候に合わせてお客様を売り場へ誘導するマーチャンダイジング手法の1つです。 

人は天気や気候によって行動を変更する傾向にあるので、行動予測をすることで売上アップを期待できます。 

例えばコンビニでは雨が降っている日に入口付近でビニール傘を販売し、濡れないために購入させる施策が取られています。 天気や気候はコントロールできないので難しいですが、天気予報のデータをもとにすれば予測が立てやすいです。 

マーチャンダイジングの導入事例 

マーチャンダイジングのマーケティング戦略は多くの企業で導入されています。 

こちらでは、代表的なマーチャンダイジングの導入事例をいくつか紹介します。 

どのような使い方がされているのかぜひチェックしてみてください。 

IKEA 

世界的な家具量販店として有名なIKEAは、ビジュアルマーチャンダイジングを販売戦略に取り入れています。 消費者目線で商品を配置し、実際の生活環境に当てはめて家具や生活用品を紹介しています。 

例えば、リビングや子供部屋、一人暮らしのワンルームなどコンセプトに合わせたインテリアシーンを実現しています。 

大量生産によって価格帯もおさえているので、消費者も購入のハードルが低いです。 

家具の事例を紹介したビジュアルマーチャンダイジングだけでなく、複数の家具を組み合わせたクロスマーチャンダイジングも実現されています。 

ドン・キホーテ 

総合スーパーマーケットとして人気があるドン・キホーテでは、店内を活かした圧縮陳列や手書きPOPによって顧客が商品を見つける楽しみを体験できるようになっています。 

ライフスタイルマーチャンダイジングやインストアマーチャンダイジングを意識した商品の陳列は多くの顧客を獲得することに成功しています。 

マーチャンダイジングを導入するメリット 

マーチャンダイジングを導入するとお客様へのニーズに応えて求められる商品を販売できるので、顧客満足度を向上させることができます。 

またこれまでの分析データから成果を出すことで成功事例を社内に蓄積できるようになります。 

成功事例を全体へと共有すればさらに成果を上げられるだけでなく、マーチャンダイジングの精度向上にもつながります。 

現在小売業界では競合他社と商品で差別化をすることが難しくなっているため、競争力を上げるためにもマーチャンダイジングは重要な要素です。 

競合も同じくマーチャンダイジングを取り入れているのですぐに成果を出すことは難しいですが、導入をして改善を繰り返すことで自社にさらなる利益を作ることができるでしょう。 

まとめ 

今回は、​マーチャンダイジングの詳細や歴史、マーケティングの違い、適正について詳しく解説しました。 マーチャンダイジングは商品を適切にお客様へ届けるためのマーケティング手法です。 マーチャンダイジングを成功させるためには適正な商品、時期、場所、数量、価格をおさえることが大切です。 商品の販売方法によってさまざまな種類があるため、状況に合わせて最適な手法を試してみましょう。 当記事が企業の利益向上のお役に立ったなら幸いです。